江戸時代の日本で成立した伝統的な話芸の一種、落語と Lo-fi Hip Hop (ローファイ・ヒップホップ) を掛け合わせた新ジャンル「チル落語」が爆誕!
Lo-fi Hip Hop × 落語
Twitter での噂を聞きつけて、落語家の林家たい平さんの YouTube チャンネルを見てみると、確かに「チル落語」という実験的な試みが行われているようです。
林家たい平さんが、2020年10月4日に公開した最初のチル落語動画「【チル空間】Lo fi HipHop×落語「青菜」」の冒頭で、以下のようなことを述べています。
最近「Lo-fi Hip Hop」と「落語」が合うという声がすごいんですよね。ヒップホップという音楽ジャンルの中で、Lo-fi って前に付きますんで、ローファイなので、ちょっと粗めのヒップホップって感じですよね。
そしてこれを聞くとチルな空間になる (笑) っていうんですって。チルな空間って何ですかね?
チル落語に迫る前に、Lo-fi Hip Hop と、そのブームについて簡単に復習しておきましょう。
Lo-fi Hip Hop (ローファイ・ヒップホップ) とは?
まず、Lo-Fi (ローファイ) という言葉は、基本的に “Low Production” という意味で、ざっくり言うと “質の高い音楽を作る方法を知らない” 人たちが作るアンダーグラウンドな音楽スタイルのことです。
Lo-fi Hip Hop では、アーティストが Vinyl Crack (ヴァイナルクラック) のような古いヴィンテージサウンドを加えて、インストゥルメンタルをよりヴィンテージに感じさせたり、スキル不足でそれ自体がロープロダクションであったり、トラックに雰囲気を与えるためにナチュラルサウンドを入れることもよくあります。
また、ジャズの曲からアニメの曲、ローファイなインストゥルメンタルまで、サンプルを多用する傾向があります。また、インストゥルメンタルのテンポはドラムとキックが中心です (ハイハットは使いません)。ハイハットは現在のラップのメインストリームで使われているものだからです。
そのため、90年代のヒップホップのインストゥルメンタルと同じように、様々な楽器がリズムを刻むために使われており、ハープ、ピアノ、ギター、フルートなど、かなりエキセントリックで珍しい楽器も使われています。ローファイというジャンルは、ヒップホップの中でも特に知られていない (エキセントリックな) セクションであるため、ここではヒップホップに分類しています。
ブームの火付け役、フランスの Lofi Girl とは?
そして一連の Lo-Fi Hip Hop ブームの火付け役となったのが、フランスに拠点を置く YouTube チャンネル Lofi Girl です。日本人に馴染みのあるジブリ風のかわいいアニメが印象的で、常にライブ配信しており、仕事や作業のBGMとして流している人が多いと思います。2022年3月23日現在、チャンネル登録者数は1020万人を誇っています。
林家たい平のチル落語とは?
林家たい平は、2021年8月29日に公開した動画、横浜にぎわい座で行われた演目『愛宕山』に Lo-Fi Hip Hop をのせた「【チル落語】愛宕山×Lo Fi HipHop」の冒頭で以下のように述べています。
最近お会いする人によく言われるのは、「Lo-Fi Hip Hop」と「落語」をコラボさせた、チルな空間がとっても良いです!と立て続けに何人にも言われてまして、すごく嬉しく感じています。
あれ1作だけだったので、皆さんの声なきリクエストにお応えして、2人に言われたということは、その奥には10万人の需要があるんだと思います (笑) その10万人の需要にお応えして、今回もチルな落語、Lo-Fi Hip Hop と林家たい平落語をお楽しみ下さい!
【チル空間】から【チル落語】へ
つまり冒頭の2020年10月4日に公開した最初の「Lo-Fi Hip Hop × 落語」の動画では、強調部分が【チル空間】となっていましたが、2021年8月29日に公開された動画では、強調部分が【チル落語】となっており、約1年くらいの間に林家たい平さんの中でアップデートされたことが確認できます。
ファンの間でも「Lo-Fi Hip Hop × 落語 = チル落語」は好評のようで以下のようなコメントが寄せられています。
落語には全く明るくない一介のヒップホップリスナーですが、語りとフロウを行ったり来たりしている感覚がすごく心地いいです…!すごい…!! – m a
音として聴くと、声の微妙な音程やリズムまで気を遣われているのがよくわかります!まさに名人芸!
落語もですが、こっちももっと聴きたいです! – ケイ
落語とヒップホップがこんなにも合うとは思ってもなかった。
でも冷静に考えたら、ヒップホップも韻といった言葉遊びにビートを合わせてるわけだから落語が合わないわけがないですね。 – バックドロップ
これは落語家、林家たい平さん、新ジャンルを確立してしまったのではないでしょうか?実際に Lo Fi HipHop を流しながら、ライブで落語をしたら、今まで落語に興味がなかった層まで動員できるのではないしょうか。とても新しい可能性を感じました。