今回は、宇宙ビジネスを学ぶたい!航空宇宙関連企業やスタートアップ企業への株式投資をしてみたい!という方に向けて、宇宙ビジネスや NewSpace (ニュースペース) のプレイヤーについて学ぶことのできる、おすすめの宇宙ビジネス本を参考図書としてご紹介します。
コロナ禍を経て2020年以降、SPAC (特別買収目的会社) を通じて複数の新興宇宙ベンチャー企業、ピュアプレイの宇宙企業が上場されるなど、第4次産業革命、インダストリー4.0と言われる宇宙ビジネス (宇宙・衛星産業) のブームが到来しています。
第1次産業革命は蒸気や水を動力源とする機械、第2次産業革命は電気の利用、第3次産業革命はコンピュータやスーパーコンピュータの登場、そして第4次産業革命はモノのインターネット、M2M、3Dプリント、ビッグデータ解析、自律型ロボット、ライフサイエンス開発などなど、多岐にわたります。インダストリー4.0において、宇宙・衛星産業はどのように進化していくのでしょうか?
第四次産業革命とは、ロボット工学、人工知能 (AI)、ブロックチェーン (仮想通貨)、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー(生物工学)、量子コンピュータ、モノのインターネット (IoT) 、3Dプリンター、自動運転車(スマートカー)、仮想現実、拡張現実、複合現実などの多岐に渡る分野においての新興の技術革新を特徴とする。
コロナ前の2019年までは、株式市場で宇宙ビジネス関連のスタートアップ企業に投資しようとすると、民間宇宙旅行ビジネスの Virgin Galactic (ヴァージン・ギャラクティック : SPCE) という企業1択しかありませんでした。
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しかし2020年以降、ある種のバブルとも言える SPAC (裏口上場) 上場ラッシュにより、新興の宇宙スタートアップ企業がこぞって SPAC 上場を果たしたことで、状況は大きく変わってきました。
2023年現在では、衛星インターネット、小型ロケットの打上げ、宇宙ソリューション、観測衛星データ、衛星コンステレーションなどを手掛ける宇宙ビジネスをコアの事業に掲げた NewSpace のベンチャー企業が SPAC 上場を果たし、日本のネット証券会社 (楽天、SBI、マネックス) でもこれらのピュアプレイの宇宙企業の株式を買えるようになっています。
宇宙ビジネスは比較的にまだ新しい産業であり、「第4次産業革命」とも呼ばれています。2022年のロシアによるウクライナ侵攻でも、多くの航空宇宙企業の存在が見直される機会となりました (SpaceX や Maxer など)。現在、宇宙ビジネスの市場をリードするのは、イーロンマスク率いる SpaceX (スペースX) の存在です。
同社は、再利用可能なロケットと革新的な燃料によって打ち上げコストを劇的に下げることを実現しています。地球低軌道(LEO)への旅はより手頃に、より頻繁に行われるようになりました。
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宇宙技術企業は、宇宙製造を現実のものとするために、最初の商業的な軌道上の目的地を建設しようと競い合っています。日本でも2022年の後半に、宇宙インターネット・サービス Starlink が利用できるようになり、徐々に私たちの日常生活にも浸透しています。
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目次
- 1. 宇宙ビジネスについて学ぶ
- 2. 新興の宇宙企業に興味を持ったきっかけ
- 3. 宇宙ビジネスを学ぶ参考図書
- 4. 日本語で書かれた宇宙ビジネスのおすすめ本
- 『宇宙ビジネス入門 NewSpace 革命の全貌』
- 『宇宙ビジネスの衝撃-21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』
- 『TECHNOKING イーロン・マスク 奇跡を呼び込む光速経営』
- 『宇宙ベンチャーの時代~経営の視点で読む宇宙開発』
- 『イーロン・マスク』上、下
- 5. 英語で書かれた宇宙ビジネスのおすすめ本
- 『When The Heavens Went On Sale』
- 『The Space Economy』
- 『Liftoff』
宇宙ビジネスについて学ぶ
いきなり宇宙ビジネス、投資と言われても分からない … という方は多いのではないでしょうか。それもそのはずで、宇宙ビジネスを学ぶ機会というのは、なかなかないのではないかと思います。
