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ナシーム・タレブ氏、ホワイト・スワンの出現に言及する

ナシーム・タレブ氏、ホワイト・スワンの出現に言及する

著書『ブラック・スワン』で世界的に有名な統計学者/リスクアナリストのナシーム・ニコラス・タレブ氏は、ロンドン、パリ、ローマ、ベルリン、トルコ、インドネシアなど世界各地で起こっている反イスラエル・デモに関して、自身の著書『ブラック・スワン』をもじって「ホワイト・スワン」だ、と明言している。

これはクオンツや統計モデリングでは「レジーム・スイッチング」と呼ばれている。一部の人々は、明らかに予測可能なことに愚かにも目をつぶってきた。ホワイトスワンだ。

ホワイト・スワンの出現

タレブ氏がクオンツや統計モデリングの文脈で「レジーム・スイッチング」に言及するとき、彼が言っているのは、観測可能なデータの振る舞いや生成過程における潜在的な変化や転換を捉えるために使われる統計的手法のことです。

例えば金融では、レジーム・スイッチング・モデルは、市場環境がボラティリティの高い時期から低い時期へと突然変化する可能性があり、こうした変化が取引戦略やリスク管理に重大な影響を与えるという事実を捉えることができる。

「ホワイト・スワン」という言葉は、彼のブラック・スワン理論にちなんだものです。”ブラック・スワン” とは、ある状況において通常予想される範囲を超え、深刻な結果をもたらす可能性のある予測不可能な出来事であるのに対し、”ホワイト・スワン” とは、実際に予測可能で、後から振り返って説明可能な出来事のことである。このタレブ氏のツイートに対して、藤沢数希氏は次のように引用ツイートを返しています。

米国を中心とする西側諸国の道徳的優位性は、残念ながら崩壊した。多極化した世界が出現するだろう。それを “政権交代” と呼ぶのは妥当だ。

藤沢氏は、この流れが “Black Lives Matter” を超える大きなうねりになると予想していた。

このような世界的なデモは、ソーシャルネットが拡散装置として機能している点 (メディアやソーシャルは子供犠牲者を強調)、非常に分かりやすい死者数という観点で人々は直感的に反応している点に留意したい。

※ダニエル・カーネマンが著書の『ファスト&スロー』で解いた直感 (システム1)

勿論、いかなる戦争も肯定されません。しかし、歴史的な視点、西側東側の観点から物事を捉えると、この出来事は作家マーク・トウェインが言ったように「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という方向に大きく舵を切ったのではないかと思います。

世界秩序の多極化

経済学者のラッセル・ネイピア氏は、今の状況をかつての冷戦時に例え、世界秩序の多極化と述べています。

かつての冷戦では、核の脅威が迫っていたため、何度も代理戦争が起きた。おそらく現在の地政学的状況も同じような軌跡をたどり、ウクライナが最初の代理戦争の舞台のひとつとなるだろう。

しかし、現在のシナリオは、現在の世界秩序の多極化と、新たな未確定のダイナミズムへの移行という2つの重要な側面において異なっている。冷戦時代は安定した二極的なダイナミズムを特徴としていたが、今日の環境はより不安定に感じられる。

もうひとつの違いは、今日の大国の領土的野心にある。冷戦時代、ソ連は主に東ヨーロッパにおける帝国の維持を目指していた。対照的に、ロシアと中国は現在、修正主義的な大国であり、それぞれウクライナや台湾のように、本来自分たちのものだと信じている領土を主張している。

これらの領土紛争は冷戦時代には見られなかったものであり、現在の状況をより不安定なものにしている。

著名な投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏も、今年5月に南カリフォルニア大学で行われた基調講演で次のように述べている。

米国が支配する世界とは対照的に、多極化する世界へのシフトを感じる。基軸国としての地位を失うことは大きな意味を持つだろうから、私が間違っていることを願っている。

著書『世界の終わりの始まり:グローバリゼーション崩壊のマッピング』で知られる、地政学に詳しいアメリカの作家ピーター・ゼイハン氏は、中東で進行中の出来事がウクライナ情勢に関する見出しに影を落としていると警告する。

歴史的な大きな出来事や極端な衝撃は、その後の社会、経済、政策、さらには人々の心理や行動に大きな影響を及ぼす。これらの出来事は、しばしば私たちの予期しない方法で世界を変え、新しいリスクや機会を生み出す。

正にロシアによるウクライナ侵攻、その後に引き起こされた中東の紛争は、別々なように見えて事を大きく変化させる可能性がある。ゼイハン氏は、中東紛争に影に隠れてしまったウクライナの重要性を次のように話す。

