不況期の株式投資についてご紹介します。株式市場は、不況が来る前に長期的な弱気相場入りし、ピーク時の株価から少なくとも20%下落することが知られています。
多くの投資家は、この長期に渡る弱気相場に悲観的になってしまい投資する機会を失ってしまいますが、株式投資の黄金の法則からいくと、不況期は投資のベストタイミングとされています。
アメリカン・エキスプレスのCFOであるジェフ・キャンベル氏も、決算説明会で「不況というのは、常に回復がつきまとうものだ。」と述べている通り、株式市場も巨視的に見れば回復しています。
こちらの記事で見ていくように、これまで株式市場は、不況が来る少し前に底入れしボトムをつけ、フラフラと上昇に転じています。不況になる大分前に投資してしまうと大失敗になってしまいますので、「景気のサイクル」、「値幅」、「引締めサイクル」をキーワードに、不況の足音を聞きながら投資タイミングを探っていきましょう。
不況は統計的に6年に一度訪れる
株式投資をしているのであれば、私たちは不況に対してもう少し「ストイック」であるべきです。不況は楽しいものではありませんが、普通のことです。アメリカでは1955年以降、計11回の不況 (リセッション) を経験しています。統計的には6年に一度くらいの頻度で不況になっていることがわかります。
フェデラルファンド・レートが示す引締めサイクルと不況の関係
フェデラルファンド・レート (FF金利) を見ると、1955年以降11回の景気後退 (灰色の射線部分) があったことを示しています。そして1955年以降、不況の前には必ずFRBによる金融引き締めのサイクルがありました。
経済が勝手に不況になるのではなく、好景気がある段階で加熱しインフレ (物価上昇) を招くと、またなる前に、FRBはリングに白タオルをぶん投げて、景気を冷やすために金融引き締めを行います。ちなみに例外として、過去に3回だけ引き締めサイクルが発生しても不況にならなかったことがありました。
長い景気拡大局面では、ペントアップ需要が枯渇します。2022年の大きなベア相場でも需要が枯渇する兆候が至るところで現れました。例えば、中古車価格の下落、家賃の下落、製造業に過剰設備が発生 … などなど
重要なことは、景気後退後期の引き締めは不況を回避することはできません。いったん溜め込んだ需要を使い果たすと、経済は非常に脆弱になるからです。
景気後退とは?
NBER景気循環の年代測定によると、景気後退とは、経済活動のピークとそれに続くトラフ、つまり最も低い地点との間の期間を指す。谷とピークの間は、景気拡大期である。景気拡大が正常な状態であり、ほとんどの不況は短期間である。
しかし、経済活動が以前のピークに戻るまで、あるいは以前のトレンドに戻るまでの時間は、かなり長くなる可能性がある。NBERの年表によれば、直近のピークは2020年2月に発生した。直近の谷は2020年4月に発生した。
NBERの定義では、景気後退は、経済全体に広がり、数ヶ月以上続く経済活動の著しい低下を伴うと強調されている。この定義を解釈する際、深さ、広がり、期間の3つの基準は、ある程度互換性があるものとして扱う。
つまり、それぞれの基準はある程度満たされる必要があるが、ある基準で示された極端な状況は、他の基準で示された弱い兆候を部分的に相殺する可能性がある。
例えば、2020年2月の経済活動のピークの場合、委員会は、その後の経済活動の落ち込みが非常に大きく、経済全体に広く拡散したため、たとえそれが極めて短期間であったとしても、景気後退と分類されるべきだと結論づけた。 – NBER Business Cycle Dating
不況のシグナル
・逆イールド (長短金利差)
歴史的に景気後退の前に見られる現象で、短期国債の売り越しが長期国債に向かい、2年物国債の利回りが10年物国債の利回りを上回る現象のこと。統計的に、逆イールドが発生して1年〜1年半後に景気後退となることが多い。
・株のベアマーケット
景気後退前には、弱気相場となるケースがある。しかし断言はできず、景気後退を伴わない弱気相場、弱気相場を伴わない不況もあるため、参考程度に知っておく必要がある。2022年のベア相場は、正に景気後退前の弱気相場だと言える。
