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トランプとスコット・ベサントから読み解く、この後の展開とは?

今回はトランプ大統領と財務長官スコット・ベサントのこれまでの言説等を分析し、今後どのような政治進行に株式市場が巻き込まれてどのように展開になるのか?について、Russell Napier 氏と Edward Chancellor 氏による対談の一部をご紹介します。

トランプ大統領が影響を与えるのは債券市場?

トランプ大統領はドル安にはあまり関心がないようです。以前は株式市場の下落を懸念していると考えられていましたが、スコット・ベサントの発言からも、それを重視していないことが分かります。

では、彼が実際に影響を与えうるのはどこか?それは債券市場です。トランプの就任以来、債券利回りは下がってきました。ただし、これは就任直前に上昇していたことの反動でもあるため、大きな意味はないかもしれません。

ただ、トランプの行動に最も強く反応し、彼を思いとどまらせる可能性があるのは、債券利回りが上昇することでしょう。外国人は米国の国債市場の約3分の1を保有しています。その半分は各国の外貨準備として、もう半分は外国の民間部門によるものです。

仮にですが、ドイツ政府が「新規発行のドイツ国債は、米国債の売却によって賄う」といった布告を出したとします(実際にそうなるとは言っていませんが)。そうなると、米国債市場や金利、そしてトランプ政権にとって大きな影響が出てきます。

トランプの貿易戦争は、やがて資本戦争へと発展する可能性がある

要するに、トランプの貿易戦争は、やがて資本戦争へと発展する可能性があり、その結果として米国の債券利回りが上昇するリスクがあるということです。

なぜなら、トランプがヨーロッパ諸国に対して、自立のために巨額の負債を発行せざるを得ない状況を強いており、そこに「パラドックス」が生じるからです。

スコット・ベサントは、かつてはジョージ・ソロスの元でも働いていた

ヨーロッパ諸国はアメリカ資産の大きな保有者でもあるのです。スコット・ベサントについて言及すると、彼は投資業界出身で、かつてはジョージ・ソロスの元でも働いていました。

彼が現在財務長官を務めていることが、トランプの過激な政策を抑制する要素になり得るのでしょうか?

私はスコット・ベサントを多少知っており、彼の判断を信頼しています。彼は愚かなことは言いませんし、非常に思慮深く、知的な人物です。

また、彼は米国の金融システムが、超低金利の長期化によって、どれほど機能不全で危険な状態に陥っていたかを理解しています。私は10年前、そして最近も彼とこの件について話したことがあります。

アメリカ経済にはデトックスが必要だ

彼が「アメリカ経済にはデトックスが必要だ」と言ったとき、彼が何を意味しているのかは明確です。それは、極度に金融化された経済システムからの脱却を意味しています。

つまり、企業が買収されて分割され、レバレッジをかけられ、経営が株主の利益を吸い上げることに集中するような構造です。彼はまた、米国株式市場が歴史的な水準と比べても極めて高く評価されていることも理解しています。

今年初めの時点で、米国株はシュラー式PERで38倍という、上位1%の水準にありました。標準偏差で表すならば、平均値から3標準偏差も離れている極端な水準であり、こうした状態は極めて稀です。

こうした非常に高いバリュエーションに不確実性が加われば、市場にボラティリティが生じ、株価が急落する可能性が出てきます。

今起きているような調整ではなく、それをはるかに超える規模の下落が起こり得る

今起きているような調整ではなく、それをはるかに超える規模の下落が起こり得ます。ルーズベルトの時代に戻ると、1936〜37年、彼がアメリカのビジネス界を怯えさせた結果、経済は収縮し、企業投資が崩壊しました。

株式市場は約34%下落し、その当時の評価水準も今ほど高くはなかったのです。数週間前の株価水準は、歴史上で見ると、1929年と2000年のITバブル時を除けば、最も高い水準でした。

ベサントはこの事実をよく知っているはずであり、十分に警戒しているでしょう。現在のアメリカの富は、株式資産に限らず、国家のGDPや国民所得に対して極めて高い比率で存在しています。

たとえ「デトックス」が必要だと考える人がいても、それが富の大幅な喪失によって達成されるような形で起きれば、政治的な空気は一変するでしょう。そして今のところ、議会からはまだ何の反応も出ていません。

しかし、議員たちが議場に戻ってきたとき、いずれは何らかの声明を出すでしょう。ここでもやはり、1937年以降のルーズベルト政権のような状況になる可能性があります。

当時、ルーズベルトは議会の主導権を失い、それが「ニューディール政策」の終焉をもたらしました。