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海外投資家に見えていて、日本人投資家に見えていない日本市場の側面

海外投資家に見えていて、日本人投資家に見えていない日本市場の側面

昨年 (2023年) 11月、『The Price of Time: The Real Story of Interest』の著者で金融学者のエドワード・チャンセラー氏は、日本株に強気だと、ブルームバーグUKのマリン・サンセット・ウェブが司会を務めるポッドキャスト「Merryn Talks Money」で答えていました。

エドワード・チャンセラーは日本株に強気

ポッドキャストのアフタートークの終盤、分散されたポートフォリオを持つ必要がある、という話で、エドワード・チャンセラー氏は次のように話ていました。

投資戦略、そしてこのようなことで、苛立たしいのは、これが実際にあなたのお金にとってどのような意味を持つのか、ということになったとき、それが本当に意味するのは、分散されたポートフォリオを持つ必要がある理由だ、ということだけだ。

しかし、政治的リスクも考慮する必要があります。つまり、分散投資といっても、債券と株式が60対40ということではなく、債券、株式、若干の金、そしておそらく現金がコア・アロケーションであると考えられるということです。

そして司会者とのトークの中で、エドワードも日本の強気なんだという話になります。

日本にとって逆風となったのは、高いバリュエーションと、デフレとデレバレッジが日本の利益率と株主資本利益率に打撃を与えたことだと思います。それは10年以上前のことで、10~12年前に私たちが強気だった理由はそれだったのですが、それが十二分に証明されました。これらはあなたや私が何十年も言い続けてきたことだ。

私はこの当時、この話を聞いても日本株にピンとこず、私のメンターもAIブームによって米国一人勝ちになる可能性があり、米株をロングという話に耳を傾けていました。

年が明けて怒涛の日本株買い

新年早々、1月1日から能登半島地震が起こり、日本株の年始取引はマイナスで始まったものの、その後どんどんと値を戻し、数日経つと日本株に怒涛の海外投資からの買いが入ります。

日本のメディア (TVニュース) は、この日本株の上昇を新NISAの影響と適当なことを報道していましたが、正しくは日本株を買っているのは海外投資家だと思います。私の周りの米国の投資家も日本株の指数に目をつけており、先物をロングしている海外投資家のインフルエンサーを何人か見ました。

日本と中国はコインの表と裏

ブルームバーグは、「中国人は日本株に殺到している」というようなニュースを伝えていますが、確かに、日本と中国はコインと表と裏のような関係です。日本の失われた30年だかで、中国は素晴らしい経済発展を遂げました、しかし今度は中国経済は後退しており風の流れが変わると、地政学リスクなど、様々な観点から選手こ交代で再びライズ・イン・ジャパン!という訳です。

この日本と中国がコインの表と裏という関係については、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) 名誉教授チャールズ・グッドハートとマノジ・プラダンによる著作『人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小 (The Great Demographic Reversal: Ageing Societies, Waning Inequality, and an Inflation Revival)』で詳しく述べていますので、しっかり抑えておいた方が良いでしょう。

【選書】人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小

そもそも日本人投資家は、エミンさんが仰る通り米国株を買っており (私も)、新NISAだって一括でオルカンやS&P500を買っていると思います。如何にTVメディアが適当なのかが分かります。

日経平均上昇の背景

今回の怒涛の日本株買いで面白い現象としては、この日本株の上昇に多くの日本人投資家が乗れていないことです。私は個別で日本株も一部トレードしており、ポジションを持っていますが、メインは米国株です。

所謂、米国株村の人間ですので、バイアスがあるかもしれませんが、私の周りの日本人トレーダーで日本株を買っているのは、日本のバフェットと言われる小塚さんなど、小塚さん周辺の方などで、米国株村の人間で日本株、日本の指数を買っている人は正直見たことがないのです。

米国で、くら寿司ブーム

もう一つ面白い現象で、日本ではそんなに人気のない?くら寿司 (KRUS) が、米国では大人気で株価も急騰していると言います。「くら寿司USA、ニッチ市場とらえ米国人を魅了-株価6倍は実力か

