株式投資の分析や研究で使える ChatGPT のプラグインをご紹介します。ChatGPT のブラウジング機能があれば、任意の会社の決算情報などもいちいち IR や Yahoo Finance などを見に行かなくても、ChatGPT に聞けば最新の決算情報を返してくれるようになりました。
更に ChatGPT のプラグインを駆使することで、株投投資の分析や比較、決算レビュー、業績をグラフ化するなど、様々なことがプロンプトを出すだけで行えるようになりました。こちらの記事では、株式投資の分析等に使える ChatGPT プラグイン各種の紹介、その使用例をご紹介します。
PortfolioPilot でポートフォリオを作成する
AITickerChat で決算カンファレンスコールの書き起こし
ChatGPT のプラグイン「AITickerChat」を使うと、SEC提出書類や Earnings Call Transcript からUSA株の洞察を得ることができます。
使用例
試しに地球観測衛星の企業 Planet 最新のカンファレンスコールについて調べてみましょう。
Planet という企業の最新決算のカンファレンスコールで重要な部分を教えて
すると以下のように返してくれます。
1. 収益の増加:Planetは、前四半期に比べて収益が大幅に増加したことを報告しました。これは、新規顧客の獲得と既存顧客の売上向上によるものです。
2. 新製品の投入:Planetは新製品の開発と投入について言及しました。これらの新製品は、同社の製品ポートフォリオを強化し、新たな収益源を生み出す可能性があります。
3. 市場拡大:Planetは、新たな市場への進出を計画していることを明らかにしました。これにより、同社の顧客基盤が拡大し、収益が増加する可能性があります。
4. コスト削減の取り組み:Planetは、運用コストを削減するための新たな戦略を導入したことを報告しました。これにより、同社の利益率が改善する可能性があります。
5. 財務体質の強化:Planetは、財務体質を強化するための取り組みを進めていることを報告しました。これにより、同社の長期的な成長と安定性が支えられる可能性があります。
以上の情報は、決算カンファレンスコールの全体的な内容を簡単にまとめたものであり、具体的な数値や詳細な戦略については、公式の決算資料をご覧ください。
プロンプトを調整することで、カンファレンスコールからインサイトを得ることができます。
Public で任意銘柄の過去のインサイトを得る
ChatGPT のプラグイン「Public (パブリック)」は、資産価格、ニュース、リサーチ、包括的な財務分析など、リアルタイムおよび過去のマーケットデータを入手できます。
「Public」の使用例
・過去の一連のニュースフロウを把握する
例えば、2023年5月に買収が完了した観測衛星のリーディングカンパニー Maxar Technologies が買収されるまでのニュースフローを獲得することができます。
観測衛星のリーダー企業 MAXR が買収されるまでの流れを教えて
すると以下のように返ってきます。
1. Maxar Technologies to be Acquired by a Consortium Led by HPS Investment Partners and Sound Point Capital – 2023年5月28日
HPS Investment PartnersとSound Point Capitalによるコンソーシアムにより、Maxar Technologiesが買収されることが発表されました。取引は現金で行われ、Maxarの株式あたり37ドルで、企業価値は約28億ドルと評価されています。買収は、Maxarの株主と規制当局の承認を受けた後、2023年後半に完了する予定です。
2. Maxar Technologies Confirms Receipt of Unsolicited Proposal – 2023年5月15日
Maxar Technologiesは、非公開の提案を受け取ったことを確認しました。この提案は、Maxarの株式を現金で購入するもので、詳細は公開されていません。
3. Maxar Technologies Reports First Quarter 2023 Results – 2023年5月1日
Maxar Technologiesは2023年第1四半期の結果を報告しました。この報告は、Maxarが買収提案を受け取った直前のもので、その業績は買収決定に影響を与えた可能性があります。
以上の情報から、Maxar Technologiesの買収は、非公開の提案を受けた後、HPS Investment PartnersとSound Point Capitalによるコンソーシアムによって進行し、現金での取引として行われることが決定されました。この買収は、Maxarの株主と規制当局の承認を受けた後、2023年後半に完了する予定です。
上記のように、Maxar Technologies が買収されるまでの流れを把握することができます。
・過去の暴落に何があったのか?を探る
次に、Maxar Technologies は2019年に株価が暴落しています。この時に企業に一体何があったのか?を知りたい時に、同じように以下のプロンプトを出すことで、過去の暴落で何があったのか?その一連のニュースフローを把握することができます。
MAXR は2019年に株価が暴落していますが、何があったのでしょうか?
