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宇宙ビジネス市場のセクター別で見る宇宙関連企業のプレイヤーたち

宇宙ビジネス市場のセクター別で見る宇宙関連企業のプレイヤーたち

新しい宇宙 “New Space (ニュースペース)” の時代は、2002年にイーロン・マスク率いる SpaceX (スペースX) の設立によって始まりました。これまで宇宙開発は、政府主導の大規模なプログラムに依存しており、高コストで時間がかかることが特徴でした。

しかし SpaceX の登場で圧倒的に打ち上げコストが下がったことで、民間企業による革新的なアプローチを通じて、宇宙開発をより効率的かつ安価に行うことができるようになり、New Space と呼ばれる新しい宇宙産業が発展し、過去20年間に設立された何百もの宇宙スタートアップのエコシステムを作るに至っています。

SpaceX は現在、様々な宇宙ビジネス産業をリードしており、その存在感は他の宇宙企業を寄せ付けません。2020年にはコロナショックによるFRBの金融緩和によって、多くの宇宙関連企業が特別目的買収会社 (SPAC) と合併して上場しました。

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その数何と、2019年〜2023年までに15社の宇宙関連企業がSPAC上場、他3社がIPOで上場し、計18の宇宙関連企業がこの数年間で株式市場に上場を果たしました。ここからは “New Space 2.0” と題され、生き残りをかけた競争、成長、更なる革新的な新たなプレイヤーが生まれる時代へとシフトしていきます。

・【関連記事】「New Space 1.0」から「New Space 2.0」への転換

そろそろこのタイミングで、宇宙ビジネス産業のセクター別で、これまでに上場した宇宙関連企業をプロットし、どんな宇宙関連企業がどのセクターでビジネスをしているのか?について見渡せるような記事が必要ではないか?と思い、この記事を書きました。まずは宇宙ビジネス産業のビックピクチャーとして、宇宙ビジネスをリードする国を見てみましょう。

2022年軌道打上げ年間レビュー

2022年軌道打上げ年間レビュー

出典 : BryceTech

BryceTech のレポート「2022年軌道打上げ年間レビュー」によると、186回の軌道上打上げ、2,521機の宇宙船の打上げが記録されています。

国別で軌道への打上げ回数を見ると、米国が「87」、中国が「64」、ロシア「21」その他が「14 (日本は1)」となっており、宇宙産業においても米国と中国、ロシアが市場をリードしています。

かつて宇宙旅行は、ほぼ国家が資金を提供し、航空機メーカーの Boeing (ボーイング)、ヨーロッパの航空宇宙機器開発製造会社 Airbus (エアバス)、あるいは米国の防衛/軍需産業の企業、Lockheed Martin (ロッキード・マーチン) や Northrop Grumman (ノースロップ・グラマン) など、少数の既存企業によって運営されていました。

これらの防衛関連銘柄は、ロシアのウクライナ戦争が始まると市場をアウトパフォームし、Raytheon (レイセオン) や L3 Harris (L3ハリス) は Boeing や Lockheed Martin に続いて、新興技術を獲得するために近年ベンチャーキャピタル部門を設立しています。

・【関連記事】L3Harris が Aerojet Rocketdyne を47億ドルで買収を発表

この流れで、L3 Harris は2022年12月に、航空宇宙・防衛セクターの2022年最大の取引の1つである、ミサイル防衛/戦略システムを手掛ける宇宙機器メーカー Aerojet Rocketdyne (エアロジェット・ロケットダイン) の買収計画を発表しています。

地政学的にも今後数十年間で、宇宙の重要性はますます高まっていくことが予想されます。それは、軍事利用が依然として重要である一方で、新たな民間利用が急速に拡大しており、宇宙の領域にも民主化の波が起きています。

誰でも簡単に衛星写真を購入できるアプリ「SkyFi」とは?

最近衝撃を受けたのは、衛星写真にも民主化が起きており、誰でも簡単に衛星写真を購入できる「SkyFi」というアプリの登場です。衛星データはこれまで、特定の企業しか手に入れることができませんでした。しかし SkyFi は “すべての人に地球観測を” というスローガンのもと、誰もが衛星写真にアクセスすることを実現しています。

このようなアプリの登場は、私が2020年に宇宙SPAC銘柄をトレードしていた時には全く予想もつきませんでした …

【関連記事】アシュリー・バンス氏、私たちは宇宙の新しい時代にいる

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宇宙ビジネスのセクター

宇宙ビジネスのセクター

・LEOコンステレーション (観測衛星)
– 宇宙インターネット
– 地球観測衛星
・ロケットの打上げ市場
・民間有人宇宙飛行
・宇宙インフラ (軌道上でのサービスの提供、組立、および製造)
・宇宙探査/惑星探査
・国家安全保障

宇宙ビジネスのセクターには大きく分けて6つのセクターが存在します。2020年の宇宙関連企業によるSPAC上場のブームでは、小型ロケットの打上げ企業、観測衛星などの企業が注目を集めましたが、その後宇宙インフラの企業や、2023年には宇宙探査を専門にした宇宙関連企業がSPAC上場を果たしました。

