Zoomy

長期積立投資、スポット購入する最もベストなタイミングとは?

Source: BofA Global Research, Bloomberg

長期の積立投資、インデックス投資しているインデックス投資家に向けて、まとまった大きな資金や余剰資金がある場合に、どのタイミングで一括スポット購入するのがベストか?についてご紹介します。

上記の長期のチャートは、S&P500の世俗的な長期の強気相場、長期の弱気相場のマッドマップを示しています。

・長期の強気相場
1950年~1966年、1980年~2000年、2013年~現在、の3つの期間

世俗的強気相場とは、ドローダウンが比較的浅く、プルバックからの回復が比較的速い、平均を上回るトータル・リターンの長期的な期間です。

S&P 500指数が1937年以降3回の世俗的強気相場を経験していることを示しています。最初の世俗的強気相場は1950年〜1966年まで続き、2回目の強気相場は1980年〜2000年まで続いた。3回目の強気相場は2013年に始まり、現在も継続中である。

・長期弱気相場
1937-1950年、1966-1980年、2000-2013の3つの期間

恒常的弱気相場とは、平均を下回るトータル・リターンが長期間続く相場で、ドローダウンは比較的深刻で、プルバックからの回復には長い時間がかかります。

S&P 500指数が1937年以降、3回の世俗的弱気相場を経験していることも示している。最初の世相的弱気相場は1937年〜1950年まで、2回目の弱気相場は1966年〜1980年まで、3回目の弱気相場は2000年〜2013年まで続いた。

画像は、強気相場が弱気相場よりも長く、顕著であることを示しています。このことは、株式市場が長期的に上昇傾向にあることを示唆している。

しかし、株式市場には周期性があり、強気相場と弱気相場の両方の時期があることに注意されたし。また、過去の実績は将来の結果を保証するものではないことも忘れてはならない。

長期の積立投資は良い習慣

その前に、積立投資の基本をおさらいしておきましょう。長期の積立は、ディシプリン・インベストメントと呼ばれます。つまり良い習慣、日々の努力、それによって相場に勝つ試みです。相場感を使わずに相場に勝つ方法、それが積立と呼ばれるものです。

普通のインデックス投資の場合は、ドルコスト平均法など、毎月決まった額を積み立てることがセオリーになります。株価が下落している時でも粛々と積立投資を続けることで、株価が安い時にも粛々と仕込むことができます。

投資信託でインデックスを積み立てる場合、年に一度のリバランス以外は特に株価を気にせず、仕事やプライベートに全力投球し、粛々と決まった金額を積み立てるのが、所謂「ほったらかし投資」として浸透しています。

よく巷の積立投資本や、インデックス投資家のブログなどでは「ドルコスト平均法」が取り上げられ、コツコツ決まったタイミングで積立てるのが良いという風に紹介されており、インデックス投資家、インデックスブロガーの間で人気の山崎元、水瀬ケンイチさんもその手の主張をしていたかと思います。

インデックス投資とは、マーケットタイミングに関係なく習慣的に行うものとされていますので、それで良いんだと思いますが、実はもっと効率の良い相場のサイクル、金利のサイクル、経済のサイクルを利用したベストなタイミングがあります。

明確に株式のバリエーションが割安なタイミングで購入することができるとしたらどうでしょうか?今回は、巷の人気インデックス投資、積立投資本では書いていない扱っていない、ベリーベストなタイミングで一括投資、スポット購入するタイミングについてご紹介します。

まずは長期投資の概念を復習しておきましょう。

長期投資とは?

長期投資とは、上記の画像は表すように、山有り谷有りの紆余曲折を経て、最後まで雨風、嵐に耐えた者だけが時間を味方につけて、複利の力で富を築くことのできる投資手法です。

投資初心者の場合、株価は右肩上がりだけのイメージを持っているかもしれませんが、そうではありません。株価はブル相場、ベア相場を繰り返し、千鳥足で上昇していきます。

アメリカの著名な投資家ピーター・リンチも以下のような言葉を残しています。

みんな、自分は長期投資家だと思ってる。市場が崩れるまでは。
– ピーター・リンチ

この言葉が何を意味するか?と言うと、例えば2020年のコロナショックで株価は暴落しました。もしこの頃、長期の積立投資を始めたばかりで、いきなり暴落に合い投資信託を売ってしまった、損切りしてしまった … という場合は失敗のケースです。

確かにいきなり長期投資を始めて暴落に合えば、誰しもがたじろぐはずです。しかし長期投資はその人にもよりますが、10年、20年、30年を見据えた言葉通り “長期” の積立投資になります。

2021年株価はどうなった?かと言うと、2020年のコロナショックから株価はV字回復しています。その後、2022年には-25%くらい戻していますが、長期で見れば暴落も何のそので上昇していることが分かります。

まとまった資金をスポット購入するベストタイミングとは?

