次に何が起こるのか?英の偉大なる金融史家、エドワード・チャンセラー氏からのメッセージを紹介したい。私が思うのは、新著『The Price of Time: The Real Story of Interes』の主旨に忠実に言えば、金融システム全体と経済そのものが異常な低金利に適応したということだ。
これまで金融システム全体と経済そのものが異常な低金利に適応したということだ。インフレが進行し、金利が上昇すると、「トランプの家 (壊れやすい構造の家という比喩)」は崩壊し始める。
これまでのところ、英国のギルト市場の大暴落や英国年金基金の破綻寸前を目の当たりにし、暗号の冬 (サム・バンクマン-フリード率いるFTXの破綻) を目の当たりにし、シリコンバレー銀行 (計3行) の破綻で地方銀行の銀行危機が始まった。
私の強い思いは、このプロセスはまだ先があり、野球で言えば9回でも8回でもない。つまり、この超低金利環境からの脱却は非常に長期化し、困難な期間となるだろう。
アメリカの家計純資産はバブったまま
アメリカの家計純資産に関して私が言った点に戻ると、FRBが最近発表したデータを見たが、2021年の最高水準からあまり下がっていない。
その後、バブルのエベレストが形成され、2021年末にピークを迎える。その時点で、米国の家計の富は長期的な平均値よりもGDP比で約100ポイント大きくなっている。
金利が下がるにつれ、家計の富はどんどん増えていった
昔は家計の純資産の増加は、アメリカのシステムにおける実際の貯蓄と一致していたが、その後、貯蓄から完全に切り離されてしまった。バブルのサイクルのたびに、FED金利はどんどん下がっている。
金利が下がるにつれ、家計の富はどんどん増えていった。これは家計の富を集約したものだ。
破壊ではなく、大規模な蒸発が起こる
破壊ではなく、大規模な蒸発が起こると思います。富の大規模な蒸発はあり得る。その富の蒸発の多くは、金融抑圧が進むにつれて、名目資産、債権や債券などの「紙の富」が蒸発する可能性があります。
ですから、投資家が富を維持するのは難しいでしょう。しかし、慎重なポジションをとることで、投資家は一定の購買力を維持することが可能かもしれません。これは、資産の多様化、リスク管理の強化、そして市場の動向を注意深く監視する必要があります。
歴史を忘れた者はそれを繰り返す運命にある
2023年7月5日現在、株式市場は好調で、特に2021年後半〜2022年のベア相場で売り叩かれたナスダックは、今年前半の上昇率は何と、過去40年間で最高値を記録しているという。
Nasdaq set for its best first half in 40 years 📈 pic.twitter.com/AjaNTPN6TS
— Stocktwits (@Stocktwits) June 30, 2023
ツイッターのタイムラインを見ても、「億った」、「お金が増えて困る …」など、口座のスクショを貼ってホクホクしてる輩が増えてきたことは、皆さんも感じていると思います。
日本市場を見ても、Wインバースで売り向かっていた投資家が降参し、売り手が買いに転換しています。正にチャンセラー氏最初の著書『バブルの歴史 ──最後に来た者は悪魔の餌食』のタイトルが表す領域へと入ってきていると思います。
非常に興味深いのは、チャンセラー氏がバブルで良くある暴落ではなく、富の大規模な蒸発を指摘していることです。チャンセラー氏は、最後に次のように付け加えています。
歴史を覚えている人たちでさえ、それを繰り返すことを宣告されているような気がします。