GeneDx Holdings (NASDAQ: WGS) は、小児および新生児集中治療室(NICU)の患者に特に重点を置いた希少疾患診断を専門とする大手ゲノム企業です。2000年に米国国立衛生研究所の科学者らによって設立された GeneDx は、包括的な遺伝子検査サービスの提供において常に最先端を走ってきました。
GeneDx (以前の社名 Sema4) は、特別買収目的会社(SPAC)である CM Life Sciences II との合併を通じて上場しました。
Sema4 は2020年11月に10ドルの空箱として SPAC 上場しました。そして2021年2月21日に患者中心の医療情報企業である Sema4 と CM Life Sciences II は最終的な事業統合契約を締結を発表し、株価もこのタイミングが高値となっています。
最終的に合併、マージが完了したのは2021年7月21日に以前の社名 Sema4 を反映した「SMFR」のティッカーシンボルでナスダックでの取引を開始しました。
丁度金融相場の中盤から終盤に出てきた Sema4 (GeneDx) は当然多くの SPAC 同様に撃沈します。FRBのアグレッシブルな利上げで逆風をモロに受ける中、水面下で Sema4 に変化の兆しが訪れます。
GeneDx の買収 (2022年1月)
Sema4 は、OPKO Health からゲノム検査および分析のリーダー企業である GeneDx を買収することで合意したことを2022年1月18日に発表しました。
この買収は、Sema4 のゲノム検査能力の強化とヘルスインテリジェンスプラットフォームの拡大を目的としたものでした。この取引は2022年4月29日に完了しました。
GeneDx Holdings への社名変更 (2022年9月)
買収後、Sema4 は自社を GeneDx Holdings Corp. に改名し、ゲノム検査およびヘルスインテリジェンスサービスへの注力拡大を反映しました。
これらの戦略的動きにより、GeneDx は、SPACの合併買収を活用してゲノムおよびヘルスインテリジェンス分野の能力を強化し、株式公開企業としての存在感を示しました。
「SMFR」から「WGS」にティッカーシンボルを変更
GeneDx (旧 Sema4 )は、GeneDx への社名変更に伴い、2023年1月10日にティッカーシンボルを「SMFR」から「WGS」に変更しました。GeneDx は水面下でリブランディングを進めました。
1対33の株式併合
この頃多くの SPAC が株価が1ドルを下回り、ナスダックルールにより自力で株価を1ドルに戻すか株式併合するかの選択肢を強いられ、殆どの SPAC が株式併合を実施しています。
GeneDx も2023年5月4日に、1対33の株式併合を実施しました。株式併合の結果、発行済株式数は約8億4440万株から約2560万株に減少しました。
これは後出しジャンケンですが、SPAC 原石銘柄を拾う際の第二の買い場 (第一はマージ前に仕込んで高値で売る) は株式併合後です。有望な SPAC 銘柄は株式併合後に息を吹き返すことが多いです (例えば、SPIR、BKSY、ARQQ など宇宙銘柄は株式併合後に何倍にもなっています) つまり、今振り返るとここが GeneDx のストーリーを理解していた投資家にとっては、このタイミングが買い場でした。
GeneDx のリブランディング・戦略転換
2022年4月、ヘルスインテリジェンス企業である Sema4 が GeneDx を買収したことで、戦略に大きな転換が起こりました。この買収後、Sema4 は2023年1月に GeneDx に社名を変更し、特に小児の希少疾患の診断におけるエクソームおよびゲノムのシーケンスへの新たな注力を強調しました。
この戦略的再編により、同社はがん、生殖、および女性向け健康診断の従前の取り組みを中止し、そのリソースと専門知識を高度なゲノム検査による小児希少疾患の特定に集中させることが可能になりました。
CEOのキャサリン・ステュランド氏のリーダーシップのもと、GeneDx は新生児の日常的なスクリーニングへの全ゲノムシーケンスの統合を積極的に推進しています。
その目的は、早期かつ正確な診断を可能にし、それによってさまざまな症状に対する適時な介入を促進することです。この取り組みは、包括的なゲノム解析を通じて小児医療を変革するという同社の決意を反映したものです。