答えが簡単です。不況 (リセッション) 時、できれば不況が来る少し前に、株価が大きく下落、大きく調整している局面でドカっとスポット購入して下さい。

株式投資というのは大きなサイクルがあります。少し難しいかもしれませんが、2020年にコロナショックが起きると株価は暴落し、世界経済が停止を余儀なくされました。経済が危機 (不況) を迎えると、FRBは2008年のリーマンショックを教訓に、大規模な金融緩和に転じます。

すると金利は低下し、株式のバリエーションにとっては非常に良い状態になります。株価はここからぐいぐいと上げていきます。2021年ワクチンも登場し経済が再開され、金融緩和の効果で経済は上向くと、ある時点でインフレが発生します。するとFRBは手のひらを返し、今度は金融引締めに転じます。

するとこれまで低金利だった環境が、FRBが政策金利を引き上げることで金利が高くなっていきますので、株式は売られます。2022年が正にその年で、FRBがぐいぐいと金利を引き上げたことで株式は大きなベア相場を迎えました。FRBが金利を引き上げ続けることで、逆資産効果で景気は下を向き始めます。

リセッションが近づくと、FRBはこれ以上金利を引き上げることはできなくなるため、上がっていた金利が今度は下落を始め、株式のバリエーションにも魅力が出てきます。この時がスポット購入のタイミングとなります。

例えば、2021年に余剰資金が200万円あるとして、上がり続ける株価を見て焦ってスポット購入するくらいなら、好景気から景気後退に向かう前に起こる、株価が大きな調整局面を待ってからスポット購入した方が、現実にあった株価の適正価格でスポット投資することができます。

このタイミングを身につけるのは、日々の相場の観察、相場、金利、経済のサイクルを勉強する必要があります。私もこのサイクルを身を持って学ぶのに3年半くらいの時間を要しています。というのも、本で読むのは簡単かもしれませんが、読むだけでは理解できず、実際に相場のサイクルや、金利のサイクル、経済の移り変わりを、観察し身銭を切って体感することでしか見えてこない景色があるのです。

為替の問題

とは言え、2022年は各国との金利差の関係で、為替はドル無双の有様となりました。ドル高円安は進行し、数十年ぶりにドル円は145円台をつけました。これが積立投資にどんな問題をもたらしたか?というと、

私たちが日本の証券会社で投資信託を積立投資している状態というのは、円でドル資産を買っています。アメリカ株は2022年、年初来暴落していますが、円でドル資産の投資信託を買っている日本人は、円安の影響で基準価格が全然下がっていないのです。

例えばアメリカの代表指数、S&P500は年初来-25%くらい調整していますが、同指数に積立投資する投資信託 eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500) とチャートを比べると、投資信託は全然下落していないことが分かります。これが為替の問題です。

今回のようなケースでは、結果的に2021年の時点で一括投資、スポット購入してしまった方が投資信託を安く買えたというのが真実になります。為替は読むのが難しいため、このような稀なケースを起こり得ます。

iDeCo、つみたてNISAのスポット投資

続いて、iDeCo、つみたてNISAでスポット購入するタイミングについて同様に考えてみましょう。iDeCo、つみたてNISAには毎年決まった掛金の金額、枠があることが前提になりますので、その年、その年で、株価が下落した局面や調整した時にスポット購入していく必要があります。

私の場合、アメリカの大統領がオバマさんからトランプさんに変わるタイミングで、iDeCo を開始しました。そのあとに、つみたてNISAも開始しインデックス投資を行っています。iDeCo に関しては、毎月決まった額6.8万円を先進国インデックスで積み立てており、つみたてNISAに関しては、相場が下げたタイミングを見計らって年に何回かに分けてある程度まとまった額をスポット購入で「全米株式インデックス・ファンド」に積み立てています。

iDeCo はスイッチングを活用しよう

iDeCo にはスイッチングという機能があります。今回はこれを活用し、相場が下り坂を転げ落ちている時期 (ベア相場) に、毎月の掛金を元本割れしない「あおぞら定期」に資金を貯めておき、相場が底入れしたら段階的に資金を貯めておいた「あおぞら定期」から「DCニッセイ外国株式インデックス」にスイッチングしていくという手法です。

2022年5月17日までは、古いSBI証券の iDeCo に関しては決まった額を粛々と積み立てていましたが、一旦「あおぞら定期」にスイッチングして、相場が底入れするのを待つことにしました。この頃FRBは、立て続けに75bpの利上げを行なっていましたので、金利はスルスルと上昇し、株価は下落を続けました。

2022年9月30日以降、そろそろ相場は底入れするのではないか?という予想から、「あおぞら定期」に貯めていた掛金をある程度まとまった金額を何回かに分けて「DCニッセイ外国株式インデックス」にスイッチングを開始しました。ドル円との兼ね合いもありますが、為替まで考慮するのは非常に難しいため、相場の底入れタイミングを見てのスイッチングとなりました。

このように、iDeCo の場合は相場を眺めながら、その年の相場の底や下落タイミングを探して何回かに分けてスポット購入 (元本を貯めておき、タイミングを見てインデックスにスイッチング) するのが今のところ良いのではないか?と考えています。