・下落幅
景気後退局面では、株価はピークから20%〜30%以上下落する。下落の値幅を一つの指標とすることもできる。
・Google トレンド
Google トレンドで「リセッション」と検索された検索数のピークを捉えることで参考になる。
不況期は投資のベストタイミング
こちらのチャートは、1928年以降のS&P500のチャートです。灰色部分が景気後退 (リセッション) を示しており、景気後退期に株価は下落していることが分かりますが、その後株価は回復していることが分かります。
2022年のように、景気後退期の弱気相場だけを見るとネガティブになりますが、上記のチャートのように相場を長期で捉えるれば、景気後退期の下落時に投資することで、新たな上昇相場に乗ることができるのです。
このように不況は恐れるべきものではなく、備えるべきものだと捉えましょう。長期投資家 (積立投資、インデックス投資家) にとって、不況 (リセッション) 期は歴史的に投資のベストタイミングとされています。
米国の景気循環の判定は、NBERが管理しています。景気後退と景気拡大を規定する際は、いつも後になってから特定されるため、景気後退が特定されるのを待っていては、投資のベストタイミングを逃してしまいます。
2020年のバブルから考える
考えてみて下さい。2020年金融相場では、多くのハイテク銘柄が今となってはバブルような上昇を続けました。この時がバブルであった、ということは、いつも後になってから分かります。
一例として、2020年にIPOしたAI融資のフィンテック企業 Upstart Holdings (UPST) は当初35ドルでIPOし、翌年2021年10月には高値の401ドルを記録しました。2022年10月現在は幾らか?というと、20ドルくらいで取引されています。
株価は1年足らずで 20/1 になっています。一体何があったのでしょうか?バブル期の異常な高値は、現実離れしたバブルであって、現実の価値を反映していません。その時は誰しもが白熱していて買い上がっているのですが …
しかし不況期というのは、株価は現実の価値を反映しているため、将来の収益を低価格で複利運用する機会が生まれます。だからと言って業績の悪い UPST を買うか?というと、業績が良くなってから買うのが良いでしょう。
長期投資家もスポット購入のタイミング
景気後退期は株価は好景気から調整された状態で、バリエーション的にも現実の価格を反映しているとされる。iDeCo や NISA など、積立投資をしているインデックス投資家も余剰資金や、スポット購入するタイミングと言えます。ボトムは誰にも分からないため、何回かに分けて購入するのが良いかと思います。
すぐには儲かりませんが、後々見て非常に良いタイミングで積立投資できたことに気づくはずです。
不況期の大分前に投資してしまうと大失敗
2022年を例に、不況に入る大分前に投資してしまうと大失敗してしまいます。例えば、ロシアのウクライナ侵略を受けて、4月に「これは景気後退が来る」株は買いだ!と感覚で買ってしまったら、そこから株価は-13%で下落しています。不況期の弱気相場では、過去平均して株価はピーク時から値幅として20%〜30%ぐらいの調整が必要です。
あまり早くに出動してしまうと、調整幅が足りず、ポジションがやられてしまうので注意が必要です。
景気のサイクル
好景気のピーク時には、経済は成長し、企業の株価は史上最高値に達することが多い。一方、景気後退局面では、所得や雇用が減少し、企業が収益が悪くなり株価が下落する。
経済のピーク期
経済のピーク時には、経済は好景となり、雇用は高くGDPも成長する。好景気は株価にも反映され、多くの企業や業界の株価は高値を更新する。また、企業によっては配当金を増額する企業も出てくる。
正に2021年〜2022年のある時点までは、パンデミックによりFRBが大規模な緩和を行ったことで、アメリカ経済がコロナから再開されると、人々は街に繰り出し消費浪費を楽しんだ。これにより企業業績も好調で、2021年後半には株価も天井をつけている。
