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IPO、SPAC 銘柄は長期投資には向かない?

今回は “長期” という視点で、IPO株、SPAC株への投資を考えてみたいと思います。筆者は、2020年のIPOブーム、SPACブームを経験し、自身でも未だに宇宙SPAC株、一部のSPAC株をロングしており、長期投資のつもりが凍死家となってしまっています。

自身のこのような経験からも、早速答えですが、IPO銘柄、SPAC銘柄は99%くらいの確率で長期投資には向きません。では、残りの1%は何なのか?と言うと、宝クジと似たような確率でIPO株の中には、いつか Amazon のような企業になる銘柄も存在しているということです。

しかし、IPO銘柄の中から次の Amazon のような成長する株を見つけるロングするのは、宝クジを当てるかのような確率であり、ほぼ99%が無理ゲーということになります。

しかし、IPO銘柄、SPAC銘柄でボロ儲けした!という投資家もいます。彼らはどのようにボロ儲けしたのでしょうか?そして、著者である長期投資家が、なぜ凍死家になってしまったのか?について詳しくご説明します。今後IPO株やSPAC株をトレードしてみたい投資家の方は是非参考にして下さい。

IPO投資のストラテジー

IPO 株に投資する際、初心者の投資家ほど、その銘柄に惚れ込んでしまったり、銘柄のストーリーや投資銀行が書いたシナリオに惑わされがちです。IPO 株、特に IPO されたばかりのハイパーグロース株に投資する際は、まず基本として「低金利」環境であること、そして相場のサイクルが「金融相場」であることが前提条件となります。

金利がひしひしと上がっている局面、高金利の局面でIPOを株をトレードしても良いことはないでしょう。次の Amazon に化けるような銘柄を探し、IPO 時に飛びついて、ここから長期投資だ!というような戦略は十中八九成功しません。自分の経験則からも、IPO 銘柄をずっとロングし続けることは結構辛く心労です。

参考に、日本でも話題となった2020年にIPOされた銘柄、ZI と RPRX のチャートを見てみましょう。良い時には株価は2倍になりましたが、結局IPO後からずっとロングしていた場合、株価はマイナスに、2、3年ロングしていてもマイナス成長というように、IPO銘柄をずっと持っていても良いことはないのです。

IPO投資の基本戦略

IPO投資の基本戦略としては、低金利で相場のサイクルが金融相場のタイミングが最も都合が良いです。この時期になると、IPOのディールも数多くありますので、IPOの主幹事がゴールドマンサックスやモルガンスタンレーが手掛ける銘柄に狙いを定めましょう。

IPOされる当日、あるいはその数日間に一回転取りにいくことが基本戦略となります。IPO 当日に、値決めされた価格が寄りついたら、少しだけ観察し「えいやっ」と飛びついたら、後は数時間、数日間で急騰したタイミングで利確するようなイメージのトレードとなります。

無難に買うなら、IPO後初の決算を確認してから

IPO株を買う際に、最も無難なトレード戦略は、IPO初の決算を見てから買いに入るという手法です。その後も四半期の決算を確認し、決算が良ければホールドを続けます。決算ミスや、その銘柄に成長に陰りが見えたら利確するようなトレードです。

ちなみに上記2つの戦略は、低金利の金融相場に限ります。金利が高い局面では、IPOのディール事態がなくなりますが、たまに地合いが悪い時期に IPO される銘柄もあります。

IPO株をトレードする際の注意点

IPO株をトレードする際は、「ロックアップ期間」、「公募増資」について理解しておく必要があります。

・ロックアップ期間とは?

ロックアップ期間とは、企業がIPO上場した後、大株主が株式を売却することを禁止する期間のことです。IPO銘柄は、通常上場されてから90日〜180日のロックアップ期間が設けられています。

この期間、会社のインサイダーや初期投資家は株式を売却することができません。しかし、ロックアップ期間が過ぎると株価は1〜3%程度、銘柄や地合いによってはもっと、恒常的に下落することが実証されています。人気銘柄の場合は、一時的な押し目になったりならなかったりします。

ロックアップ期間の解除については、事前に調べたりすることができますので、IPO後の銘柄をロングしている投資家は事前にチェックしておくようにしましょう。

・公募増資 (パブリック・オファリング) とは?