それでもご心配はいりません。こちらで紹介する宇宙ビジネス関連の本を読むことで、ある程度の宇宙ビジネスの基礎を学ぶことができます。後はネットやニュースなどで、宇宙ビジネスについての近況を追うことで、今の宇宙ビジネスがどのように進んでいるのか?を垣間見ることができます。
この記事を見てくれた方の中には、ニュースやSNSで次のフロンティアとして宇宙ビジネスに興味を持ち、そういった宇宙関連企業に投資してみたい、宇宙ビジネスについて知りたい、学びたい … という方もいるかもしれません。
だけど宇宙ビジネスなんて全然分からないという方に向けて、宇宙ビジネスの基本から、宇宙産業のセクター、これから注目の宇宙企業のスタートアップなどを紹介した参考図書をご紹介致します。
私自身も、2021年からピュアプレイの宇宙関連銘柄の投資を始めました。この当時、宇宙ビジネスは相場の1階部分から投資ができる魅力的なセクターとして紹介されていましたが、上記で触れたように、FRBの利上げの前では (金利が上昇するため) 宇宙関連銘柄のようなグロース株、SPAC株は無力であり、株価は高値より 10/1 ぐらいまで下落しているのが現実です。
新興の宇宙企業に興味を持ったきっかけ
私が宇宙関連銘柄に興味を持ったきっかけは、じっちゃまこと広瀬隆雄さんの YouTube Live がきっかけでした。そこで紹介されていた、SPAC 上場したばかりの宇宙企業が、ASTRA (アストラスペース /ASTR)、Rocket Lab (ロケットラボ / RKLB)、Spire Global (スパイアグローバル / SPIR)、BlackSky (ブラックスカイ / BKSY) のような、所謂 NewSpace (ニュースペース) と呼ばれる民間の新興宇宙企業です。
NewSpace とは?
NewSpace (ニュースペース) とは、民間宇宙産業の勃興を意味する。民間打ち上げ会社や宇宙開発企業など、宇宙関連ベンチャー企業の進出が盛んになっている。
SPAC の魅力は、相場の1階部分から投資することができることです。その反面、裏口上場ということできちんとした決算が出せるのか?倒産のリスクはないのか?など、かなりリスクが高くつきます。その反面、SPAC の中にも磨けば光るような原石的な企業が眠っているかもしれません …
当初は小型ロケット打ち上げ会社、観測衛星の会社など、それぞれの銘柄についての知識はボンヤリとしたものでしたが、宇宙関連の最新ニュースや、宇宙ビジネスの基礎についての本を読んで学ぶことで、宇宙ビジネスに対する知識の下地ができ、以降理解力が高まりました。
宇宙で今最も熱い場所 (低軌道) はどこなのか?宇宙ビジネスで面白いセクターはどこなのか?これから競争が加速しそうなセクターはどこなのか?それぞれの銘柄のアップサイドやリスクは何なのか?などが理解できるようになったのです。
みなさんが、どのようなタイミングで宇宙ビジネスに興味を持つかは人によって違いますので、何とも言えませんが、もし宇宙ビジネスに何かをきっかけに興味を持ったら、その対象に飛び付く前に、是非こちらで紹介する本をまずは読んでみて下さい。
順番的には、何かをきっかけに宇宙ビジネスに興味を持ったら (私の場合は、プロの投資家から話を聞いてこのセクターの未来に興味を持ちました)、その次にいきなり対象の銘柄を買うのではなく、ネットやSNSなどで最新の情報を拾いながら、必ずこちらの記事で紹介します、石田真康さんの著書『宇宙ビジネス入門 NewSpace革命の全貌』という本を読んでみて下さい。それから投資しても全然遅くないと思います。
海外では多くの宇宙ビジネスに関する素晴らしい本が出版されていますが、残念なことにそれらの多くの本が日本語に翻訳されていません。ですので、日本語で書かれた宇宙ビジネスの本は非常に少ないです。
宇宙ビジネスを学ぶ参考図書
2023年3月に打上げられた、JAXA によるH3ロケットの打上げ失敗からも分かる通り、日本の技術力が世界に比べて益々劣っています。その関係もあると思うのですが、宇宙ビジネス関連の本も基礎的なものや、新しく出版されたとしても、ネットで拾えるような宇宙ビジネスの全体像を紹介したものしかありません。
そこで今回は、まず日本語で書かれた宇宙ビジネスの基礎など全体像を垣間見ることのできる本を3冊紹介します。これらの本は、どれもコロナ前に出版された本ですので情報が古いですが、初心者が宇宙ビジネスの基礎や、参考となる事例等を学ぶことができる本だと思います。
合わせて、最新の宇宙ビジネスや企業を追った英語で書かれた最新の宇宙ビジネス関連の本もご紹介しますので、是非英語の宇宙ビジネス本も、ディスクトップの Kindle アプリ + 翻訳ツール Deeple などを使いこなして読んでみて下さい。
日本語で書かれた宇宙ビジネスのおすすめ本
『宇宙ビジネス入門 NewSpace 革命の全貌』石田真康 (著)