宇宙市場マップ

宇宙市場で活用する宇宙スタートアップや、米国市場に上場している宇宙スタートアップ企業を宇宙ビジネスのセクターで分けてマッピングしてご紹介します。

これを見れば、現在活躍している宇宙スタートアップ企業が宇宙市場のどの位置に所属しており、どのような事業を展開しているのか?ライバル競合となる企業はどこか?などをひと目で見ることができます。 ※ ( ) 内にティカーシンボルが書かれている企業は米国の株式市場に上場している企業です。

ロケット打上げ市場

大型 中型 / 小型
SpaceX
Blue Origin
Relativity
Rocket Lab (RKLB)
Astra (ASTR)
Virgin Orbit (VROB)

人工衛星の市場

コネクティビティ
データ・サービス データ・インフラストラクチャ
Stralink
Project Kuiper
AST SpaceMobile (ASTS)
Mynaric (MYNA)
リモートセシング
オプティカル プラットフォーム&アナリティクス
BlackSky (BKSY)
Planet
Satellogic (SATL)
その他 無線周波数
Spire Global (SPIR) HawkEye 360

製造業

人工衛星プラットフォーム 推進力
Terran Orbital (LLAP) Phase Four

宇宙空間でのサービス

ロジスティクス & サービス
スペースタグ & サービス
Astroscale
D-Orbit
Momentus (MNTS)
Orbit Fab
資源・探鉱
ランダーズ & ローバーズ
Intuitive Machines (LUNR)
宇宙居住・製造
宇宙居住 宇宙製造・再突入
Axiom Space Redwire (RDW)
Outpost
Varda Space Industries

LEO衛星コンステレーション

LEO衛星コンステレーション

宇宙ビジネスで今最もホットなエリアとして知られているのが、低軌道での衛星コンステレーションです。この市場を細分化すると、コネクティビティの市場には、データサービスとデータインフラがあります。リモートセシングの市場には、SAR、ハイパースペクトル、オプティカル、プラットフォーム&アナリティクス、その他、無線周波数があります。

LEO (低軌道) 衛星は、地球の赤道を中心に一定の軌道を描くGEO (静止軌道) 衛星とは異なり、地球の周りを電子のように飛び回る低軌道の衛星です。LEO衛星はその名の通り地球に近い衛星で、高度500km〜1,200kmと従来のGEO衛星の50倍近い高度を周回しています。国際宇宙ステーション (ISS) は低軌道にあり、約93秒ごとに地球を一周しています。

宇宙を利用したインターネットサービス

Starlink (スターリンク)

Starlink (スターリンク)

このエリアでは、SpaceX による衛星インターネットコンステレーション Starlink (スターリンク) がビジネスを展開しており、遂に2022年10月には、アジア初となるサービスを日本でも利用できるようになりました。現在世界で打上げられている衛星の半分以上が Starlink の衛星です。

・【関連記事】Starlink、アジア初となるサービスを日本で開始!

Starlink は、地球低軌道上にある何千もの小型衛星のネットワークを使って、世界中の人々に高速かつ低遅延のインターネットを提供することを目的としています。

上記の動画は、地球を周回する Starlink 衛星 (緑は運用中、青は上昇中、赤は下降中) です。Starlink は、ブロードバンドインターネットサービス、低遅延、全世界をカバーするサービスを低コストで提供する衛星のコンステレーションです。2019年に衛星の打ち上げを開始し、すでに現実のものとなっています。

・【関連記事】ロイヤル・カリビアン・グループが Starlink を採用し、業界初の高速インターネットをクルーズ船全船に提供へ

Starlink の目標は、地方や遠隔地、発展途上国など、インターネットインフラが限られている、あるいは全くない地域の人々に、信頼性の高いインターネットアクセスを提供することです。消費者へのインターネットアクセスの提供に加え、航空、海運産業向けには Starlink Maritime (スターリンク・マリタイム) というインターネットサービスの提供を開始しており、今まさに  Starlink のビジネスがドライブしている最中です。

SpaceX の存在はこれまでロケット/宇宙船の打上げ会社と言われていましたが、今や収益ベースでは衛星会社としてその存在を増しています。

Project Kuiper (プロジェクト・カイパー)

Amazon の衛星ブロードバンドネットワーク「Project Kuiper」について

Amazon も2023年3月14日に、衛星ブロードバンドネットワーク「Project Kuiper (プロジェクト・カイパー)」の顧客端末や価格等についての詳細を公開しました。

Amazon、Project Kuiper の低価格な顧客端末を初公開

小型で低コストのアンテナが、Project Kuiper が世界中の顧客やコミュニティに高速で手頃な価格のブロードバンドを提供するためにどのように役立っているのかについてを紹介しています。

AST Spacemobile (ASTスペースモバイル)

【ASTS】衛星通信会社 AST SpaceMobile とは?

そして宇宙インターネットでもう一つ注目のプレイヤーが AST Spacemobile (ASTスペースモバイル) という低軌道衛星を活用したモバイル通信を提供しようとしている新興企業です。AST Spacemobile は、楽天モバイルなどとも提携しており、日本でも AST Spacemobile の社名を聞いたことがある人はいるのではないかと思います。

AST Spacemobile が手がける Spacemobile プロジェクトは、同社が構築する低軌道人工衛星が宇宙から送信するモバイルブロードバンドネットワークと、現在市販されているスマートフォンとの直接通信の実現を目指す世界初の取り組みです。

・【関連記事】AST SpaceMobile と Starlink のLEO衛星ブロードバンドサービス比較

AST SpaceMobile と Starlink のサービスの違いは、 AST SpaceMobile が携帯電話に接続するのに対し、Starlink は高出力アンテナに接続します。このように、Starlink を消費者が利用する場合は最初にアンテナを購入する必要があります。

・【関連記事】AST SpaceMobile、衛星 BlueWalker 3 (BW3) の打上げ成功!