スイッチングをする際の注意点としては、スイッチングが行われ買付が行われるまでに数日の期間を要しますので、その日数も勘定してスイッチングします。

つみたてNISAのスポット購入

つみたてNISAの場合は、1年に使える枠が40万円と決まっています。私は楽天でつみたてNISAを利用していますが、つみたてNISAの場合、積立設定を上手く使いこなすことで、自分のタイミングに近い位置でスポット購入することが可能です。

例えば、このタイミングだな!と思った時に、積立設定で任意の投資信託を選択し、ある程度まとまった金額を設定します。実際に買付が行われるのに2、3日の日数を要しますが、この設定、設定解除を繰り返すことで、ある程度自分のタイミングでスポット購入することができます。

2022年は非常に難しい相場

2022年は近年稀にみる難しい相場となりました。2022年10月現在、ナスダックは年初来-30%の大幅調整となり、コロナ禍で一躍時の人となったイノベーション投資 ARK Invest のキャシー・ウッド氏の旗艦ETF、投資先の株すべてが年初来マイナスというニュースも2022年5月7日に報じられました。年初来のセクター別パフォーマンスで見ても、エネルギーセクター (石油、石炭、天然ガスなど) +45%と一人勝ちの状況で、他は殆どマイナスの成績です。

2022年相場のネガティブな要素

2022年は、なぜこんなに難しい相場なのか?というと、金融相場から金融引締めの相場の転換点だということです。更に様々な悲観的な材料がありましたし、まだ継続中のネガ要素もあります。

・前代未聞の利上げ局面 (金融引締め)
・ロシアのウクライナ侵略によるエクスポージャー
・中国の0コロナ対策によるサプライチェーンの混乱
・アメリカの止まらないインフレ懸念
・中間選挙の年
・エネルギー危機
・世界的な食料危機
・世界はグローバル化からブロック化に

2020年〜2021年以降のコロナ禍の株価V字回復を見て、自分も遅れまいと2022年1月とかにまとまった額を投資してしまった人の殆どが、この記事を書いている2022年10月現在マイナスとなっています。しかし、上記でも為替の関係で円でドル資産の投資信託を買っている人はそんなにダメージを受けていません。

人によっては、1月下旬の株価が下げたタイミングで、これはチャンスだとまとまった金額 (何千万) をレバナス (レバレッジ・ナスダック) に投資する人も Twitter で出てきました。極短期で見れば2月上旬に株価は戻してきましたが、ロシアのウクライナ侵攻で株価は大きく下落、3月中旬に株価は大きく戻ってきましたが、結局NYダウ、ナスダックなどの指数は安値を更新し続けました。

この2022年、年初から続く下り坂を転げ落ちるような株価の下落が何か?というと、FRBが金融引締めを行い、政策金利をズンドコ引き上げ金利が上昇したことが株式のバリエーションを暗転させました。FRBが政策金利を引き上げることで逆資産効果が働き、経済は好景気から景気後退へと向かっています。

景気が後退すれば、FRBもこれ以上金利を引き上げることができなくなるため、金利はある時点で低下していくことが考えられます。2022年のこの株価の下落が何だったのか?というと、景気後退前の株価の調整だったということが言えます。

S&P500の強気相場ロードマップ : 月次ログスケールチャート

Source: BofA Global Research, Bloomberg

このチャートは、1937年〜1950年、1966年〜1980年、2000年〜2013年の世俗的弱気相場と、1950年〜1966年、1980年〜2000年、2013年から現在までの世俗的強気相場を示しています。複数のビジネスサイクル。セキュラーな強気相場とセキュラーな弱気相場は、景気の拡大・縮小と同様に周期的な強気相場と周期的な弱気相場を経験します。

上記のS&P500のチャートを簡単に解説すると、

1937年〜1950年まで【13年間のベア相場】

1950年〜1966年まで【16年間のブル相場】

1966年〜1980年まで【14年間のベア相場】

1980年〜2000年まで【20年間のブル相場】

2000年〜2013年まで【13年間のベア相場】

2013年〜2021年まで【8年間のブル相場】

2021年〜20〇〇年まで【ベア相場】

というように、S&P500のチャートを俯瞰して見ると、約13年間のボックス圏を維持したあと、16年〜20年間くらい上昇相場を続ける傾向にあることがわかります。直近の上昇相場は2013年からスタートしたので、丁度ブル相場が10年目だということがカウントできます。このパターンに沿うようであれば、後6年以上は上昇相場が期待できる?のかもしれません。

このS&P500のチャートが示すように、つまり、株を売買して右肩上がりの時期に利益を出して行くのが重要とも言えます。積立て投資の世界では、「株は寝かして増やしなさい」、「ほったらかし投資」という言葉が基本としてありますが、その言葉の裏には長期の下落トレンドもあることを理解する必要があります。

まとめ

2022年10月現在、景気の声を聞けば景気後退は眼前に迫っているように思えます。景気後退が現実のものとなれば、FRBは金融政策を引締めから、どこかの時点で金融緩和に政策転換をしなければいけません。そうであれば、金利は天井付近にあり、これから金利が低下していくシナリオを考慮すると買いの出動を着々と進めています。もちろん投資は自己責任でお願いします。