2017年8月31日に出版された、石田真康氏による著書『宇宙ビジネス入門 NewSpace 革命の全貌』は、宇宙ビジネスの全体像や市場のセグメント、注目の企業、宇宙関連技術など、初心者から投資家まで必要な情報を提供しています。
米国を始めとする世界中で宇宙ビジネス・イノベーションが加速し、ロケット、小型衛星コンステレーション、宇宙旅行、資源探査などのビジョンが実現し始めています。
また、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスなどの起業家が宇宙ビジネスにのめり込む背景には、ビッグデータ、人工知能、ロボティクスなどの新技術が宇宙に適用され、民間主導の宇宙ビジネスが成長していることがあります。
本書には、宇宙ビジネスの全体像、世界各国の宇宙ビジネス、日本の宇宙ビジネス、今後の可能性と課題などが詳細に解説されています。初めて宇宙ビジネスを学ぶ人や投資家におすすめの入門書です。
『宇宙ビジネスの衝撃 – 21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』大貫美鈴 (著)
2018年5月10日に出版された出版された大貫美鈴氏による『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』は、宇宙ビジネスにおいて、スペースX、グーグル、アマゾン、フェイスブックなどの大手企業が注目されていることを説明しています。
イーロンマスク率いるスペースXは特に注目すべき存在で、こうした巨大企業によって宇宙ベンチャーなどのスタートアップ企業の裾野が見えてきます。
宇宙ビジネスは、自動運転、IoT、AI、第4次産業革命、宇宙旅行、火星移住、月面開発、小惑星捕獲ミッション、通信、製造、流通、サービス、金融、医療、教育など、あらゆる産業と結びつき、私たちの生活・仕事を激変させます。
本書は、宇宙ビジネスの最前線を明かすものであり、IT企業やシリコンバレーの大手が次々と宇宙ビジネスに参入する理由や、宇宙で起こる地殻変動、そしてこれからの展開について解説しています。
TECHNOKING イーロン・マスク 奇跡を呼び込む光速経営
2021年7月20日に出版された、竹内一正氏による著書『TECHNOKING イーロン・マスク 奇跡を呼び込む光速経営』は、自由にインターネットに繋げない40億人に向けた壮大なプロジェクトとして、宇宙ビジネスのホットな市場である衛星インターネットのサービスを展開する Starlink (スターリンク) を運営するスペースXによって運営されています。
イーロン・マスク率いるスペースXは、世界的に有名な宇宙ベンチャー企業であり、自動車メーカーのテスラと並び称される存在です。この本では、イーロン・マスクの経営手法である「光速経営」が紹介されており、壮大な目標に向けた小さな努力を積み重ねていく姿勢が強調されています。その成功戦略に迫る本書は、イーロン・マスクという人物について深く知るための手掛かりとしておすすめの本です。
宇宙ベンチャーの時代~経営の視点で読む宇宙開発
2023年3月にようやく、2020年の COVID 移行に大変革を遂げた米の宇宙産業を包括的に紹介しているのが、ベンチャー・キャピタリストの小松伸多佳氏、JAXAのエンジニア後藤大亮氏による著書『宇宙ベンチャーの時代~経営の視点で読む宇宙開発』です。
宇宙ビジネスにおいても巨人とされる、イーロン・マスクの世界変革、ジェフ・ベゾスの未来設計という2つの大きな枠を軸に、ベンチャー・キャピタリストとJAXAのエンジニアという視点から「宇宙ビジネスの展望」を紹介しています。
宇宙開発の分野はこれまで政府が主導していたが、今、民間企業がイニシアティブをとった「ビジネス」として急速に生まれ変わりつつある。そして、「宇宙ベンチャー」と呼べる民間ベンチャー企業がこの流れを加速させている。
転機となったのは2021年。アメリカの起業家イーロン・マスク氏が創設したスペースXなど複数社が宇宙旅行を成功させたことで、この年は「民間宇宙ベンチャー元年」と称される。日本でも、スタートアップや宇宙系以外の大手企業が続々と参入している。
イーロン・マスク 上、下
SpaceX (スペースX)、Starlink (スターリンク) について学ぶのであれば、ウォルター・アイザックソンによるイーロン・マスクの自伝『イーロン・マスク 上、下』が格好の教材になります。
英語で書かれた最新の宇宙ビジネスのおすすめ本
残念ながら宇宙ビジネスを学ぶ知る上で欠かすことのできない多くの良書が日本語に翻訳されていないのが現状です。しかし宇宙ビジネスに興味があり、NewSpace の企業や宇宙SPAC株に投資をしてみたい、という方は以下の本を読むことをおすすめします。
・『When The Heavens Went On Sale』Ashlee Vance (著)