5Gの宇宙開発競争

AST SpaceMobile が、2022年9月に打ち上げた試験衛星 BlueWalker 3 は、商用通信衛星のなかで最も大きく、携帯電話と直接5G通信ができるよう設計されています。

5Gは第5世代の携帯電話ネットワーク技術であり、地上通信と衛星通信の次の大きな飛躍となるものです。宇宙分野にとって、これは次世代の通信、ネットワーク、サービスの重要な部分を提供する大きなチャンスです。

この5Gの宇宙開発競争には、AST SpaceMobile の他にも、Lynk Global (リンク・グローバル)、Iridium Commun (イリジウム・コミュニケーションズ)、Globalstar (グローバルスター) などの企業も参入しています。

この分野ではコロナ前より Lynk Global が先駆者であり、衛星から端末への直接接続市場のリーダーとしての存在感を露わにしている。Lynk は今春、商業サービスを展開する予定で、同社のCEO Charles Miller 氏は、「地球上のあらゆる種類の携帯電話に接続することができる」と話している。

・【関連記事】Iridium と Qualcomm、スマートフォンの衛星メッセージングをサポートするために協力

・【関連記事】Apple が Globalstar と提携し、緊急衛星通信サービスを11月より開始

・【関連記事】SpaceX と T-Mobile の計画は衛星通信の新たな章の幕開けを告げる

5Gの宇宙開発競争は、衛星通信史上最大の機会とも注目を集めており、近年では SpaceX + T-Mobile、Apple + Globalstar などの企業がタッグを組んでこの競争に参入しています。

SatixFy (サティクスファイ)

SatixFy、Astrome に自社チップを供給する契約を発表し地上5G市場への参入

他にも2022年にSPAC上場したイスラエルの次世代衛星通信システムのリーダー SatixFy (サティクスファイ) なども5G市場への参入を発表しています。

衛星による地球観測の市場

衛星による地球観測の市場

地球観測衛星の市場は、今後も気候変動という世界的なトレンドを可視化することで成長が期待されるセクターです。観測衛星は、地球全体の変化をとらえるユニークな視点を持っています。環境の監視と保護、資源の管理、世界的な人道的緊急事態への対応、持続可能な開発など、すべて地球観測衛星 (EO衛星) によって実現されています。

地球観測衛星には、ロシアによるウクライナ侵攻で宇宙からロシア軍の動向を捉えたような監視、環境モニタリング (森林保護など)、気象、海運、地図作成など様々な目的で使用されています。

地球観測のプレイヤー

観測衛星の市場には、地球観測市場における世界的なリーダー Maxar Technologies (マクサー・テクノロジーズ)、同社と2022年5月に米国国家偵察局 (NRO) から EOCL 契約を獲得した、リアルタイムの地理空間情報を提供する BlackSky (ブラックスカイ)、地球観測企業 Planet (プラネット) の3社、他にも海上や気象を観測している衛星企業 Spire Global (スパイア・グローバル)、アルゼンチンの観測衛星企業 Satellogic (サテロジック) などの企業が存在しています。

Maxar 以外の観測衛星の企業は、2020年以降のSPACブームで上場した所謂ピュアプレイの宇宙SPAC銘柄として知られています。

Maxar Technologies (マクサー・テクノロジーズ)

【MAXR】地球観測市場における世界的なリーダー Maxar (マキサー) について

地球観測市場では、コロラド州ウェストミンスターに本社を置き、通信、地球観測、レーダー、軌道上サービス衛星の製造、衛星製品、関連サービスを専門とする宇宙技術企業 Maxar Technologies (マクサー・テクノロジーズ) が最も有名です。同社は地球観測市場における世界的なリーダーとして知られており、ロシアによるウクライナ侵攻では、Maxar の観測衛星がロシア軍の動向を随時衛星から捉え、その画像は日々ニュース番組で取り上げらました。

・【関連記事】ウクライナ・ロシア紛争で衛星産業はどのような役割を担っているのか?

この頃、伝えられたブチャの住民虐殺では、Maxar の衛星写真が真実を世の中に伝えました。同社はAIによる地理空間分析サービスの大手プロバイダーである Blackshark.ai (ブラックシャーク) に戦略的投資を行うなど、ゲーム、メタバース、シミュレーション、複合現実感環境などの業界における企業や政府の顧客向けに、高いパフォーマンスと写真に近いリアルな3Dマップを作成する技術にも着手しています。

・【関連記事】MAXAR、Blackshark.ai との提携により3D地理空間機能を拡張

そんな Maxar ですが、2022年12月16日に米投資会社 Advent International (アドベント・インターナショナル) に64億ドルで買収されることになりました。Advent は、35年以上の投資実績を持ち、グローバル・セキュリティおよび防衛分野で豊富な経験を持っています。今回の買収により、Maxar の次世代衛星技術や顧客向けデータインサイトへの投資と開発を加速させるとのことです。Maxar はこの買収のニュースで株価は1日して2倍に跳ね上がりました。

・【関連記事】Maxar Technologies、アドベント・インターナショナルに64億ドルで買収されることが決定

米国国家偵察局 (NRO) の EOCL 契約

米国国家偵察局 (NRO)、BlackSky、Maxar、Planet の3社にEOCL契約を締結を発表!