すると以下のように返ってきます。
1. 2019年1月7日、同社はその衛星事業であるWorldView-4衛星が故障し、復旧不能であると発表しました。この衛星は地球の高解像度画像を提供するためのもので、その損失は同社の収益に大きな影響を与えました。このニュースにより、株価は大幅に下落しました。
2. さらに、同年の第1四半期には、同社は大幅な損失を報告し、その結果、株価はさらに下落しました。この損失は、衛星事業の問題だけでなく、同社の財務状況の悪化を反映していました。
これらの問題は、投資家の信頼を損ない、株価の大幅な下落を引き起こしました。
このように、過去に何があったのか?などを知りたい場合は、Public のプラグインを使用すると自分で調べるよりも早くそのニュースフローを手に入れることができます。
「Public」の特徴
このように Public は、リアルタイムおよび過去のマーケットデータを調べる際に非常に役に立ちます。
PortfoliosLab でボラリティをチェックする
ChatGPT のプラグイン「PortfoliosLab (ポートフォリオラボ)」は、株式、ETF、ファンド、暗号の分析から過去のパフォーマンス、ボラティリティ、リスク指標、シャープレシオ、ドローダウンなどを分析することができます。
PortfoliosLab 最大の特長は、ヒストリカル・パフォーマンスを分析できることです。ある資産、例えば原油、コモディティ、指数であるS&P500、ナスダックが一定期間どのように推移してきたかを調べることができます。
「PortfoliosLab」の使用例
以下 PortfoliosLab の使用例をご紹介します。例えば、ある資産クラスを比較することができます。
年初来の原油とナスダックのチャートを比較して
すると以下のように返ってきます。
・原油(CL=F):
年初来のリターン: -9.46%
1年間のボラティリティ: 39.21%
1年間のリターン: -36.85%
シャープレシオ: -0.9854
・NASDAQ Composite(^IXIC):
年初来のリターン: 23.97%
1年間のボラティリティ: 26.98%
1年間のリターン: 10.52%
シャープレシオ: 0.4995
これらのデータから、年初から現在までの期間でNASDAQ Compositeのパフォーマンスが原油よりも優れていることがわかります。また、NASDAQ Compositeの方がボラティリティが低く、シャープレシオが高いため、リスク調整後のリターンも原油より優れています。
続けて、宇宙SPAC企業のパフォーマンスを比べてみましょう。
宇宙SPAC銘柄の $PL $SPIR $RKLB のパフォーマンスを比べて
すると以下のように返ってきます。
1. Planet Labs Inc. ($PL)
1年間のリターン: -0.52
1年間のボラティリティ: 0.52
5年間のリターン: -0.52
5年間のボラティリティ: 0.52
2. Spire Global Inc. ($SPIR)
1年間のリターン: -0.77
1年間のボラティリティ: 0.77
5年間のリターン: -0.77
5年間のボラティリティ: 0.77
3. Rocket Lab USA, Inc. ($RKLB)
1年間のリターン: -0.0451
1年間のボラティリティ: 0.6518
5年間のリターン: -0.2702
5年間のボラティリティ: 0.721
これらの数値は、過去のパフォーマンスを示しており、将来の結果を予測するものではありません。また、各銘柄のリスクとリターンのバランスを考慮することが重要です。
このように PortfoliosLab は、過去数年のリターン、年初来リターン、ドローダウン、ボラティリティ、シャープレシオなどを調べたり、銘柄のパフォーマンスを比べることができます。
WebPilot で決算をレビューする
ChatGPT のプラグイン「「WebPilot (ウェブパイロット)」は、Webページ、PDF、データの閲覧・QA。1つまたは複数のURLから、記事を生成することが可能です。
数ある ChatGPT のプラグインの中でも非常に使える強力なプラグインの一つです。WebPilot を利用することで、任意の株式銘柄の決算をレビューすることも可能です。
任意の企業の IR から、決算発表のプレスリリースのニュースリンクを用意して、以下のようにプロンプトを出すことで素人でも簡単に決算レビューをすることが可能です。
以下のリンクは、ロケットの打上げ企業 Rocket Lab 最新の決算です。決算書の良かった点、悪かった点、注目点をレビューして下さい。