・『The Space Economy』Chad Anderson (著)
・『Liftoff』Eric Berger (著)
『When The Heavens Went On Sale』 Ashlee Vance (著)
Ashlee Vance 氏の著書『When the Heavens Went on Sale : 宇宙を手の届くところに置くために競争した、失敗作と天才たち』は、新たな宇宙開発競争を牽引する民間企業の魅力に迫る一冊です。本書は、Astra、Firefly、Planet Labs、Rocket Lab という4つの先駆的な企業が、何千もの低コストのロケットや衛星を軌道に打ち上げようとする様子を描いています。
ベゾスやブランソンのような億万長者が宇宙旅行への野望で注目を集める一方で、これらの企業は地球上のあらゆるものを接続、分析、監視することによって、地球の低軌道を収益化しようと取り組んでいます。
Ashlee Vance 氏は、世界中の民間企業の本社、研究所、極秘の打ち上げ場所への前例のないアクセスにより、プライベートジェット、コミューン、銃を持ったボディーガード、麻薬、スパイ調査、財産が消えても酒を飲み続ける億万長者などの痛快な記録を提示する。本書は、現代で最も緊急かつ論争の的になっているテクノロジー・ストーリー、すなわち雲の上の新しい西部劇の物語に関心を持つ人にとって必読の書です。
『The Space Economy: Capitalize on the Greatest Business Opportunity of Our Lifetime』 Chad Anderson (著)
本書は、Space Capital (スペース・キャピタル) の創設者である Chad Anderson (チャド・アンダーソン) 氏が書いた本です。翻訳すると『スペース・エコノミー : 私たちの生涯で最も大きなビジネスチャンスを生かせ』というタイトルの本で、企業、政府、消費者市場を変革する宇宙ベースの技術の可能性を理解するための強力なツールと情報を提供する本です。
Chad Anderson 氏は、宇宙経済が、ミレニアムの夜明けに誕生したインターネットよりも大きな隠れたチャンスであることを説明しています。本書では、世界規模のイノベーションに投資するための論文を作成する方法、まだ未開拓の青空のような広大な機会を特定し利用する方法、この新しい分野で成功するために必要な起業家や投資家からの教訓など、読者に貴重な洞察を提供します。
また、本書では、競争が激化する中で、世界に通用する人材を採用し、確保するための詳細なアドバイス、宇宙キャリアで必要とされるスキルと適性、最もホットな企業で採用されるためのネットワーキングのヒントも紹介しています。
さらに、本書は宇宙での起業が持つ法的、政治的、外交的な意味合いも探求しています。宇宙経済は、私たちの生涯で最大のビジネスチャンスを生かし、明るい未来をつかみたいと願うすべての人にとって、必読の書です。
『Liftoff: Elon Musk and the Desperate Early Days That Launched SpaceX』 Eric Berger (著)
Ars Technica のシニアスペースエディターである Eric Berger 氏による著書『Liftoff』は、SpaceX を作り上げたワイルドな初期の日々に読者を誘います。本書は、SpaceX と創業者のイーロン・マスクが、不安定なスタートアップから世界最先端のロケット会社へと成長した歴史的なフライトの劇的な内幕を描いています。
著者は、ファルコン1ロケットの最初の4回の打ち上げに焦点を当て、クズ同然の負け犬から航空宇宙のパイオニアになるまでの凸凹道を描いています。
Eric Berger 氏は、10年以上にわたって SpaceX を取材し、その内幕を知る上で他に類を見ないジャーナリズムを発揮してきた。本書はその集大成であり、イーロン・マスクを含む数多くの元・現役エンジニア、デザイナー、メカニック、経営陣への独占インタビューに基づくものである。この本は、SpaceX の波乱の幕開けにまつわる、これまで語られることのなかったエピソードが満載の、宇宙規模の物語であり、これまで書かれた中で最も重要な宇宙に関する本です。
最後に
2023年になって、CBOが「低高度衛星の大規模コンステレーション:入門編」という資料としては非常に優れたものが無料で公開されています。主に、衛星の基礎知識、軌道の基礎知識、人工衛星のコンステレーション、地球低軌道の大型コンステレーション、異なる軌道の衛星とコンステレーションにかかる費用などについて、非常に詳しく書かれていますので、まずはこちらで基礎をしっかりと学ばれるのも良いかもしれません。