観測市場の話を少し巻き戻すと、2022年5月25日に、米国国家偵察局 (NRO) が、過去最大の商業画像契約の取り組みの結果を発表し、EOCL (Electro-Optical Commercial Layer) 契約を締結しました。

この契約に選ばれた観測企業が BlackSky (ブラックスカイ)、Maxar (マキサー)、Planet (プラネット) の3社です。この契約は、今後10年間で数十億ドル規模の契約となり、NRO による商業画像の取得を歴史的に拡大し、これまで以上に大きな容量で顧客の需要に対応することを意味します。

BlackSky (ブラックスカイ)

【BKSY】BlackSky (ブラックスカイ) について

米バージニア州ハーンドンに拠点を置く BlackSky は、リアルタイムの地理空間データ、分析、グローバルなモニタリングを提供する監視サービスのリーディングカンパニーです。BlackSky は、世界の新興センサーネットワークを利用し、独自の衛星コンステレーションを活用することで、世界中の活動や施設を監視しています。BlackSky は、自社のコンステレーションに加えて、宇宙、IoT、地上ベースのさまざまなセンサーやデータフィードから、毎日数百万のデータ要素を処理しています。

Planet (プラネット)

【PL】地球観測衛星データの Planet(プラネット・ラボ)について

Planet は、10年以上にわたって世界中の画像を集めた膨大なデータのアーカイブを蓄積する、地球観測のリーディングカンパニーです。Planet は2021年にニューヨーク・タイムズのオピニオン記事「Want to Save the Earth? We Need a Lot More Elon Musks (地球を救いたい?もっとたくさんのイーロン・マスクが必要だ)」で、世界初の核融合発電所の開発に取り組んでいる Helion Energy (ヘリオン・エナジー) と共に、地球を救う革新的な企業として取り上げられています。

Planet のビジョンは、トレンドである気候変動に欠かすことのできない企業であり、ある意味地球を救う企業としての地位が高まれば、非常にポテンシャルを秘めた企業ではないかと感じています。

Spire Global (スパイア・グローバル)

Spire Global、NOAA が気象データを購入している民間企業のうちの1つとして WSJ で取り上げられる

Spire Global は、世界最大級の多目的衛星コンステレーションを利用して、海運や航空機の追跡から気象観測、気象予報、農業、漁業など幅広くデータを提供しています。

Satellogic (サテロジック)

【SATL】アルゼンチンの観測衛星企業 Satellogic、ナスダック市場で取引を開始!

アルゼンチンの地球観測衛星企業 Satellogic は、世界初の垂直統合型地理空間企業であり、惑星規模の洞察力で真の成果をもたらします。Satellogic は、地球全体を高頻度かつ高解像度で再マッピングする能力を持つ、初のスケーラブルで完全に自動化された地球観測プラットフォームを開発し、継続的に強化しています。

Terran Orbital (テラン・オービタル)

【LLAP】米最大の独立系小型衛星メーカー Terran Orbital について

観測衛星、小型衛星メーカー、宇宙船メーカーと二足の草鞋を履く、米最大の独立系小型衛星メーカー Terran Orbital (テラン・オービタル) という企業も上場しています。

宇宙適応型通信ノード (Space-BACN)

宇宙適応型通信ノード (Space-BACN)

DARPA (国防高等研究計画局) が構築を進める宇宙適応型通信ノード (Space-BACN) プログラムは、様々な低地球軌道 (LEO) 衛星を接続するための低コストで高速な再構成可能な光データリンクを開発することにより、宇宙ベースの通信方法を革新することを目的としています。

Mynaric (マイナリック)

【MYNA】ドイツの宇宙レーザー通信製造会社 Mynaric (マイナリック) とは?

この DARPA のプログラム Space-BACN に参加しているのが、ドイツに拠点を置く宇宙レーザー通信製造会社 Mynaric (マイナリック) です。同社は2021年11月にADRとしてナスダックにIPOしました。

Mynaric は、Space-BACN 用のヘッドを設計しており、レーザーの軌道をわずか5720万分の1度だけ調整することができます (1,000kmの距離では、1m以下のビーム変位に相当する)。

・【関連記事】宇宙サイバーセキュリティ・プラットフォームが DARPA プログラムの次世代宇宙通信ハードウェアを保護

また Mynaric は、Redwire と BigBear.ai の SpaceCREST プラットフォームを使用して、光通信端末のサイバーセキュリティ評価を支援する予定です。Mynaric は、DARPA の Space-BACN プログラムの端末設計のセキュリティを確保するために SpaceCREST を活用しています。

このプログラムは、小型、軽量、低電力、安価で、地球低軌道で多くの異なる衛星群を接続できる、再構成可能でマルチプロトコルの通信端末を開発しようとしています。SpaceCREST は、端末に影響を及ぼす可能性のある脆弱性やその運用を中断させる可能性のある脆弱性を特定し、その脆弱性から保護する方法を見出すために使用される予定です。

