アシュリー・バンス氏がゲスト出演し、2023年8月28日にライブ配信した NSF Live では、民間宇宙開発競争と SpaceX の黎明期について語られました。その中で、アシュリー・バンス氏は、次世代の宇宙スタートアップ企業についても触れています。
司会者が、宇宙スタートアップについてまた本を書くことは考えていないのでしょうか?新しい世代が台頭してきています。次世代のスタートアップはたくさんあります。もしまたこのような本 (『When the Heavens Went on Sale』) を書くとしたら、”彼らも登場させなければならない” と思う宇宙スタートアップ企業はありますか?
という質問に対して、アシュリー・バンス氏があげたていたのが「SpinLaunch (スピンローンチ)」と「Rocket Lab (ロケットラボ)」の2社です。バンス氏は、この2社について次のように述べています。
SpinLaunch は私のリストのトップに近いだろう。主に、私は技術よりもキャラクターを優先する傾向があるからだ。私はこの業界に深く入り込んでいて、自分の知識や人脈を活用したいと思っている。
もう少し様子を見てから決めるかもしれない。例えば Rocket Lab は、もし彼らが今の軌道を続けるなら、いつかは必ず深入りするに値するだろう。もう少し様子を見ます。
当サイトでは、Rocket Lab の最新ニュースはできる限りお届けしているので、今回はアシュリー・バンス氏も初期の頃から注目しているという SpinLaunch という宇宙企業をご紹介します。
SpinLaunch については、過去に TIME 誌の『2022年最も影響力のある企業100社』に選手された宇宙ベンチャー企業としてご紹介しました。
SpinLaunch (スピンローンチ) とは?
SpinLaunch は、カリフォルニア州ロングビーチに拠点を置く、ペイロードを宇宙へ運ぶための質量加速器技術に取り組む宇宙飛行技術開発企業です。写真は非常に特徴的な、SpinLaunch の打ち上げ装置です。
SpinLaunch は、宇宙へ到達するための根本的に新しい方法を開発しました。地上ベースの動力学的打上げシステムを活用することで、既存のどの宇宙打上げ会社よりも劇的に低コストかつ高い周期で、小型衛星のコンステレーションを地球低軌道に送り込みます。
また、真に環境的に持続可能な初の打ち上げシステムであり、より安価で、よりスケーラブルな宇宙へのアクセスを提供します。
グルグルポン!で打上げる
同社は、砲丸投げのように遠心力を使いロケットをグルグルポン!とぶん投げるようにロケットの打上げを行います。こちらの動画では、質量加速器でLEOにペイロードを打ち上げる全プロセスを紹介しています。
SpinLaunch は、200キログラム級の人工衛星を地球低軌道に投入するための代替方法を開発した革新的な新しい宇宙技術企業です。従来の燃料ロケットとは異なり、SpinLaunch は地上ベースの電気動力式キネティックロケットシステムを使用し、宇宙へのアクセスに大幅な低コストと環境的に持続可能なアプローチを提供します。
SpinLaunch の革新性
SpinLaunch は、宇宙旅行に新たな風を吹き込む新技術に取り込んでいます。同社は、革新的な方式として真空チャンバーを使って物体を打ち上げることで、宇宙旅行の二酸化炭素排出量を削減することを目指しています。
この新技術は、伝統的なロケットとは異なり、巨大な真空チェンバー内での旋回を活用し、燃料の90%以上を必要とせずに宇宙への打ち上げを実現します。
これは、大気圏外への推進力を燃料で得る従来の方法とは異なり、カーボンファイバーのテザーを使用して高速回転させ、宇宙への発射を行う。このシステムは再利用可能で、宇宙へのアクセスの環境負荷を軽減します。
また、SpinLaunch は今後5年以内に宇宙への物体の打ち上げを行う予定であり、宇宙への新たなアプローチを提供する可能性があります。SpaceX の登場で打上げコストは劇的に安くなりましたが、SpaceX に続く新たな宇宙企業 SpinLaunch のような挑戦者が、更に低コストで効率的な宇宙アクセスを可能にするかもしれません。
回想: SpinLaunch の初期の頃
アシュリー・バンス氏は、SpinLaunch の初期の頃について、次のように回想しています。
SpinLaunch といえば、あの話題をもう一度。正直なところ、私は基本的なこと以上のことはよく知らない。コンセプト全体が、私にはまったく馬鹿げているように思える。私は先月、Virgin Galactic の2フライトのためにニューメキシコにいたが、砂漠の真ん中にある SpinLaunch の施設に通じる正しい道を見つけることができた。
ゲートの外に立ち、その巨大な仕掛けを観察したとき、私はその実現可能性について考えずにはいられなかった。SpinLaunch がシリコンバレーのサニーベールに拠点を置いていた初期の頃を思い出す。
普通の企業に挟まれた何の変哲もないオフィスビルで営業していた。ビルの中に遠心分離機を作り、壁に弾丸を打ち込むという話を聞いたとき、最初は懐疑的だった。しかし、訪れてみて驚いた。
確かにオフィスの真ん中に巨大で機能的な遠心分離機があり、金属製の発射体をピンポイントで発射していたのだ。発射されるたびに、耳をつんざくような音がした。
近所の人たちは何を考えているんだろうとずっと考えていました。大家や隣人に知らせなければならないようなことなのだろうか?”そういえば、うちには遠心分離機があるんだ”。どうしてこんなことができるんだろう?
その会社には、施設内に寮のような部屋まであった。20~25人の従業員がそこで暮らしていた。まるでロケットのコミューンか労働搾取所のようだった。しかし、元軍人が多く、その力関係からコミューンとは表現できない。
しかし、NASAエイムズの元責任者であるピート・ウォーデンのような専門家に相談したところ、彼はうまくいくかもしれないと信じてくれた。
特に、内部の電子機器が大気に対して過酷な状況にさらされることを考えると、実現可能性についてはまだ懐疑的な意見が多い。しかし、彼らはテストを実施し、私が驚いたのは、SpinLaunch はもはや一社ではないということだ。
レールガンを使って宇宙空間の端まで物体を打ち上げることを目的とした新興企業は他にも現れている。
ちなみに、SpinLaunch は非上場のため株式を購入することはできないが、アシュリー・バンス氏も注目しているように、他の宇宙ペイロード企業とは全く異なるアプローチをしています。