2025年4月13日に公開された、ファイナンシャル・タイムズの記事『「ニクソン・ショック」はトランプ・ショックを理解するのに役立つかもしれない』が話題を集めています。
The ‘Nixon shock’ might help us make sense of the Trump one https://t.co/LsRHFWP4Lh | opinion
— Financial Times (@FT) April 13, 2025
この記事では、当時の「ニクソン・ショック」と今回のトランプ関税の類似点を検証し、歴史は繰り返さないが韻を踏む場合、トランプ関税がどのような帰結に着地するかを推測しています。
歴史的背景と政策の類似点
1971年のニクソン・ショックでは、米国が金本位制から離脱し、輸入品に10%の課徴金を課すことでドル安を誘導し、貿易赤字の是正を図りました。
同様に、2025年のトランプ政権は、輸入品に対して一律10%の関税と、国別に最大145%の相互関税を導入し、貿易赤字の削減と国内産業の保護を目指しています。
歴史は繰り返さないが韻を踏む
記事では、「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という視点から、ニクソン・ショックとトランプ関税政策の共通点を挙げ、過去の政策が現在の状況にどのような示唆を与えるかを考察しています。
具体的には、短期的な景気刺激策が長期的な経済の不安定化を招く可能性や、国際的な信頼の低下が通貨や貿易に与える影響などが取り上げられています。
The “Nixon shock” might help explain the “Trump shock,” writes @huwsteenis in @FT.
In 1971, Nixon ditched the gold standard, slapped on 10% tariffs & froze prices. The result? Chaos: stagflation, shortages & runaway inflation.
History doesn’t repeat—but it sure rhymes.
🔗… pic.twitter.com/LPR8wS3jNy— Holger Zschaepitz (@Schuldensuehner) April 13, 2025
このインフレーションの長期チャート(1950年〜2025年)は、1970年代のスタグフレーション期と2020年代のポストコロナ経済を対比するうえで極めて示唆的です。
上記の Bloomberg チャートが示すように、1970年代の「白くハイライトされた部分」は、インフレが段階的に波状上昇して制御不能に至った典型です。
特に注目すべきは、1975年頃にインフレが一旦沈静化した後、再び1979〜1980年に二度目の波が来ている点(→ 「二段構えのインフレ」)。
2020年代のインフレも、コロナ後の波(2021-2022)→ 一旦鎮静(2023-2024)→ 第二波リスク(2025以降)という構図になりつつあるように見えます。
経済と政治の類似点:トランプ vs. ニクソン
すると X 上でも海外の投資家が、ニクソン大統領時代のS&P 500(1966年~1974年、黒線)と、現代のトランプ2.0シナリオ(青線、同様のタイムラインに沿って調整)との比較検証が開始されています。
The parallels b/w Trump & Nixon are striking – Nixon introduced Tariffs at 10%. Both Presidents:
* Were Republican Presidents riding a populist “red-wave” with blue collar voter support
* Tariffs Introduced at 10% by Nixon and 10-110% by Trump
* Huge political comeback… pic.twitter.com/nlRmQqSCfO— Douglas Orr, CFA (@EquitOrr) April 14, 2025
要因 | ニクソン | トランプ |
---|---|---|
大統領としてのスタイル | ポピュリスト、反エリート | ポピュリスト、反エリート |
有権者層 | ブルーカラーの支持 | ブルーカラーの支持 |
関税 | 10%の関税を導入(1971年ニクソン・ショック) | 10%から110%の関税を導入 |
政策目標 | 米国の製造業を守る | 米国の製造業を守る |
地政学的戦略 | 中国とロシアの間に楔を打ち込む | 同じ目標を掲げる |
戦争への姿勢 | ベトナム戦争の終結を約束 | 外国での紛争(アフガニスタンなど)の終結を約束 |
市場の反応 | 選挙後 短期的な上昇相場、その後暴落(1973年~1974年の弱気相場) | 予測には同様のリスクが暗示されている |
主なリスクのハイライト
「トランプ氏はインフレと財政赤字を回避するために緊縮財政を行う」という予測は、ニクソンの「インフレを回避するための金融引き締め」を反映している。
いずれの場合も、市場のラリーは引き締め策に続いて起こり、経済の崩壊につながる可能性がある。選挙前のFRBによる利下げ(一般的な政治的な追い風)は、人為的な市場支援を追加する可能性があり、その後急激に巻き戻される可能性がある。
ニクソン時代の歴史的影響
ニクソンの任期はスタグフレーション(成長の停滞+インフレ)と深刻な市場の下落で終わった。このチャートは、初期の利益がインフレと地政学的な圧力に取って代わられるという、同様の好況と不況の繰り返しの可能性を示唆しています。
1970年代の教訓として、供給制約に関税や価格統制を加えると、問題が複雑化することが歴史が証明しています。トランプ2.0政権が登場し、大規模な関税+財政引き締め(減税なし)+ドル安誘導が組み合わされると、第二のインフレ波→景気後退のリスクは現実味を帯びてきます。
まとめ
ニクソン大統領時代、1973年〜1974年の市場暴落(俗に「1973-74年のベアマーケット」)は、複合的なマクロ経済要因・政策のミス・地政学的ショックが絡み合って引き起こされたもので、現代のトランプ2.0的な政策(特に財政引き締めや関税)とも驚くほど似たパターンを持っています。
トランプ大統領の2期目は、当初は市場を押し上げる可能性があるが、インフレや貿易摩擦などの根本的な構造問題により、1972年以降のニクソン政権時代と同様に、最終的には市場が低迷する可能性があることを示唆しています。
トランプ政権の関税政策が続く場合、長期的にはインフレの加速や国際的な報復関税による貿易の停滞が懸念されます。また、ドルの信認低下や国際的な通貨体制の変化など、1971年のニクソン・ショックと同様の構造的な変化が起こる可能性もあります。