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Rocket Lab の鬼才CEOピーター・ベック氏が描くエンド・ツー・エンドの宇宙企業への野望

Rocket Lab の鬼才CEOピーター・ベック氏が描くエンド・ツー・エンドの宇宙企業への野望

2024年8月9日に、宇宙企業 Rocket Lab (ロケットラボ / RKLB) がQ2決算を発表しました。このなかで、Rocket Lab の鬼才CEO の Peter Beck (ピーター・ベック) 氏は、Rocket Lab が未来に描く、エンド・ツー・エンドの宇宙企業への野望について分かりやすく語っていますので、こちらの記事でご紹介します。

Rocket Lab の野望 : エンド・ツー・エンドの宇宙企業

Rocket Lab が2020年後半に SPAC 上場した際は、Astra (アストラ / ASTR = 2024年半に上場廃止)、Virgin Orbit (ヴァージン・オービット / VORB = 2023年に破産) など同じく SPAC 上場したロケット打上げ会社の一つという括りで知られていました。この時も、Rocket Lab は打上げ成功率が高く、信頼の面でも頭一つ飛び抜けていたと思いますが。

Rocket Lab、TDコーウェン第45回年次航空宇宙・防衛会議に出席

しかし、今年2月に開催されたTDコーウェン第45回年次航空宇宙・防衛会議に、Rocket Lab のCFOアダム・スパイス氏が出席し、Rocket Lab は単なる「ロケット打ち上げ事業」ではなく、エンドツーエンドの宇宙企業としてのビジョンを持っていることを語っています。このカンファレンスでは、次のようなビジョンを語っていました。

TDコーウェン第45回年次航空宇宙・防衛会議で示した Rocket Lab のビジョン

・2024年は予約でいっぱい
– Rocket Lab はニュートロンに注力している
– Rocket Lab は今日までニュートロンにおよそ1億ドルを投資してきた

・2025年にニュートロンを3回打ち上げる予定
– Rocket Lab は最終的に自分たちのコンステレーションを運営したい
– Rocket Lab のコンポーネント事業について

・2025年半ばは、キャッシュフローを生み出す立場の転換点になるだろう

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Rocket Lab は単なる打ち上げビジネスではない

24Q2 の決算では、CEOのピーター・ベック氏自ら、Rocket Lab が単にロケットを打ち上げる会社として誤解されがちであることに言及し、実際にはそれ以上の広範なビジョンを持っていると強調しています。

ピーター・ベック氏は、軌道上でのサービス市場をどのように捉えているかについて、その洞察を提供しています。まずは Rocket Lab の宇宙産業をいくつかのセグメントに分けて説明します。

・打ち上げ市場が約100億ドル
・宇宙船サービスが約200億ドル
・軌道上でのサービス市場は約3,200億ドル

打ち上げ市場が約100億ドル、宇宙船サービスが約200億ドルの規模であるのに対し、軌道上でのサービス市場は約3,200億ドルと圧倒的に大きいことを強調しています。

そして Rocket Lab は、この3,200億ドル規模の市場において競争力を持つことができれば、非常に有利な立場に立つと考えています。

Rocket Lab の3つの主要領域

・The Ride: ロケット打ち上げ

Electron ロケット: 小型打ち上げ市場でのリーダー的存在。
Neutron ロケット: 中型打ち上げ市場に参入するために開発中で、これにより市場の新たなセグメントをカバーすることを目指しています。
打ち上げ能力: 宇宙へ到達する最初のステップとして、Rocket Lab はこの部分をマスターしており、これがビジネスの基盤となっています。

・The Tools: 宇宙での活動

宇宙船とコンポーネント: Rocket Lab は、ただロケットを打ち上げるだけでなく、宇宙でのミッションを成功させるために必要な宇宙船、コンポーネント、ソフトウェア、地上システムも提供しています。

商業および政府顧客への提供: これらのサービスは、すでに商業顧客や政府機関に提供されており、宇宙での活動を支える重要な部分を担っています。

・The Data and Services: データとサービス

長期的な価値: 打ち上げと宇宙船の両方を所有することで、Rocket Lab は遅延やコスト増を避けつつ、宇宙でのサービス提供(例えば、衛星コンステレーションの展開)を行うことができます。