宇宙産業ではキャッシュフローが強い企業はなかなか見つからない

小型衛星業界は、一般に資金を必要とする新興企業が多く、企業のキャッシュフローがマイナスという企業ばかりである。それは2020年以降にSPAC上場した宇宙関連銘柄の株価を見れば分かる通り、全ての宇宙SPAC関連銘柄がSPAC上場時の10ドルを割り、1ドルを切ってしまった企業も少なくありません。

ロケットの打上げ市場

小型ロケットの打ち上げ企業

ロケット打ち上げ企業の代表格は、TESLA (テスラ) の創業者イーロン・マスク率いる SpaceX の存在です。SpaceX は打ち上げコストを1キロあたり1,000ドル以下にまで引き下げ、この市場に価格破壊をもたらしました。現在、宇宙船の打ち上げ数でもトップの企業です。

続いて、2020年以降にSPAC上場した Rocket Lab、Astra、Virgin Orbit などのような、新興の宇宙企業が続きます。これらの会社は、再利用可能なロケットや3Dプリンターで製造された部品を使用するロケット打ち上げ会社です。

SpaceX (スペースX)

SpaceX

最もロケットを打上げているのが、SpaceX で、ロケットの打ち上げの市場でも同社が抜群の存在感で市場をリードしています。その次に上場企業としては、Rocket Lab がコンスタントにロケットの打上げをしています。

Rocket Lab (ロケットラボ)

Rocket Lab

Rocket Lab の他に上場しているロケット打上げの企業としては Astra、Virgin Orbit などの企業がありますが、ロケット打上げミスにより株価は低迷しています。この2社に関しては、今後も相当厳しい市場競争が強いられる可能性があり、下手すると事業をピボットしないと難しいのかもしれません。

・【関連記事】Rocket Lab 、米国初のエレクトロンミッションの打ち上げに成功

Astra (アストラ)

1ドルを割った ASTRA は上場廃止となるのか?

Astra に関しては、2022年に連続してロケット打上げのミスを起こし、その後の打上げ予定を全て白紙にしてロケットシステムのバージョンアップすることをアナウンスした同社は、株価は1ドルを切り、2020年以降にSPAC上場した宇宙企業としては最もパフォーマンスの悪い銘柄となってしまいました。

Astra は現在、生き残りをかけて宇宙船エンジンの販売に力を入れているようです。

・【関連記事】Astra、宇宙船用エンジン200基超の受注確定を発表

ロケット打上げのキープレーヤー

現在ロケット打上げ企業のキープレーヤーとしては、以下の5社が市場を握っています。

・SpaceX (米国)
・Arianespace (フランス)
・Northrop Grumman (米国)
・United Launch Alliance (米国)
・Rocket Lab (米国)
・China Aerospace Studies Institute (中国)

この中で米国市場に上場しており、ロケット打上げがメインだった企業が Rocket Lab (ロケットラボ / RKLB) です。現在同社はロケット打上げ以外にも宇宙船の製造、宇宙ソリューション/ソフトウェアの開発、国家安全保障の分野にも進出しています。

Relativity Space (レラティヴィティ・スペース)

Relativity Space

未上場の企業で注目を集めているのが、3Dプリンターで作られたロケットを手掛ける、小型衛星の開発・打ち上げを専門とする宇宙技術企業 Relativity Space (レラティヴィティ・スペース) です。航空宇宙エンジニアのグループによって2015年に設立され、カリフォルニア州ロサンゼルスに本社を構えています。

・【関連記事】Relativity Space と OneWeb、「Terran R」のマルチローンチ契約を締結

Relativity Space の重要なイノベーションの1つは、3Dプリントを使用してロケットを製造していることです。この技術により、より迅速で費用対効果の高い製造工程と、より高い設計の柔軟性が実現されています。同社の主力ロケットである「テラン1」は、エンジンとアビオニクスを除き、すべて3Dプリンターで製造されています。

世界初の3Dプリンタ・ロケットの打上げ

Relativity Space、世界初となる完全3Dプリンター・ロケット「Terran 1」の初号機打ち上げ

Relativity Space は、2023年3月にケープカナベラルから “Good Luck, Have Fun” と名付けたミッションで「Terran 1」ロケットの初号機を打ち上げることを目標としています。これが実現すれば、世界初の3Dプリンタ・ロケットの打ち上げになります。

Relativity の共同創業者で最高経営責任者の Tim Ellis 氏は、今回の打上げについて以下のように思いを話しています。

今、私たちは世界初の3Dプリントロケットでほぼ発射台の上にいます。しかし、この歴史的な打ち上げに乗り出すにあたり、私や私たちのチームからすべての気持ちを伝えます。

価格競争

SPACENEWS の記事では、小型ロケットを提供する企業は、SpaceX のライドシェアミッションによる価格圧力で、打ち上げで利益を得ることが難しくなっていると言います。この記事では、

複数の打ち上げ会社の幹部は、打ち上げサービスに対する需要は強いものの、特に SpaceX との競争によって価格が低下し、採算面で苦戦していることを明らかにしています。

Arianespace の上級副社長で Vega 事業部の責任者である Marino Fragnito 氏は、自分の会社や他の会社が小型衛星を打ち上げてお金を稼ぐことは現在困難であると述べています。

私は宇宙事業に携わって30年近くになりますが、これほど多くのの打上げ需要を見たことがありません。50キログラム、100キログラム、この種の衛星のサイズについて話すと、これはトランスポーターミッションのサイズです (SpaceX のファルコン9専用ライドシェアの打ち上げシリーズに言及している) 参考価格は、トランスポーター価格です。その価格では、誰も儲からないでしょう。