まとめると、GeneDx は創業以来エクソームおよびゲノムシーケンスに携わってきたが、希少小児疾患の診断を優先するサービスに戦略の軸足を移すことは、Sema4 による買収とそれに続くブランド変更を経て、2022年から2023年の間にリブランディング/戦略転換を進めていました。
GeneDx の復活劇
GeneDx (NASDAQ: WGS) は、2024年の1年で目覚ましい変貌を遂げ、ゲノムシークエンシング業界における成功した転換を体現しています。
同社がニッチ分野への集中し、小児の希少疾患の診断のための全エクソームおよび全ゲノムシークエンシングに戦略的に重点を置いたことが、この復活の鍵となりました。
この専門化により、同社は特定の市場セグメントにおけるリーダーとなることができました。
最新2024Q4決算
GeneDx が2025年2月18日に発表した2024Q4決算もガイダンスを上回る素晴らしいものでした。
・財務実績
2024年第4四半期、GeneDxは9560万ドルの収益を報告し、前年比で64%の増加となりました。注目すべきは、エクソームおよびゲノム検査の収益が同期間に101%増加し、7880万ドルに達したことです。
同社は1680万ドルの調整後純利益を達成し、収益性の回復を強調しました。
・戦略的再フォーカス
当初は幅広い遺伝子検査サービスを提供していた GeneDx は、特に小児科の用途を対象に、エクソームおよびゲノムの配列決定に業務を集中させるよう合理化しました。この戦略的転換は、業務効率と財務実績の向上に大きく貢献しました。
・市場の評価
同社の株価は大幅に上昇し、2024年には2,700%近く上昇しました。この成長は、投資家の強い信頼と GeneDx の戦略的転換にあります。
GeneDx は業務の合理化と経費削減により財務状態を改善し、黒字化を達成しました。更に、処理時間の短縮と検査能力の拡大により、サービス提供を強化し、より多くの顧客を惹きつけ、収益を増加させました。
この決算の発表後に株価は+46%以上アップし、終値は112ドルになっています。
余談 : バイオファンドのポジション
私が GeneDx を知ったのはすごく最近で、株価が出遅れているように見えるゲノミクスの分野で先進的な技術を提供する Pereonalis (PSNL) を調べる段階で認識しました。
2024Q4決算後に GeneDx を調べてみたところ、SPAC 銘柄だったことに驚きました。一昔前の認識ですと SPAC 銘柄の成功例は DraftKings (DKNG) が有名でしたが、株式併合組での成功例としては GeneDx は目を見張るものがありました。
現在、SPAC 組は IONQ、RKLB など量子、宇宙セクターでも活発に取引されており、その中には株式併合組も多数ありますが、GeneDx のように決算を伴った上での株価の上昇は中々稀ではないかと思います。
また過去のバイオファンドのポジションを見てみると、Perceptive 何かは Sema4 時代から保有しているようで、Deerfield は見事に株式併合後の生まれ変わった段階で新規ポジを取っていました。
遺伝子検査市場は急速に拡大している?
レジェンド、スタンレー・ドラッケンミラーの保有する最大のポジは Natera (NTRA) だと聞きます。これには、遺伝子検査市場が、技術の進歩や個別化医療への関心の高まりにより、急速に拡大している背景があるようです。
世界の遺伝子検査市場は2024年には約117億1000万ドルと評価され、2025年から2030年にかけては年平均成長率(CAGR)22.5%で成長し、2030年には推定392億5000万ドルに達すると予測されています。
この拡大は、個別化医療に対する需要の高まり、ゲノム検査における技術進歩、そして早期の疾病発見と予防への重点化によって促進されています。
Pereonalis に関して
Pereonalis に関しては、Natera、GeneDx が主に消費者向け(B2C)の遺伝子検査サービスを提供しているのに対して、Pereonalis は主に企業向け(B2B)のサービスを提供し、製薬会社や研究機関向けに高度なゲノム解析やがんプロファイリングを行っています。
こうした違いが株価に現れているのだと思いますが、どうでしょうか?