長期的な収益源: このビジョンにより、長期的かつ繰り返しの収益を得ることができ、株主に対する価値を増大させることが期待されています。

ポイント

Rocket Lab が次に狙っているのが、データとサービスの分野です。例えば、宇宙SPACには Spire Global (スパイア・グローバル / SPIR) という海事や気象などに特化した観測衛星サービスを展開する宇宙企業がありますが、Spire は2023年に株式併合を行い上場廃止を間逃れ、その後は順調に自社の専門分野でサービスを成長させ、株価的には宇宙SPACの中では非常に堅実に成長している企業です。Rocket Lab は自社が既に持っているロケット打ち上げ能力、宇宙での活動能力を駆使して、この分野「データとサービスの市場」にも出ていきたいと考えています。

ピーター・ベック氏は、最初の二つを持っていると述べています。ここで言う “最初の二つ” とは、「打ち上げ能力」と「宇宙船サービス能力」を指しています。

Rocket Lab がこれらの基盤を持つことで、軌道上でのサービス市場(3,200億ドル)での競争力が飛躍的に高まると述べています。更に今後「軌道上でのサービス提供」という、この市場に参入することで、Rocket Lab は既存の事業を拡大し、より大規模なビジネスを展開することを目指しています。

軌道上でのサービスは、通信、地球観測、データ解析など、多岐にわたります。

長期戦略と未来のビジョン

Rocket Lab のビジョンは、単なるロケット打ち上げにとどまらず、宇宙全体のエコシステムを構築することにあります。この包括的なビジョンが、同社の現在および将来の成功を理解するための鍵となります。

ピーター・ベック氏は、将来的に成功する宇宙企業は、必要な宇宙船を自社で製造し、オンデマンドで打ち上げ、低コストでコンステレーション(衛星群)を展開できる能力を持つ大規模な宇宙企業だと考えています。

これらの能力を持つことで、他の競合と比較して大きな優位性を持つことができると述べています。これには現在開発中の中型ロケット Neutron ロケット (メガ衛星コンステレーションや深宇宙探査機の打ち上げ、有人宇宙飛行を想定して設計されたロケット) の存在が欠かせません。

Neutron ロケットは、Rocket Lab の戦略において極めて重要なピースであり、これにより宇宙でのサービス提供能力がさらに強化されると考えています。

また、現時点では具体的なアプリケーションやサービス内容については詳しく言及していないものの、Rocket Lab は興味深いアプリケーションに向けた能力構築に注力していると述べています。

ピーター・ベック氏は、宇宙でのデータやサービス提供に焦点を当てた長期的な戦略が、競争上有利な立場に移行させ、将来的に持続可能な成長と収益性をもたらす可能性があることを示しています。

この Rocket Lab の壮大な宇宙ビジョンを理解することで、Rocket Lab のビジネスがどれほど広範囲にわたっているかを理解することができます。

Rocket Lab 投資家の目

私は、2020年の宇宙SPAC時代から、上場している宇宙企業の観察を現在まで続けてきました。この数年間で、壮大な宇宙ビジネスの野望を掲げて、Virgin Orbit、Astra のような企業が散っていきました。

この2社はロケット打上げ企業であり、当時はホットな分野でしたが、結局は SpaceX や Rocket Lab がこの分野の勝者として君臨しています。上場当時 Astra の野望は「毎日のように小型ロケットを打上げる」ことでしたが、残念ながらその夢は叶いませんでした。一方、Rocket Lab は現在、当たり前のように非常にコンスタントにロケットの打上げを重ねています。

更に、Virgin Orbit が破産した際、Rocket Lab は彼らの設備を吸収しており、Virgin Orbit のメカニックな一部は Rocket Lab のイズムとして受け継がれているのです。

目先、Rocket Lab の重要なマイルストーンは、中型ロケット Neutron ロケットの展開になることは間違いないでしょう。Rocket Lab は株価だけ見ると横横のレンジが続いていますが、当初掲げたビジョンを更に大きなものにアップデートさせ、ゆっくりと、しかし加速度的な蓄積を見せています。

歴史学者のデヴィッド・クリスチャン氏は著書『「未来」とは何か:1秒先から宇宙の終わりまでを見通すビッグ・クエスチョン』のなかで、人類の歴史を通じて見られる一つのトレンドは、情報のゆっくりとした、しかし加速的な蓄積です。と述べています。

今確かなものがあるとすれば、Rocket Lab そのトレンドの真っ最中にあるということです。