初期段階の宇宙・防衛技術を構築する優れた創業者への投資を行うベンチャー・キャピタル Space.VC の Jonathan Lacoste (ジョナサン・ラコスト) 氏が、現在市場に上場している宇宙新興企業の状況を短くまとめてくれているのでご紹介します。
the unwinding of '19-'21 sky-high valuations for growth stage in space tech will take some time
Where might they fall? Here's one small example:@RocketLab has launched 18 customer missions since beg of 2022. In '22, they reported $211M in revenue & in '23 are on pace for…
— Jonathan Lacoste 🛰 (@lacostejonathan) November 6, 2023
Space.VC のジョナサン・ラコスト氏は、現在の新興宇宙銘柄 (宇宙SPAC) が置かれている状況は、2009年〜2021年までに加熱しブームとなった成長ステージの宇宙技術に対する高バリュエーションの巻き戻しだと言います。
宇宙SPACブーム〜バブルの崩壊
新興宇宙企業、NewSapce、宇宙SPACのブームの始まりは、2019年に民間宇宙旅行を目指す SPCE のSPAC上場が始まりでした。その後のパンデミックによるFRBの前例のない大規模緩和によって、市場に流れ込んだ資金を背景に宇宙SPACブームが起こり、次々に新興宇宙企業、NewSpace 企業がSPAC上場を果たしました。最終的には約13〜14ぐらいの宇宙企業が上場しました。
しかしこの緩和バブルの終焉、低金利から高金利へと移行するなかで Virgin Orbit (ヴァージン・オービット / VORB) は2023年4月に破綻し、11月上場には一時は最も期待されていた小型ロケットの打上げ会社 Astra (アストラ / ASTR) が債務不履行に陥っています。
現在宇宙SPAC銘柄を見渡すと、ピュアプレイの宇宙企業第一号の SPCE が1ドル前後で取引されているなど、ASTR、MNTS、SPIR に関しては上場廃止を免れるために株式併合をするなど、ほぼ全ての宇宙SPAC企業が上場時の10ドルから半分以下、10/1ぐらいの株価で取引されています。
例外としては、Rocket Lab、AST SpaceMobile が何とか株価を上場時の半分以下で検討しているくらいでしょうか。
新興宇宙企業のバリュエーションはどこで下落するのか?
ラコスト氏は、新興宇宙企業のバリュエーションはどこで下落するのか?その小さな例として、SpaceX のライバル企業で上場している Rocket Lab (ロケットラボ / RKLB) と、未上場で期待値の高い Relativity Space (レラティビティ・スペース) を比較することで、次のように説明します。
Rocket Lab は、2022年初頭に18の顧客ミッションを打ち上げた。22年の収益は2億1100万ドル、23年は3億ドルのペースだ。このカテゴリーでは、SpaceX に次いで2番目に優れた企業だと広く考えられている。Rocket Lab (ロケットラボ) は現在21億ドルの評価額で取引されている。
Relativity Space は今年1回打ち上げられ、第2ステージで失敗した。彼らの新しい開発の焦点は Terran R ビークルにシフトしている。次の打ち上げ目標は2026年。Relativity Space の最後のラウンドの評価額は42億ドルだった。
Rocket Lab はもっと高く評価されるべきだと、ほとんどの人が思うだろう。割安だと主張する人もいるかもしれない。しかし、過去2年間に18回の打ち上げを行った信頼できる企業と、まだ顧客打ち上げのない研究開発段階の企業との間に、どのような評価の違いがあるのだろうか?
私は、Relativity Space のような多くの宇宙技術成長企業の本当のバリュエーションは、75~80%低いはずだと思う。宇宙・防衛関連企業の次のコホートは、現在、中期・成長ラウンドに成長しており、彼らはこのことを痛感している。
Rocket Lab のバリエーションの低さに関しては、宇宙産業に関わっている多くの著名人が言及しており、『イーロン・マスク』、『When The Heavens Went On Sale』の著者で知られる Ashlee Vance (アシュリーバンス) もその一人である。Relativity Space に関しては、確かにかなり割高に評価されており、その期待値がかなり高いことは確かだと思う。
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Relativity Space は画期的な3Dプリンターでロケットを作るという目新しさ、若い優れたCEOなど、メディア、イノベーション系のビジネス紙で評価されており、その期待値の高さは私も見ていて思うところがある。
しかし実績は現在のところ失敗に終わっており、Relativity は次のロケット「Terran R」にシフトし、2026年の打上げを目指している。この点に関しては、上場企業と未上場企業の差のようにも感じられる。Rocket Lab も金融相場で一時は WSB などで話題となり、20ドルを超えて取引されていたことがありましたが、今はその魔法も解けて取引されています。
Relativity も、もし上場していれば、他の新興宇宙企業と同じように実績のなさから期待値だけのバリエーションは許されないだろう。
業界の長期的展望にとって非常に良いリセットである
ラコスト氏は、現在の新興宇宙企業の低迷、引き戻しを良いリセットと捉えいる。
ベンチャーキャピタル市場は、これらの企業の価格設定を大きく変えており(数億ドル対10億ドル)、早い段階でより優れたオペレーショナル・エクセレンスを生み出している。
結局のところ、これは業界の長期的展望にとって非常に良いリセットである。しかし、成長途上の新興企業にとっては痛みを伴う。
追伸:これらの教訓が防衛テックに生かされることを願う。防衛テックでは現在、大規模/中規模ラウンドでこれらと同じ過ちを繰り返している。
著者の私は既に宇宙SPAC銘柄を2021年頃よりロングしており、どれも塩漬け状態になってしまっている。もし今、新興宇宙銘柄で買いの銘柄はありますか?と聞かれたら、Rocket Lab と答えたいものの、私なら今のタイミングでは買わないだろう。
というのも、もっと他にこれから上がっていく銘柄は山ほどあり、今新興宇宙銘柄を買うメリットは無いように思うからである。宇宙セクターも当初は、SpaceX の上場に合わせてブームが来る!と言われていたが、肝心の SpaceX の上場は当分なさそうであり、2023年はAIブーム一色だと思います。
「【AI技術の勃興】技術革命におけるバブルのサイクルと現在地」という記事で述べているように、現在ハイテク、グロース銘柄を買うのであれば、AIによって恩恵を受ける銘柄をロングするべきでしょう。
例えな、現在AI分野はAI半導体がホットスポットであり、続いてセイバーセキュリティ、後にビックデータ界隈、ロボティクス分野など、順を追ってAIの恩恵がその分野に流れるものだと思います。
宇宙産業もAIの恩恵を受けるとされていますが、それにはまだ先の話であり、残念ながら現在上場している企業のいくつかは今後の高金利による資金難で経営が立ち行かなくなる企業も出てくることが予想されます。
またある投資家は、現在上場されているピュアプレイの宇宙銘柄には有望なものはなく、一部 Rocket Lab や AST SpaceMobile で茶を濁す程度という人もいます。個人的には、Rocket Lab、Planet、Spire Global には期待していますが、株価は残念な結果になっています。
一部、観測衛星企業が黒字化へ向けて前進!
一方で残念なニュースだけではなく、観測衛星企業の BlackSky や Spire Global は第三四半期の決算発表で、初めて黒字化へ向けて前進したことを発表しました。BlackSky は第3四半期に初の四半期黒字を計上し、気象分野で成長を見せる Spire Global は、来年の第2四半期か第3四半期にはキャッシュフローがプラスになると予想されている。
更に、同じく地球観測衛星の Planet は来年には黒字化が見えてくるのではないか?と予想されており、地球観測分野の成長にも注目したいと思います。