https://investors.rocketlabusa.com/news/news-details/2023/Rocket-Lab-Announces-First-Quarter-2023-Financial-Results-Issues-Guidance-For-Continued-Growth-In-Second-Quarter-2023/default.aspx
すると以下のように返ってきます。
良かった点
1.予想を上回る業績: Rocket Labは、収益と粗利益の両方で以前のガイダンスの上限を超える財務結果を達成しました。これは、同社のビジネスパフォーマンスが予想以上に良好であったことを示しています。
2. ミッションの成功: Rocket Labは、2023年第1四半期に3つのElectronミッションを成功させ、商用衛星を軌道に運びました。これは、Rocket Labの技術力と信頼性を示すもので、今後のビジネス展開にとって重要な成果と言えます。
3. 新規契約の獲得: Rocket Labは、Capella Spaceとの複数のミッション契約を獲得し、2023年に4回の専用打ち上げを行う予定です。これは、Rocket Labのサービスが引き続き需要があることを示しています。
悪かった点
1. 損失の拡大: Rocket Labは、2023年第1四半期に約4561万ドルの損失を計上しました。これは、同社がまだ利益を上げることができていないことを示しています。
注目点
1. Neutronロケットの開発: Rocket Labは、より大型のロケットであるNeutronの開発を進めています。これは、同社がより大きな市場に進出しようとしていることを示しています。
2. 2023年第2四半期のガイダンス: Rocket Labは、2023年第2四半期の収益を6000万ドルから6300万ドル、GAAP総利益率を14%から16%、非GAAP総利益率を22%から24%と予想しています。これは、同社が引き続き成長を続けることを予想していることを示しています。
以上の結果から、Rocket Labは一部の成功を収めつつも、まだ利益を上げることができていない段階にあります。しかし、新たな契約の獲得やNeutronロケットの開発など、今後の成長に向けた取り組みが進められています。
以上のように、WebPilot を使用して任意の企業の決算プレスリリースのニュースリンクを元に、決算レビューを書いてもらうことで、今期の決算のどこが良かったのか?悪かった点、注目の点などをレビューさせることが可能です。
「WebPilot」と「daigr.am」を使って業績をグラフ化する
ChatGPT のプラグイン、WebPilot と daigr.am の2つのプラグインを組み合わせて、IONQ という量子コンピュータ企業の業績をグラフ化してみましょう。そのためには、まず yahoo financ (その他データでも可) の Financials のリンクを用意て、以下のようにプロンプトを投げます。
daigr.am 単体では、決算情報を拾えないため、まず WebPilot で指摘したリンクから IONQ の業績を拾ってもらい、その数字を元に diagram でグラフを生成します。
何も指定しないと、英語表記のグラフが生成されますので、日本語表記でグラフを生成します。
IONQ の業績をグラフにして。グラフの名目は日本語にして下さい
https://finance.yahoo.com/quote/IONQ/financials?p=IONQ
すると以下のように返ってきます。
2020年12月31日:
総収入: 0
営業費用: 15,590千ドル
営業損益: -15,733千ドル
純利益: -15,424千ドル
2021年12月31日:
総収入: 2,099千ドル
営業費用: 39,746千ドル
営業損益: -38,687千ドル
純利益: -106,186千ドル
2022年12月31日:
総収入: 11,131千ドル
営業費用: 93,933千ドル
営業損益: -85,746千ドル
純利益: -48,511千ドル
これらのデータを元に、グラフを作成します。ただし、グラフの名目は日本語にします。
以下に、IONQの業績を示すグラフを作成しました。各年度の総収入、営業費用、営業損益、純利益を表しています。
フルサイズで見る
このようにグラフにしてみると、如何に SPAC 企業の純利益がマイナスか … ということが視覚的にも理解できます。
以上のように、ChatGPT に投げるプロンプトやデータ内容、データ先のリンクを工夫することで、企業の決算データなども ChatGPT の「WebPilot」と「daigr.am」プラグインを合わせることで簡単にグラフ化することができます。
Show Me でFRBの金融政策を図解する
Statis Fund Finance で取引量の情報を取得する