数年前、金融相場で相場が阿波踊りをしている時に、米国市場でくら寿司が話題になって株価が上昇しているのは知っていましたが、未だにくら寿司の株に海外の投資家が群がっているのは知りませんでした。

現在私はバイオテクノロジー株をメインにトレードしている関係で、海外のバイオテクノロジーに詳しい投資家の動きを観察しているのですが、その中にもくら寿司を買っている海外の投資家がいるのです。

このように、海外投資家に見えていて、日本投資家に見えていないような、日本資産の魅力というものが、海外のレンズを通すとあるのだと思います。

日本人は、日本経済が嫌い

この大きな一連の流れを見ると、日本人投資家に見えていない日本市場の側面があるのではないか?と思い、考えていると、日本の優れたバリュいー投資家の小塚さんが、今回の一連の流れを次のように観察されていました。

日本株を買おう!というブームは日本ではまだ来ていないな (‘ω’)
逆張り個人、所謂ミセスワタナベ気質が多い日本の個人投資家は、今回もまたほとんど乗り遅れただろうと思うし、長めに見て恐らくは最後まで火が付かないと予想するな。

以下は口が悪いのですが、でも常々見ていて思うことだから言っておこうと思うんですが、バイアスというものが日本の個人にはかかっています。それは彼らは日本の経済(指数)が好きでないけれど、でも日本の株が上がると激しく心が騒ぎ、空売りしたい衝動や投機に走る衝動に駆られる。

日本株に賭けたくない心理と、賭けて儲けたい心理が複雑に絡んでいる。欧米へのコンプレックスと海外に経済の総体として生まれてこの方大半負け続けた自国への信頼感の無さが合い混ざった独特の心理が、ミセスワタナベを形成しているのだと思うのだけれども。

非米国で恐らく最も世界から注目される、自国の指数を “ロング” 出来ない、国が散々誘導しても、本当の意味で長期保有出来てこなかったというのは皮肉で、日本国民が利益を得ていないというのは残念な心理構造だと思うな。

そうは言っても人口減で、インフレで、賃金の増えなさで、イノベーションの無さで、或いはこれまでダメだったから、日本経済はダメだろう… こういう心理が日本人を包んでいるんですね (‘ω’) だから米指数ばかり買うし、日本株を買う場合は多く投機ばかりチャレンジすることになる。

例えば、ただ日経平均単騎だけを保有して長期投資に臨む投資家がどれだけ少ないかというのを見ると(実際周りに居られますか?)、われわれ日本人は、日本経済が嫌いなのではないかと思います。

でも数年前から言っていたように、そして今も長期的な視点で見て言いますが、今後の時代は日本株の黄金時代がやってくると思うのですけれどね。

非常に優れた洞察だと思うのですが、正に日本は、少子高齢化、人口減、インフレでも賃金が増えない、イノベーションが無い、ほぼダメダメな日本経済はどうせダメだろう … という大きな負のバイアスが付き纏い、日本人は日本指数 (日経平均、TOPIX) をロングできないのではないか?と。過去、失われた30年と言われる呪縛から解放されない、解せないでいるのではないでしょうか。

正に私もこのバイアスと呪縛に囚われている一人です。私が株式投資を学んだメンターは、日本経済も日本社会もボロクソにこきおろしており (愛のある)、その影響、バイアスというのもかなり大きいのではないかと思っています。

私のような米国株投資家は、日本経済はオワコンと刷り込まれており、去年だか?一昨年だかに投資信託で積立ていた日本指数を売却しています。去年あたりから、この行為は間違いであったと認識するようになりました。

とにかく、バブル研究の神様、日本でも人気の著書『バブルの歴史 ──最後に来た者は悪魔の餌食』で知られるエドワード・チャンセラー氏が日本に強気という意見に素直に耳を貸しておけば良かったです。

曇りなき眼で、日本市場を見つめ直す

今、日本人投資家に求められるのは、

曇りなき眼 (まなこ) で日本市場を見つめ直す!

必要があるのかもしれません。ここから10年くらいで、日経平均10万円説というのは、あり得るのだろうか …