このように小型ロケットの打上げビジネスに関しては、この分野を主導する SpaceX の影響力が大きく価格競争が起きています。この分野には、かつて小型ロケットの打上げ企業として期待されていた Astra (アストラ) は、連続したロケット打上げの失敗から、既にこの分野を市場を失ってしまった可能性もあります。Astra は現在宇宙エンジンの販売に力を入れていますが、ビジネスのピボットが必要になる可能性もあります。

民間宇宙旅行

民間有人宇宙飛行

宇宙旅行を実現させようとする企業には、SpaceX (スペースX)、Blue Origin (ブルーオリジン)、Virgin Galactic (ヴァージン・ギャラクティック) などの企業が有名です。

この3社は、コロナ禍の2021年に相次いで有人宇宙飛行に乗り出しており、その模様はライブで配信され、3社とも有人宇宙飛行に成功しています。

Virgin Galactic (ヴァージン・ギャラクティック)

Virgin Galactic

イギリスの起業家リチャード・ブランソン率いる Virgin Galactic (ヴァージン・ギャラクティック) が、2019年にSPAC上場しました。同社の上場は、宇宙ビジネス (宇宙旅行) に特化した第一号企業として市場に迎えられました。

Virgin Galactic は、2021年7月に初の有人宇宙飛行「Unity 22」の試験飛行に成功し、2名のパイロットとリチャード・ブランソン卿を含む4名のミッションスペシャリストが搭乗しました。

Blue Origin (ブルーオリジン)

Blue Origin

Amazon のジェフ・ベゾス率いる Blue Origin は、2021年7月に宇宙船 New Shepard の打上げを行い、ジェフ・ベゾスと弟のマーク・ベゾス、他計4名が乗船した同社初の有人宇宙飛行は成功に幕を閉じました。

SpaceX (スペースX)

イーロン・マスク率いる SpaceX が、2021年9月に打ち上げた宇宙船クルードラゴンには、民間人のみ4人が乗船したミッション「Inspiration 4」の打ち上げに成功した。宇宙飛行士を含まない初の宇宙滞在飛行となった今回のミッションは、3日間地球を周回しました。

日本では …

日本で宇宙旅行のトピックに関しては、ZOZO創業者で実業家の前沢友作氏が有名で、世界的にも宇宙旅行はまだまだ金持ちだけができる道楽というか何というか … あんまり面白味に欠けるような感じはしますが、着々と宇宙に行く民家人は増えています。

宇宙インフラサービス

宇宙インフラサービス

宇宙インフラサービス市場は、人工衛星、ロケット、打ち上げサービス、地上局、コンステレーション、宇宙ステーション、宇宙観測機器など、宇宙に関連する技術や設備を開発、製造、販売、運用する市場を指します。宇宙インフラ市場は、地球外への探査や観測、通信、気象予報、防災など、様々な用途で利用されています。

近年、宇宙インフラ市場は急速に成長しており、民間企業が参入することで市場が拡大しています。特に、宇宙観測データの需要が増えていることや、民間企業が打ち上げサービスや人工衛星の開発・運用に注力していることが背景にあります。

この市場には、軌道移動体専門の Momentus (モメンタス)、宇宙インフラ統合会社の Redwire (レッドワイヤー) などのプレイヤーが上場しています。

Momentus (モメンタス)

Momentus

Momentus は、革新的な水ベースのマイクロ波電気熱 (MET) 推進システムを使用して、衛星やホストされたペイロードを宇宙の軌道間で運ぶ転送・サービス車両を製造することにより、宇宙インフラサービスを提供することを計画しています。

Momentus のCEOであるジョン・ラッド氏は、宇宙ビジネスの民主化が起きることで、輸送と宇宙インフラサービスも成長することを述べています。

小型衛星の性能が向上し、打ち上げコストが低下したことで、宇宙への障壁が低くなっています。輸送と宇宙インフラサービスが成長する宇宙経済に不可欠であることを強調できることをうれしく思っています。

Redwire (レッドワイヤ)

【RDW】宇宙インフラのリーダー企業 Redwire (レッドワイヤー) について

Redwire は、宇宙インフラストラクチャのグローバルリーダーであり、最も複雑な宇宙ミッションを可能にする基礎的なビルディングブロックを提供しています。同社の会長兼CEOピーター・カニート氏は、自分たちのような企業を宇宙ビジネス市場における「ピックとシャベル」であると例え、次のように述べています。

私たちのミッションは、地上のインフラストラクチャーの発展にも例えることができます。地上インフラは、道路や橋、貨物鉄道、港湾、電力網、インターネットサービスなどの広大なネットワークに依存する世界経済の原動力であり、現代社会のエンジンの原動力となっています。

同様に、宇宙インフラも、通信、航法、計時、気候監視、天気予報、地球観測、国家安全保障、さらには惑星防衛などの分野で、地上経済にとって同様に重要な役割を担っています。Redwire は、これらの分野すべてに対して完全なミッション・ソリューションを提供しているわけではありませんが、当社のお客様は提供しています。

20世紀に電気網、鉄道、通信などの地上インフラの開発を主導した GE、Honeywell などの企業と同様に、Redwire は21世紀の宇宙ベースのインフラの新たな拡張に取り組んでいます。