そして予期せぬタイミングで発表されるのが「公募増資 (パブリック・オファリング)」です。こいつは結構厄介です、私も何度も公募増資にやられました。IPOされて間もない会社は、急なタイミングで「公募増資」をアナウンスしてきます。

公募増資が発表されると、多くのケースで公募価格が設定されます。例えば前日まで30ドルで取引を終えていたのに、公募増資が発表され、公募価格が28.5ドルということもあります。この場合ほぼ100%一旦売られます。

公募が発表された銘柄が人気銘柄であれば押し目となる可能性もありますが、地合いが悪ければ、この公募増資を機に一旦売られるということもありますので注意が必要です。

公募が発表されたら、まずはその公募価格を割らずに取引を終えるか?を観察しましょう、公募価格よりも上で取引されるのであれば、乗って行っても安全かもしれません。

また公募増資を発表しといて、2、3日公募価格が発表されないで、その間に売られ続けるというケースもあります。公募増資は事前に確認することが出来ず、急にアナウンスされるので注意しましょう。

2020年〜2021年のIPOブームを振り返る

2020年、2021年の IPO ブームでは、本当に数多くの銘柄が上場しました。話題を集めた ZI、RPRX、UPST、ABNB、AI、COIN … など銘柄をあげればきりがありません。しかし IPO された銘柄で、2022年の弱気相場以降も順調に推移している銘柄は数える程しかないと思います。

例えば、ZI、RPRX、DRVN などでしょうか。多くの IPO された銘柄が IPO 価格の半分以下とか、10/1 とかの価格で取引されているのが現状です。

金利が上昇するような逆金融相場では、この手のバリエーションの高い銘柄はボコボコに売られるので注意が必要です。それでもIPO株投資がしたいという人には、以下の著書『IPOトレード入門 超成長株発見法』がおすすめです。

IPOトレードの入門書

IPO 株のトレードについて興味がある方は、パンローリングから2021年に新書が『IPOトレード入門 超成長株発見法』が出ていますので、読んでみると面白いと思います。

次なるGAFAはこうして探せ!銘柄のライフサイクルを見極める厳選株式投資入門。本書は、IPO(新規株式公開)をしたさまざまな銘柄を上場直後から観察し、超成長株になる銘柄と平凡なパフォーマンスしか残さない銘柄では、どこが違い、上場直後にどのような値動きをするのかを、今までになかった独自の視点から考察したものである。

このIPOトレードに関する実践書は、今までだれも発表したことのない発見や非常に示唆的な検証結果が含まれており、大化けする銘柄を上場の初期段階(その株のライフサイクルで見た初期段階)で見つける助けになるだろう。

その銘柄のライフサイクルに基づいたトレードとは、その銘柄が今、どんな段階にあるかを理解し、その段階にふさわしい値動きをする銘柄のなかから、超成長株になる芽をいち早く見つけ、第二のアマゾンやグーグルになるだろう銘柄に投資をしようとするものである。

「IPO銘柄の20%が1年以内に100%以上上昇する」、「IPO銘柄の90%以上が最終的には上場初日の安値を下回る」――これらは両方とも真実である!IPOトレードで数銘柄の超成長株をものにすれば、あなたのトレード人生はまったく変わったものになるだろう。

一方、IPO銘柄の90%以上が最後には初値を下回るとすれば、損切りのルールも重要になってくる。本書では、IPO銘柄に見られる独特の値動きとライフサイクルの段階の判断方法と、仕掛けと売却のルールを伝授する。本書は、危険に満ちたIPOトレードに光明をもたらす最高の水先案内人となるだろう。

IPO株は長期投資には向かない

最後に、ジェレミー・シーゲル教授も著書の『株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす』で、IPO投資について、次のように述べている。

IPOに投資するのは、宝くじを買うのと、とてもよく似ている。一握りは、とんでもなく成功するだろう。例えばマイクロソフト、インテルだ。だがIPO銘柄を無条件に定期的に買うなら既存銘柄で運用する場合に比べて、運用成績がかなり大幅に低くなるだろう。

IPO投資家は、同じ規模の小型株を買う投資家に比べて、手にするリターンが低く、しかも引き受けるリスクが高い。IPOを買うのは明らかに、宝くじを買うのに似て、長期的には割に合わない戦略だ。

と結論付けている。また、IPO銘柄は高騰する時について以下のように述べており、正に2020年〜2021年後半までの金融相場の有り様と一致する。

新規発行株を買うにあたり、間違いなく最悪の時期は、IPO市場が沸き立っている時だ。こうなると投資家は、「絶対に買い」と言われるセクターの銘柄なら何でもいいと言い始める。IPO市場が沸騰するのはバブルの最中だ.1990年代のハイテクバブルでもそうだったし、1970年代後半のオイルバブルでもそうだった。新規公開ラッシュこそ、バブルの明らかな兆候とも言っていいくらいだ。取引が始まった途端価格は急騰、目がくらむほどのプレミアムがつく。こうしたIPO株のリターンは長期的にはこれ以上なく低くなる。

正に2020年、2021年のIPOラッシュでは、個人投資家は一回転取るために、IPOされた銘柄に飛びつき、値上がった、急騰したタイミングで利確するようなトレードを頻繁に行っていました。

しかし金利が引き上げられると、数銘柄を除いた、大半のIPO株が高値から半分以下、10/1 … それ以下に叩き売られ、ブームの時に比べると見る影も無く悲惨な結末に陥っています。ジェレミー・シーゲル教授が言う通り、IPOを長期でロングする場合は、宝くじぐらいに難しいことを認識しておきましょう。

