日本の現代美術家、村上隆による宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』評をご紹介します。というのも、以下のツイートの後に、Twitter スレッドにしてコメントしていくのかな?と思いきや、普通にツイートを重ねてコメントされていたので、こちらで村上隆さんの『君たちはどう生きるか』評をスレッド化してご紹介します。
「君たちはどう生きるか」
絵描きの僕にとっては最高の作品でした。
以下、ネタバレにもならないであろう、私の個人的な解釈ですが、ネタバレかもしれませんので、それが嫌や人は読まないでください。 pic.twitter.com/h8Yo8vcba8— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
以下、ネタバレの可能性があります
注意!以下、ネタバレの可能性あり!
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あるドキュメンタリーで、駿さんが、イギリスとのテートブリテン美術館に行って、ミレーのオフェーリアを鑑賞後に「凄い作品だったねぇ。もう当時に全部やってるんだねぇ。叶わない」みたいなことを呟いてて(正確な言説は pic.twitter.com/xehoTAQyqX— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
宮崎駿監督は、絵を鑑賞する際に作家の頭脳の中にジャンプインしている
何方か調べてください。僕の記憶は正しくはないので)駿さんは、絵を鑑賞時に作家の頭脳の中にジャンプインしてるんだ!と思いました。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
アニメーション監督なんだけど、絵描きでもある
つまり駿さんはアニメーション監督なんだけど、絵描きでもあるので、絵の中の情報が理解できるんだなぁ、と思いました。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
作品を作る過程を理解し、追跡する
僕ら絵描きや、プロの絵の鑑賞者は、ミニマルアートやコンセプチュアルアートでも、その素材の選択、組み立て方において作家の脳内の思考というかシナプシスのつながった電極の道のりを理解、トレースします。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
具体的には、アーティストがどのように素材を選択し、どのようにそれを組み立てるのか?そしてそれがアーティストの思考 (脳内のシナプシスのつながりや電極の道のりというメタファーを使って) をどのように反映しているかを理解し、追跡します。
これは、アート作品をただ視覚的に楽しむだけでなく、その背後にある意図や思考を理解しようとする試みを表しています。
なので筆で描かれた絵であれば、その情報は膨大であり、細かく微細に理解するにはアーティスト自身の辿った人生を手掛かりにもします。それが美術史であったりします。故に作家存命中は真意が見えずらいと言うのもあります。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
これは、アーティストの人生経験がその作品にどのように反映されているかを理解することで、作品の意味や目的をより深く理解することが可能になるという考えです。
美術史は、アーティストの人生経験やその時代の文化的、社会的背景を理解するための重要な手がかりを提供します。作家がまだ生きている間は、その作品の真の意味が見えにくいというのは、作家の人生がまだ進行中であり、その経験や視点が変化し続けるため、作品の解釈も変わる可能性があるからです。また、作家自身が作品の意図を完全に明らかにしないこともあります。
元気な頃の母親 (宮崎駿のお母さん) に会いたい
今回、目立って出てきた参照絵画はベックリンの「死の島」です。他にもたくさんの芸術の参照例があったと思いますが、それらを、作った芸術家の脳内のシナプシスの電極のスパークに全身全霊を委ね、己の脳のクリエイティブな瞬間のスパークに結びつけ、駿さんの会いたい、元気な頃の彼の母親に会いに pic.twitter.com/jdLFBssInO
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
また、それらのアート作品が、駿さんが元気だった頃の彼の母親に会いに行くという物語を描くためのインスピレーションとなったとも解釈できます。(映画の核となる物語は、ジョン・コナリーの著書『失われたものたちの本』から影響を受けていることを、宮崎駿監督は言及しています)
主人公の眞人はハヤオさんです
行く、そんなお話であったと思います。
主人公マヒトはハヤオさんです。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
芸術が産み出されるシナプシス内での電極発生表現
劇中、マヒトが6角形の幾何学的な産道の様な道を歩く時、チカチカと電気のスパークが出てきますが、それがその芸術が産み出されるシナプシス内での電極発生表現であると思いました。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
過去の己の記憶を辿りつつ、カヌーで大海原に漕ぎ出す
過去の己の記憶を辿りつつ、ベックリンの「死の島」に行くと、その島の土台はノアの箱舟となっており、そこから「太陽の王子ホルス」や其れを焼き直しした「未来少年コナン」の旅立ちのシーンの様に、カヌーで大海原に漕ぎ出し、、、 pic.twitter.com/XjbVtx7KJP
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
高畑勲と、今一度彼岸の場所を共に旅する
つまり、高畑勲とと今一度旅をし(しかし、今回は死にに旅立ってしまわれた彼岸の場所を共に旅すると言う、いつもの太陽のない世界を表現していました) pic.twitter.com/8P1bnYsj3s
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
若い頃の母と出会い、義母となるナツコお母さんと言う現実を受け入れる
そこには若い時分の母がいて、母と自分の回顧が深く行われ、そして、マヒト=駿さんは、義母となるなつこお母さんと言う現実を受け入れ、真実の母も己の青春に踏み出していく。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
新しい “宮崎駿” が爆誕!!!
80歳を超え、駿さんは、やっと母への強烈な執着から解放され、新しい駿さんに爆誕し直した。
そう言うお話でした。— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
僕の危うい記憶ですが、今まで、駿さんは
「宮崎」姓でしたが、今回から「宮﨑」に変わり、正に、生まれ変わった新世ハヤオ、ミヤザキに爆誕!
そんな作品でした。— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
美術館に行くのが好きな人にお勧めできる作品
そんな感じで、芸術家、ハヤオさんの脳内をゆっくり堪能できた、最高の芸術作品体験でした。
映画ファンでは無く、美術館に行くのが好きな人にお勧めできる作品です。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
私は封切り初日に映画を観てきたのですが、その後に公開された朝日新聞デジタルのサイト、好書好日に<「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと>掲載された記事のように、映画を観終わった後は「ぽかん」としてしまいましたが、すぐに手繰り寄せるように終始脳内で映画を振り返り、この作品の意味というかメッセージを一生懸命探していました。
『君たちはどう生きるか』物語の核心に迫る
宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』が公開されました。前作から10年。制作7年。引退表明を撤回して撮られた本作は、事前プロモーションもなし。謎に包まれた大作として、多くの人がどのような映画か気になっているのではないでしょうか。#宮崎駿 #君たちはどう生きるか #ジブリ #アニメ #映画 pic.twitter.com/266DdFrdIb
— コンテンツ探偵メタ (@cd_meta) July 14, 2023
とにかく、映画の中盤から駆け足で世界が捻れて、走馬灯のように巡っていく夢のような世界観が心地よく、終盤はその世界が崩れて一気に現実に引き戻される、次の瞬間には、「ぽかん」として、この映画の核心を探し求める … というような非常に稀な体験をすることができました。本当に凄まじいものを目撃しました。パンフレットが発売されるタイミングでもう一度見に行きます。