宇宙探査/惑星探査

宇宙探査/惑星探査

人類が月に足跡を残して以来、半世紀近くが経ちましたが、宇宙探査/惑星探査の分野は宇宙最後のフロンティアとも言われています。

Intuitive Machines (インテュイティブ・マシーンズ)

【LUNR】宇宙探査のリーディングカンパニー Intuitive Machines がナスダックに上場

宇宙探査の分野では、2023年2月に宇宙探査のリーディングカンパニー、テキサス州ヒューストンに本社を置く Intuitive Machines (インテュイティブ・マシーンズ) がナスダックにSPAC上場しました。

・【関連記事】宇宙探査大手企業 Intuitive Machines がナスダックにて「LUNR」で取引が開始

Intuitive Machines は、宇宙探査、インフラストラクチャー、サービスを提供する多角的企業で、宇宙探査とNASAの930億ドルの Artemis プログラムを支援する主要な契約を結んでいます。更に、米航空宇宙局などによる月探査を支援するために、小型宇宙船やロボットなどのデータや技術を提供しています。

・【関連記事】宇宙探査のリーディング・カンパニー Intuitive Machines を解説

同社の経営陣は、月着陸船、宇宙ドローン、宇宙サービスには、2030年まで1200億ドルの市場があると見ていると言います。Intuitive Machines は、現在まだ月には到達していませんが、NASAとの契約をいくつか獲得しています。

宇宙SPAC銘柄の株価

宇宙関連銘柄は業績が芳しくなく、SPAC上場後の価格から80%以上も下落している銘柄が多いと言われていますが、これは宇宙SPAC銘柄に限ったことではなく、全てのSPAC銘柄に言える話です。

なぜこれらの銘柄がこんなにも売られたか?と言えば、まずは2022年以降のFRBによるハイペースでの利上げにより、これらのバリエーションの高いグロース株が叩き売られました。

例えば Intuitive Machines は、2023年2月に上場されたため、利上げの最終局面での上場となった訳で、Intuitive Machines と他の宇宙SPAC銘柄を比較するのは間違いというか、タイミングの問題ではないかと思います。

しかし Intuitive Machines がこのまま上場後の価格を維持できるか?というと、株価は半分とかそれ以下になるリスクの方が大きいのではないか?と考えています。というのも SPAC 株には、IPO 株のようにロックアップ期間のようなものが存在し、一定期間が過ぎると、PIPE (パイプ) 株の売りが入ります。すると株価は1日で半分になったり、それを皮切りに株価は 10/1 ぐらいになる傾向が多いからです。

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2023年に話を戻すと、FRBの利上げにより景気が後退した場合、宇宙SPAC企業の間でも生き残りをかけて明暗が別れるのではないか?と思います。利上げが最終局面であれば、ここからは業績のみが株価を駆動するエンジンとなるのではないでしょうか。

国家安全保障

国家安全保障

2023年現在、宇宙ビジネスで最も注目されている分野が国家安全保障ではないでしょうか?ロシアによるウクライナ侵攻、その後の中国による偵察バルーンの登場で、宇宙ビジネスのセクターでも益々、国家安全保障が意識されるようになったと思います。この国家安全保障という分野にも、新興の宇宙企業が名乗りを上げています。

宇宙産業が国家安全保障に与える影響としては、情報収集・監視、通信、GPSなど多岐に渡ります。

・情報収集・監視
人工衛星を使用して、情報収集や監視を行うことができます。国家は、軍事情報や天然資源、環境変化などの情報を収集するために、人工衛星を打ち上げています。

・通信
通信衛星を使用して、国内外の通信インフラを支えています。通信衛星は、重要なインフラであるため、運用中の通信衛星の保守・管理や、新しい通信衛星の開発・運用が国家の安全保障に直接関わります。

・GPS
GPS (Global Positioning System) などの人工衛星を使用して、位置情報や時刻を取得することができます。国家は、軍事用途や災害対策などでGPSを使用しており、ポジショニング・タイミング・ナビゲーションを支えることが重要な国家安全保障上の役割を担っています。

上記のように、宇宙産業は、国家安全保障に重要な役割を担っています。国家は、宇宙開発競争に参加し、人工衛星や宇宙船、宇宙ステーションの開発や、宇宙に関連する技術や設備の保有に力を入れることで、自国の安全保障を確保するための努力を行っています。

ロシアによるウクライナ侵攻を皮切りに、国家安全保障が見直された始めたことは一つのターニングポイントだと思います。これまで消費者や民間企業に向けてサービスを展開していた宇宙企業が、国家に向けてサービスを展開する動きも増えてきました。

SpaceX の Starshield

SpaceX、国家安全保障を支える Starshield で地球観測市場に参入

このセクターでも登場するのが SpaceX です。SpaceX は、2022年12月に国家安全保障を支える取組みとして「Starshield (スターシールド)」というサービスを開始しました。Starlink は消費者および商用利用向けに設計されていますが、Starshield は政府機関向けに設計されています。

Rocket Lab の国家安全保障に特化した子会社 Rocket Lab National Security

Rocket Lab、国家安全保障に特化した子会社を設立

SpaceX のライバル企業、Rocket Lab も同年同月に国家安全保障に特化した子会社 Rocket Lab National Security (ロケット・ラボ・ナショナル・セキュリティ) の設立をアナウンスしています。Rocket Lab は、迅速かつ信頼性の高い打上げサービス、宇宙船製造、宇宙システム能力で、米国とその同盟国に貢献することを述べています。