IPO 銘柄の本当の姿

IPO 銘柄の本当の姿として、IPO 銘柄を風刺した次のような画像が出回っていますが非常に示唆に富んでいると思います。素人はすごいと人気を集める新興企業が上場し、高値で売りに出されてると買ってしまうようですが、殆どのケースで下落に耐えられずに損切りしてしまうのではないでしょうか。

SPAC 株の投資ストラテジー

SPAC株もまた、2020年、2021年には大ブームとなり、宇宙SPACや、スポーツベッティング、eVTOL (ドローン)、EVなどのSPAC銘柄が大ブームになりました。しかし今となっては、99%のSPAC銘柄が天井圏から半値以下で取引きされ、SPAC株に限っては、上場停止勧告されている銘柄も多数あるくらい悲惨な末路となっています。

SPAC株というのは裏口上場と言われるように、何かしらの問題がある (良い決算をろくに出せない) 企業が正規のルートではない方法で上場することです。ですから、SPAC株の中に混ざっている原石を見つけ出して投資するようなものなのですが、残念ながら長期投資には向きません。

私が未だにロングしている、RKLB、BKSY、SPIR、PL、GENI、BLDE は全て半値以下でマイナスです … 私のようにこれらのSPAC銘柄を長期投資してしまった人は、やはり投資ストーリーにそそのかされたというか、夢を抱いてしまったのだと思います。(RKLB に関しては未だに夢を頂いていますが …)

とにかくSPAC株の投資ストラテジーは以下が全てです。

SPAC 投資はストーリー、テーマ一発。さっさと愛してさっさと捨てる。そういうタイプの投資対象。特に不況下では、最も遠ざけられる。

SPAC株もIPO株と同じように、トレードするなら相場のサイクルが金融相場 (低金利) であること、地合いが良い時にマージ日に一回転取りにいく、話題となっている時に押し目で買って、上がったら利確するなどを繰り返すようなトレードであれば儲けられると思います。しかし長期投資には向きません。

じゃあ何で未だにロングしているのか?と聞かれたら、高い勉強料だったのかもしれません。こうなると解っていれば長期投資はしなかったと思います。

【関連記事】SPAC 株トレードの基本と洞察

SPAC 株トレードの基本と洞察

インフルエンサーの甘い言葉に惑わされるな

人気の投資系インフルエンサーは、今なら相場の一階部分から投資できる!など、説得力がありそうな甘い言葉で誘惑してきますが、風向きが変わればそんなこと言ってなかったように振舞うので、インフルエンサーの言葉やツイートは半信半疑で理解し、最終的には自分の判断で売買する必要があります。

私も未だにその甘い言葉、投資ストーリーが前提にありホールドしている銘柄もありますが、紹介した本人は当分ダメだろうね〜、的なコメントをしていたり、風向きが変われば様々な前提が崩れるものです。やはり最後は自分の判断ということになります。

IPO、SPAC 株が長期投資に向かない理由

筆者は、2020年〜2021年のIPOブーム、SPAC ブームを経験し、自身でも宇宙SPAC株や一部のSPAC株を長期でホールドしていましたが、2022年にそれが間違いであったことを痛感しました。

これらの IPO株、SPAC株を長期ホールドしてしまい凍死家となってしまった人の特徴としては、2020年の金融相場から個別株投資を始めたという人が多いと思います。そして、これらの銘柄の投資ストーリーに魅せられてしまったと言っても過言ではありません。

多いパターンとして、自分は長期投資家と称しながら、長期に寄り添うだけの価値のある相手か?をしっかり見極めずに投資したり、人気化して株価が噴いているときに飛び乗ったりするケースです。

IPOして間もない若い会社は、90%位の割合で長期投資には向きません。なぜなら上場企業としてのトラックレコードが短すぎるので、その企業がきちんと良い決算を出し続けられるかどうか?のデータが不足しているからです。

素人投資家ほど、IPO時の投資ストーリーやテーマに魅せられてしまって「良い会社」と「良い投資ストーリー」を混同するのです。「良い投資ストーリー」には、無数のパターンがあります。なぜならそれは、投資銀行が描く絵空事のシナリオですから、どうにでもシナリオが書けてしまうからです。

まとめ

IPO株、SPAC株で損をしないでトレードするには、低金利の金融相場で乗っていき、決算が良ければ業績相場まで値幅を引っ張って利確するなど、低金利環境下でトレードして利益を出していくのが良いかと思います。

株式のバリエーションを決めるのは、金利が7割 / 業績が3割だとすると、IPO株、SPAC株はきちんとした決算が出せるか?どうか?というのはデータがないため、四半期の決算がしっかりと確認していく必要があります。

相場の最終局面や、金利上昇局面では、バリエーション的にどうしても売られてしまうため、アグレッシブルにトレードするなら相場の時期を限定してトレードするようにしましょう。