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ABL、商業用ロケット打ち上げからミサイル防衛への重点の移行を発表

ABL、商業用ロケット打ち上げからミサイル防衛への重点の移行を発表

アメリカに拠点を置く宇宙企業で、2017年に設立された ABL Space Systems (ABL) が、商業用ロケット打ち上げからミサイル防衛への重点の移行を発表しました。

ABL Space Systems は、主に小型衛星を低軌道に投入するための商業打ち上げサービスを提供することを目的に設立されました。同社は、技術のシンプルさ、コスト効率、運用の柔軟性を重視しており、小規模なチームでロケットや地上設備を設計・製造していました。

ABL は、ロケット設計、エンジン開発、試験設備の設置などにおいて多くの技術的進歩を遂げました。また、過酷な環境下での試験や運用を通じて、信頼性の高いシステムを構築しています。しかし、商業打ち上げ市場の成熟化に伴い、競争が激化し、ABL が持つ独自の技術の影響力が薄れていきました。

そして同社のファウンダー/CEOの Dan Piemont (ダン・ピエモント) 氏が、2024年11月15日に「商業用ロケット打ち上げからの撤退」を発表しました。以下は、Dan Piemont 氏のステートメントです。

商業用ロケット打ち上げからミサイル防衛への移行

ABLは、商業用ロケット打ち上げからミサイル防衛への重点の移行を発表しました。

過去6年間、ABL は独自の機能を備えた軌道ロケットRS1を開発し、ロケットエンジン、航空電子工学、ソフトウェア、試験施設など、重要な技術とインフラを構築してきました。

こうした実績にもかかわらず、ABL は競争の激化と市場の成熟化により、商業打ち上げ業界における潜在的な影響力が弱まっていることを認識しました。

一方、ロシア、中国、北朝鮮、イランによるミサイル増強といった世界的な脅威により、ミサイル防衛システムの改善の必要性が浮き彫りになりました。

既存のソリューションでは不十分であることを認識した ABL は、RS1プログラムで開発した技術を活用し、特にミサイル防衛に専門知識を捧げることを決定しました。

ABL は、より頻繁なテストと革新的な研究によりミサイル防衛を強化できる機会があると考えており、このミッションに専念する他社との協力関係を模索しています。

ロケット打上げ市場の勝者と敗者

Virgin Orbit、Astra Space に続き、ABL が商業用ロケット打ち上げからの方向転換を強いられることになりました。競争の激しいこのロケットの打上げ市場は、現在 SpaceX や Rocket Lab などの宇宙企業が先行支配しており、小型のロケット打上げ市場には関しては、Rocket Lab のエレクトロンが市場を席巻しています。

SpaceX の圧倒的なシェア

SpaceX は「ライドシェア」プログラムを通じて、大量の小型衛星を1回の打ち上げで運ぶサービスを提供しています。この方法は非常に効率的でコストが低く、特に小型衛星オペレーターにとって魅力的です。

さらに、SpaceX の再利用可能なロケット「Falcon 9」は、打ち上げコストを大幅に削減しており、他社が価格面で競争するのを困難にしています。

Rocket Lab のエレクトロン

小型ロケット市場では、Rocket Lab のエレクトロンが主導権を握っています。エレクトロンは、小規模なペイロード(300 kg以下)をターゲットとし、専用打ち上げサービスを提供しています。

Rocket Lab は頻繁な打ち上げ能力を持ち、柔軟性が高い運用で顧客の需要に応えています。これが市場の「デファクトスタンダード」になりつつあります。

新規参入者の困難

商業用ロケット事業は技術開発だけでなく、大規模な資金と長期的なビジョンが必要です。多くの新興企業はこれを維持することができず、資金不足や市場での差別化の難しさに直面しています。

また、市場が成熟しつつあり、新規参入者が大きなインパクトを残す余地が狭まっているのも事実です。宇宙ビジネスに精通した投資家の間では、ロケット打上げ市場に残るのは、SpaceX、Rocket Lab、Blue Origin の3社に絞られるのではないか?という認識が広がっています。