しかし景気がいき過ぎると、インフレを招くことにより物価が上昇することがある。2022年はFRBが緩和し過ぎたツケとして、米経済は記録的なインフレに悩まされることになった。
経済の不況期
好景気がやってきたら、次は不況の心配をする必要がある。不況を訪れを告げるシグナルとして、長短金利差というものがある。長短金利差がマイナスになったら、大凡1年後ぐらいに不況入りするため、心の準備が必要である。
経済が一通り成長すると、様々な原因によって下落に転じる。2022年のように不況の引き金となるのは、侵略や戦争、供給ショックなどの外的要因もある。
更に過熱した資産価格はバブルであって、急上昇した分の大きな揺り戻しにも注意しなければならない。経済がインフレになれば、消費の落ち込み、企業が従業員を解雇するニュースが増えてくる。
景気後退期は、決まって株価は調整 (下落) します。2022年の相場は正に、好景気から不況に向かう株価の調整であり、悪いタイミングでロシアのウクライナ侵略、それによるエネルギー価格の暴騰などもインフレに拍車をかけることになった。
非常に大事なことは、株価、相場は不況が来る前に調整するということです。不況がきたら既にそのことは知れ渡っているため、株価は底値から新しい相場に向けて千鳥足で上昇に転じます。
不況 (リセッション) になると、生産と雇用が底を打ち、再び上昇に転じる時期である。株価、相場的には上を向きだす頃合いで、鍋底、下落局面からいよいよ株価、相場が上を向き始めます。
株式は景気後退 (リセッション) の少し前にボトムをつける
FF金利とS&P500のチャート
株式市場は景気後退期に大きく下落/調整します。時期的には、景気後退が始まるかなり前から下落を開始し、景気後退が終わるかなり前に回復することが多いとされます。
FRBによる利上げ最終局面を探る
株価がボトムをつける条件としては、金利が天井を打ち、これ以上上がらないことが前提です。そうだとすれば、FRBが景況感を睨みつつ、どこで利上げを終了させるか?どこで利上げのペースを鈍化させるか?によります。
つまり、FRBがどこで金融引き締めに着手し、その後経済指標を睨みながら、「経済逝ったな〜 … また今回も利上げし過ぎたな、そろそろ利下げしなきゃな …」というタイミングを観察しましょう。
弱気相場で株価はピークから20%以上下落
またこの景気後退期の弱気相場では、株価はピークからボトムまで平均的に20〜30%強下落する傾向があります。過去の景気後退期の弱気相場では、
– 1929年ブラックマンデーの世界恐慌では、ダウ平均株価は 89% も下落した。
– 1997年~2001年のドットコムバブルでは、S&P500は高値から 49% 下落した。
– 2018年世界同時株安では、S&P500はその価値の 20% を失った。
– 2020年のコロナショックの暴落で、S&P500は 34% 下落した。
ブラックマンデーは例外としても、景気後退期の弱気相場では 20% 以上〜 30% ぐらいの下落/調整局面があることを意識しながらトレードする必要があり、ある時期にはキャッシュを高める必要がある。逆にいうと、高値から20%以上〜30%ぐらい下落したら、不況の声を聞きつつ、FRBの利上げ局面を勘定しつつ、出動する準備運動を開始しましょう。
危機の本質を見極める
2007年のリーマンショックでは、同年7月に利下げを開始し、その後10月にS&P500は天井をつけて下落を開始しました。このケースでは、利下げに転じ株価が戻るかな?といったところで、相場が崩れました。
FRBが利下げに転じたのならなぜ株価が下落したのか?ということですが、この時はサブプライム問題による金融危機が原因でした。暴落、下落、弱気相場には様々な原因や危機がありますが、その要因を理解し、過去の事例と照らし合わせて見極める必要があるでしょう。
まとめ
長期的には、企業価値は利益の成長に追随し、利益の成長は経済成長の結果です。短期的には、市場はセンチメントに大きく影響されます。株式市場は「先行指標」とも言われ、景気後退が宣言される前に下落/調整し、景気回復が統計に現れる前に回復するとされています。だからこそ景気後退を待ってから投資するのでは乗り遅れてしまい、その微妙なタイミングを探りながら見極めましょう。