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現代美術家、村上隆による『君たちはどう生きるか』解説

現代美術家、村上隆による『君たちはどう生きるか』レビュー

日本の現代美術家、村上隆による宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』評をご紹介します。というのも、以下のツイートの後に、Twitter スレッドにしてコメントしていくのかな?と思いきや、普通にツイートを重ねてコメントされていたので、こちらで村上隆さんの『君たちはどう生きるか』評をスレッド化してご紹介します。

以下、ネタバレの可能性があります

宮崎駿監督は、絵を鑑賞する際に作家の頭脳の中にジャンプインしている

アニメーション監督なんだけど、絵描きでもある

作品を作る過程を理解し、追跡する

つまり、アート (特にミニマルアートやコンセプチュアルアート) を作る人々やプロのアート鑑賞者が、アーティストが作品を作る過程を理解し、追跡します。

具体的には、アーティストがどのように素材を選択し、どのようにそれを組み立てるのか?そしてそれがアーティストの思考 (脳内のシナプシスのつながりや電極の道のりというメタファーを使って) をどのように反映しているかを理解し、追跡します。

これは、アート作品をただ視覚的に楽しむだけでなく、その背後にある意図や思考を理解しようとする試みを表しています。

アート作品 (特に手描きの絵) の背後にある情報が非常に多く、その作品を深く理解するためには、アーティスト自身の人生経験を手がかりにすることが有益です。

これは、アーティストの人生経験がその作品にどのように反映されているかを理解することで、作品の意味や目的をより深く理解することが可能になるという考えです。

美術史は、アーティストの人生経験やその時代の文化的、社会的背景を理解するための重要な手がかりを提供します。作家がまだ生きている間は、その作品の真の意味が見えにくいというのは、作家の人生がまだ進行中であり、その経験や視点が変化し続けるため、作品の解釈も変わる可能性があるからです。また、作家自身が作品の意図を完全に明らかにしないこともあります。

元気な頃の母親 (宮崎駿のお母さん) に会いたい

アーノルド・ベックリンの「死の島」などの参照絵画を通じて、アート作品を作る過程におけるアーティストの思考と感情を理解し、それを自身の創造的な瞬間につなげることを述べています。

また、それらのアート作品が、駿さんが元気だった頃の彼の母親に会いに行くという物語を描くためのインスピレーションとなったとも解釈できます。(映画の核となる物語は、ジョン・コナリーの著書『失われたものたちの本』から影響を受けていることを、宮崎駿監督は言及しています)

主人公の眞人はハヤオさんです

芸術が産み出されるシナプシス内での電極発生表現

なるほど!そういうことだったんですね … この洞察を得ることができるのは、正に芸術家の真骨頂。あのチカチカとしたものは何だったのか?理解に苦しんだのですが、これは目から鱗の発見です。

過去の己の記憶を辿りつつ、カヌーで大海原に漕ぎ出す

高畑勲と、今一度彼岸の場所を共に旅する

若い頃の母と出会い、義母となるナツコお母さんと言う現実を受け入れる

新しい “宮崎駿” が爆誕!!!

美術館に行くのが好きな人にお勧めできる作品

私は封切り初日に映画を観てきたのですが、その後に公開された朝日新聞デジタルのサイト、好書好日に<「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと>掲載された記事のように、映画を観終わった後は「ぽかん」としてしまいましたが、すぐに手繰り寄せるように終始脳内で映画を振り返り、この作品の意味というかメッセージを一生懸命探していました。

『君たちはどう生きるか』物語の核心に迫る

とにかく、映画の中盤から駆け足で世界が捻れて、走馬灯のように巡っていく夢のような世界観が心地よく、終盤はその世界が崩れて一気に現実に引き戻される、次の瞬間には、「ぽかん」として、この映画の核心を探し求める … というような非常に稀な体験をすることができました。本当に凄まじいものを目撃しました。パンフレットが発売されるタイミングでもう一度見に行きます。