ChatGPT のプラグイン Statis Fund Finance (スタティス・ファンド・ファイナンス) は、Yahoo Finance から財務データを取得するための財務データツールです。
過去データの取得、移動平均の計算、相対力指数(RSI)の計算、取引量の取得、ボラティリティの計算、価格変動の計算、指定した銘柄ティッカーに対するボリンジャーバンドの生成などが可能です。
開始日、終了日、間隔などのパラメータは、各操作ごとに調整することができます。すべての操作でティッカーシンボルが必要です。
使用例
Statis Fund Finance プラグインを使用すると、例えば任意の銘柄の株式取引量が増えた時期などを調べることができます。例えば、IPO 後も連続して決算をクリアしている Samsara (サムサラ / IOT) という企業の株式の取引量が増えた時期を調べてみましょう。
IONQ の株式の取引量が増えた時期を教えて下さい
すると、Statis Fund Finance プラグインは Yahoo Finance から情報を拾い上げて、以下のように返してくれます。
1. 2023年5月15日から5月20日:取引量が平均から大幅に増加しました。特に5月17日には取引量がピークに達しました。
2. 2023年6月1日から6月5日:この期間も取引量が平均から大幅に増加しました。
これらの期間は、特定のニュースリリースやイベントがあった可能性があります。具体的な理由を知るためには、その期間の企業のニュースや業界の動向を調査することをお勧めします。
上記のように、株式の取引量がどこで増えたのか等の洞察を与えてくれます。こういうのは大体ウォッチリストに入れている銘柄は、Webull などのアプリでチャートを出せば、一目瞭然ですが、普段ウォッチしていない銘柄などの洞察を得る際に Statis Fund Finance のプラグインは使えるかもしれません。
Quiver Quantitative でインサイダー情報を取得する
ChatGPT プラグイン「Quiver Quantitative」を使用すると、議会の株式取引、ロビー活動、インサイダー取引、法案に関するデータにアクセスすることができます。
使用例
今回は、Quiver Quantitative を使用して任意の銘柄の最新のインサイダー情報を取得します。
インサイダー取引とは、企業の役員や重要な従業員 (インサイダー) が自社の株式を売買する行為を指します。これには、CEO、CFO、取締役、大株主など、企業の重要な情報にアクセスできる人物が含まれます。
ACLX の最新のインサイダー情報を教えて
すると以下の最新のインサイダー情報を返してくれます。
1. 2023年5月31日、Elghandour Rami氏が1株あたり44.2688ドルで2600株を売却し、取引後の保有株数は36169株となりました。
2. 2023年6月1日、Carroll Jill氏が1株あたり44.3464ドルで25556株を売却し、取引後の保有株数は2487674株となりました。
3. 2023年5月31日、Carroll Jill氏が1株あたり41.5ドルで315164株を売却し、取引後の保有株数は2513230株となりました。
4. 2023年5月24日、Gilson Michelle氏が1株あたり42.47ドルで8554株を売却し、取引後の保有株数は15635株となりました。
5. 2023年5月25日、Gilson Michelle氏が1株あたり42.7694ドルで6000株を売却し、取引後の保有株数は9485株となりました。
これらの情報は、企業のインサイダーが自社株をどのように取引しているかを示しています。ただし、これらの取引が必ずしも株価の動きを予測するものではないことをご理解ください。
このように、ACLX の最新のインサイダー情報を拝見すると、5月下旬以降役員が株を売っており、6月15日現在 ACLX の株価が下降していますので、その前兆などを察知することができます。
まとめ
以上のように、ChatGPT のプラグインが駆使することで、これまで Python 等の知識がないと株価データなどの分析ができませんでしたが、ChatGPT プラグインがほぼ全ての解決してくれるのではないか?と思います。
個人的には、上記でも触れた過去の銘柄などの暴落などのインサイトのフローを得ることができるのは、非常に画期的だと思います。ググって探すことは可能ですが、時間がかかるし手間です。
様々なシチュエーションに合わせて ChatGPT プラグインを使うことで、より深い洞察を得ることができると思いますので、引き続き、株式投資の分析等で使える ChatGPT プラグインを研究し、こちらの情報サイトで取り上げたいと思います。