大手、航空宇宙防衛企業

米国の大手航空宇宙防衛企業では、以下のような企業が有名です。

・Lockheed Martin (ロッキード・マーティン)
アメリカ合衆国の防衛産業最大手であり、軍事用の宇宙機器の開発・製造を行っています。ミサイル防衛システム、偵察衛星、GPS衛星、通信衛星などを開発しています。

・Northrop Grumman (ノースロップ・グラマン)
アメリカ合衆国の宇宙産業企業で、衛星・ロケットの開発・製造を行っています。人工衛星やミサイル防衛システム、偵察衛星、通信衛星、GPS衛星などを開発しています。

・Boeing (ボーイング)
アメリカ合衆国の航空宇宙産業企業で、軍事用の宇宙機器の開発・製造を行っています。人工衛星やGPS衛星、軍用の宇宙船などを開発しています。

民主主義 (欧米) vs 独裁主義 (中国、ロシア) の時代

ロシアによるウクライナ戦争は、民主主義 (欧米) vs 独裁主義 (中国、ロシア) の代理戦争とも言われており、その後の中国による偵察バルーンの登場で、米国と中国の仲はギクシャクし始めています。このような流れを受けて、米宇宙軍の宇宙予算は2024年にさらに増加する可能性が高いことが報じられています。

またまた、宇宙空軍の予算が大幅に増加しました。これらの増加は、宇宙技術が今後も中国とロシアの地政学的緊張の直接的な受益者であり続けることを証明するものである。

2021: 177億ドル
2022: 218億ドル
2023年: 263億ドル (?)
2024年: 290億ドル〜320億ドル

2023年2月16日に公開された、『宇宙システム司令部(SSC)、国家安全保障宇宙打上げフェーズ3の提案依頼書ドラフト』を見た Eric Berger 氏は、次のように意見を述べています。

米軍がロケットを購入する方法に大きな変化が訪れようとしています。DOD (アメリカ合衆国国防総省) はまだその2つの大きな請負業者 (SpaceX と ULA、ほとんどの場合) がすべての軌道を打つことを要求しますが、よりリスク許容度の高いミッションのための別の調達レーンが開かれます。Blue Origin、Rocket Lab、その他にとって大きな勝利です。

SNSで買い煽り

Redwire の株価が異常な出来高で急騰!何が起こったのか?

市場が楽観視しているタイミングで度々起こっているのが、SNSやネットの掲示板 Reddit、コミュニケーションツール Discord などで特定の銘柄を買い煽るような現象です。宇宙SPAC銘柄も過去に何度も買い煽りの標的となっており、2023年2月の中国による偵察バルーンの事件でも、何者かが TikTok に宇宙インフラ企業 Redwire (レッドワイヤー) を買うように煽る動画を流し、Redwire の株が異常な出来高で急騰するような現象が起きました。

懸念材料

宇宙関連企業のビジネスが全て上手くいくとは限りません。もしマクロ経済が悪化し、世界的な大不況が長引くようなことがあれば、SpaceX や Blue Origin のような大手企業の支援を受けられれば良いですが、それ以外の新興宇宙ベンチャーは、はるかに小規模であり、不況が続けば資金調節が難しく、需要も減少、競争が激化などが起こる自然淘汰が進むことになるかもしれません。

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まとめ

宇宙ビジネスのセクター別で宇宙関連企業を見渡してみると、SpaceX の圧倒的な存在感が目を引きます。記事の冒頭でも触れましたが、この NewSpace の新しいシーンを形成した SpaceX が今でも先頭を走り、それもぶっちぎりで他を寄せ付けないのを拝見すると、未来は SpaceX にかかっているのかもしれません。

2020年のSPACブーム以降、多くのピュアプレイの宇宙企業が上場した訳ですが、当時最も期待されていた Astra が連続した打上げミスで最も株価が低迷するとは、当時誰が予想できたでしょうか。

SPACブームの当時は小型ロケットの打上げ企業が注目されていましたが、今では既に価格競争が起きており、このセクターも SpaceX の一人勝ちというような状況のようです。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の制裁で、ロシアのソユーズが使えなくなったことから、その需要が他のロケット打上げ企業にも波及しているようです。

歴史は繰り返すごとく、世界は今、民主主義 vs 独裁主義の2つのブロックに大きく分かれています。この流れでホットスポットとなるのが「国家安全保障」ではないか?と思います。

SpaceX や Rocket Lab が2022年の12月に相次いで国家安全保障に向けたサービスや取り組みを始めたのは偶然ではないはずです。宇宙ビジネスの市場も、世界の動向に合わせてめまぐるしく変化しています。宇宙関連企業にも言えることは、その時代のトレンドや流れに合わせて変化し続けることができる企業だと思います。

SpaceX はブレイクスルーを続けていますし、Rocket Lab という企業はロケット打上げ以外にも買収により宇宙ソフトウェアを手掛けたり、次世代の宇宙船の開発、国家安全保障の分野にも進出しようとしています。このように進化し続けられる企業が宇宙セクターにおいても次の時代をリードしていくのかもしれません。こちらのサイト Zoomy では、引き続き宇宙ビジネスのトレンドを随時追っていきます。

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