ウクライナは数段重要だ。1991年以来、ロシアは近隣諸国を再編成するために9つの戦争を仕掛けており、ウクライナで成功すれば、ルーマニア、リトアニア、エストニア、ポーランドといった他の国々を標的にすることを強めるだけだ。

ウクライナが陥落すれば、私たちは、米軍の駐留や核兵器の使用を伴う可能性のある、別の、より悲惨な戦争シナリオに直面することになるかもしれない。ロシアがウクライナを越えて進出するのを阻止することは、米国にとって核心的な国益である。

経済的にも、ウクライナの利害は大きい。この紛争には、世界第1位と第5位の小麦輸出国、世界第1位と第3位のカリ(重要な肥料原料)供給国、世界第2位の石油・天然ガス供給国が関わっている。

莫大な経済的影響を考えると、世界経済システムの大部分を支配する権威主義的な大国を抑え、重要な経済的パイプ役である民主主義国家への支援に共和党が反対しているのは印象的だ。

〜中略〜

ロシアがウクライナで優勢に立ち、NATO国境に到達した場合、よく訓練されたNATO軍と、能力が著しく劣るロシア軍との衝突は、ロシアにとって壊滅的な損失をもたらすだろう。しかし、だからといってロシアの戦略的ニーズが否定されるわけではなく、恐ろしいことではあるが核兵器の使用もあり得ることになる。

バイデン大統領は、その豊富な経験と知識から、このことを根本的なレベルで理解している。政権は、核紛争がもたらす壊滅的な影響を理解し、そのようなエスカレーションを防ぐための対策を確実に講じるだろう。

つまり物事を俯瞰的に大きく見るとすれば、バイデン大統領が中東の地域を常に混乱していると言うように、どちら (イスラエル、パレスチナ) につくかを選んでいるのです。人々は感情的にソーシャルやメディアを通じて流れてくるものを感情的に判断材料にしていますが、物事はそんな単純じゃないということです。

11月4日には、バイデン政権は大統領選を意識してか、欧米がウクライナに停戦促す動きがあったことをNBCが報じています。

ウクライナは、ガザよりも桁違いに重要だ

ピーター・ゼイハン氏が10月中旬に行われたインタビューで、今最も注視していることは何ですか?という質問に次のように回答しています。

非常に多くの動く部分があり、それらはすべて相互に関連している。ウクライナは、ガザよりも桁違いに重要だ。私にとってガザは、特にあなたがイスラエル人なら申し訳ないが、こんなことは言いたくない。

イスラエルにとっては大きな問題だが、他の誰にとっても大きな問題ではない。ウクライナの将来は、NATOやEUだけでなく、西側同盟で何が可能か、地域全体の構造、そしてロシアがどう死ぬかを決定する。

なぜなら、ウクライナが陥落すれば、ロシアはヨーロッパを狙ってくるからだ。ウクライナが成功すれば、ロシア体制の崩壊に対処しなければならないが、それはソ連体制の崩壊よりもはるかに厄介なものになるだろう。

それよりも重要なのは、中国がどのように崩壊するかということだ。なぜなら、中国は世界の工場だからだ。中国には35兆ドルもの工業プラントのサンクコストがあり、その大半は他のどこかで再建されなければならない。

そのプロセスがどうなるかで、今後50年間の人類の状況が決まる。

人々はソーシャルやメディアが流す情報に一喜一憂している。思い出して欲しい、ウクライナの戦争は始まった当初人々はどう反応していたか?そして時が経ち、今度は中東が戦火に見舞われた。

物事の新しい方が見直され、古い方が切り捨てられているが、それでは時代に翻弄される多くの人々と同じになってしまう。現在の社会は、とにかくソーシャルネットが拡散装置のごとく機能しており、多くの者が向いている方角を向くように無意識に反応しがちだが、ビックピクチャーを見なければいけない。

私たちはソーシャルからメディアから流れてくる情報に一喜一憂するのではなく、ネットを閉じ、しばし歴史を学び、読書し、自分の人生を少しでも前に進める努力をしなければならない。

現在世界は、スーパーバブルの最後のサイクル、高金利・インフレの時代、戦争の世紀、気候危機というとんでもない時代を迎えている。

ニール・ハウが驚くべき新予測『The Fourth Turning Is Here』を携えて戻ってきた

気候危機に関しては、日本国内の自然界でも明らかな異変の数々が報告されており、来年の春や夏がどのようになるのか?が心配である。2023年11月3日には、世界の海面水温が1982年~2011年の平均を上回る標準偏差の数で新記録を樹立したという。

一流の科学教授が、2023年以前のどの年においても、この異常に近い日はなかった … と驚愕している出来事である。日本人は更に、地質のサイクル的に今世紀起こるとされる巨大地震への警戒・減災も心に留めておく必要があると思います。

南海トラフ巨大地震で日本はどうなるのか?