コネチカット大学名誉教授でオックスフォード大学研究員、著書『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』で知られるピーター・ターチンが、2024年のアメリカの大統領選後に、「アメリカはすでに「革命」の初期段階にある」ことを述べています。
アメリカはすでに「革命」の初期段階にある
現在、アメリカはすでに「革命」の初期段階にあるかもしれません。私の考えでは、革命とは単に暴力的な変革ではなく、「支配層(エリート)が打倒され、対抗エリートに取って代わられる」ことを指します。
今まさに、その対抗エリートの動きがドナルド・トランプを中心に進行しています。興味深いのは、共和党がかつて「1%の富裕層の政党」だったにもかかわらず、現在は「アメリカの労働者階級の政党」として再編されつつある点です。
そのため、多くの主流派共和党員が党を離れ、民主党に流れる動きも見られます。結果として、現在の民主党は「上位1%と上位10%を代表する支配層の政党」となりつつあります。
これは、リズ・チェイニーやディック・チェイニーのようなネオコン(新保守主義者)が共和党を離れ、民主党側にシフトしたことからも明らかです。一方で、トランプ陣営には、さまざまな背景を持つ人物が集まっています。
トランプ陣営に集まる様々な人物
例えば、JD・ヴァンスのように共和党内で急成長した人物がいる一方で、民主党から離脱したロバート・F・ケネディ・ジュニアやトゥルシー・ギャバードのような人物もいます。
また、イーロン・マスクのような富裕層がこの動きに関与しており、彼の所有するX(旧Twitter)はこの新たな政治運動において重要な役割を果たしました。さらに、タッカー・カールソンのような影響力のあるインフルエンサーも加わっています。
この連合は非常に多様な顔ぶれを持ち、それぞれ異なる目的を持っています。そのため、この連携がどれほど長続きするかは未知数です。しかし、彼らの共通点は「現在の支配層に対抗すること」にあります。
トランプ政権の「革命的」な人事計画
トランプ陣営は、次の政権で「極端」とも言える人事計画を進めており、主要な政府機関のトップに従来のエリートとは異なる人物を据えようとしています。この動きに対して、現政権の支配層(エリート層)は強い警戒を示しています。
彼らは、「自分たちが排除されるのではないか」という恐れを抱いているのです。歴史的に見ると、革命はしばしば暴力を伴います。例えば、ロシア革命ではボルシェヴィキが旧政権を完全に一掃しました。
大きな混乱が起こる可能性
アメリカにおいても、もし現在の体制が完全に入れ替わるような事態になれば、大きな混乱が起こる可能性があります。革命が必ずしも暴力的なものであるとは限りません。
しかし、アメリカでは今、エリート交代の可能性が確かに議題となっています。実際にそれが起こるかどうか、また、成功するかどうかは大きな疑問ですが、対抗エリートの意図は明確であり、それは現在の支配層を排除し、新たなエリートに置き換えることです。
現実味を帯びる混乱前夜
2024年11月の米大統領選後に、ピーター・ターチンが予想した混乱が早くもアメリカでは起こっている。私が注目しているのは、トランプ陣営が進める、保健福祉省(HHS)傘下の連邦保健機関、特に疾病予防管理センター(CDC)や国立衛生研究所(NIH)などの人員削減です。
ホワイトハウスは、食品医薬品局(FDA)やCDCを含む複数の保健機関に対し、一定の割合の職員削減を義務付ける大統領令を準備しています。この命令に先立ち、政権は連邦職員約200万人を対象に退職奨励金を提示し、政府規模の大幅な縮小を図っています。
これにより、6万人以上の職員が退職を受け入れる意向を示していますが、連邦地裁はこの計画の差し止め命令を出しています。さらに、1月21日にはFDA、CDC、NIHの職員に対し、情報発信の一時全面停止が指示されました。
これらの措置は、政府の規模縮小と予算削減の一環として行われており、保健機関の機能や公衆衛生への影響が懸念されています。この水面下で進む、H5N1型インフルエンザウイルスの動向を危惧しています。
Very unwelcome news! H5N1 genotype D1.1 6 identified in 6 Nevada dairy herds. This is NOT the strain that's been circulating on farms so far. It's the strain that sent a 13yo girl in Canada to ICU, and that killed a man in Louisiana. Bad time for a public health comms blackout. pic.twitter.com/HY6S1Sl2Wy
— Noha Aboelata, MD (@NohaAboelataMD) February 6, 2025
H5N1型インフルエンザウイルスは、これまで主に鳥類に感染することで知られていましたが、2024年3月以降、アメリカの乳牛においても感染が確認されています。これまでに16の州で少なくとも866頭の牛が感染し、61人が発症しています。
特にカリフォルニア州では、感染した乳牛の数が全米の約4分の3を占めており、州知事は緊急事態を宣言しました。感染した牛の生乳からは大量のウイルスが検出されており、搾乳時の機器を介してウイルスが広がる可能性が指摘されています。
人への感染も報告されており、特に感染した牛や鳥との接触が原因とされています。これらの事例の多くは軽症でしたが、ルイジアナ州では初の重症例が報告されました。
現在、H5N1ウイルスの人から人への感染は限定的であり、一般市民へのリスクは低いとされています。