原油・石油、液体天然ガス (LNG) などのエネルギー関連株をトレードするにあたり、ある程度マクロ環境に加え、エネルギーの歴史や、石油が私たちの経済、社会、政治にどのような影響をもたらしてきたのか?
OPECの存在や、ビッグ3と言われるアメリカ、サウジアラビア、ロシアという国々の動向、ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、エネルギー安全保障はどうなるのか? … 様々な要素を学び理解する必要があると思います。
この記事でラインナップしたエネルギー関連の本には、エネルギーの歴史から、石油の歴史、供給源、需要要因、世界の石油卸売市場で日々決定される価格などについて語られています。海外では多くのエネルギーに関する素晴らしい本が出版されていますが、残念ながら日本語に翻訳されている本は少ないと言えるでしょう。
それでも、2022年1月にようやく日本でも世界中で話題の書となった、エネルギーと地政学の決定版、ダニエル・ヤーギン氏の著書『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』が出版されました。
2020年のコロナショック以降、エネルギーと地政学を巡る動向を語る上で本書は欠かすことができません。それでは、エネルギー株のトレード、又はエネルギーに興味がある方に向けた勉強になる参考図書をご紹介します。
新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突 / ダニエル・ヤーギン
間違いなくコロナ以降にエネルギー株投資をするなら、絶対に避けては通れない本が本書です。著者のダニエル・ヤーギンは本書で、石油に関して言えば、従来は世界の石油市場において、OPEC対/非OPECという考え方があったと言います。
ビッグ3、アメリカ、サウジアラビア、ロシアという視点
しかし現在では、少なくとも私はこの本の中で、ビッグ3という観点から考えています。アメリカ、サウジアラビア、そしてロシアです。アメリカはビッグ3の中で最も大きな存在です。
なぜなら、アメリカは現在、世界最大の石油生産国であり、10年前には想像もできなかったことだからです。イランの無人機がサウジアラビアの主要な石油処理施設を攻撃しても、2~3週間後に振り返れば、ほんの一瞬の出来事で終わってしまうということなのです。
つまり、アメリカの生産量の増加によって、安全保障の計算が変わってしまったと言います。ロシアと中国に関して言えば、何年も前に冷戦の起源について初めて本を書きましたが、新たな冷戦の出現について本を書くことになるとは思っていませんでした、と。
Oil 101 / モーガン・ダウニー (著)
モーガン・ダウニーの著書『Oil 101』は、残念ながら日本版は出ていませんが、石油生産、市場、地政学に関する幅広いトピックを網羅した、情報満載の石油業界のガイドブックです。
本書は、石油のバリューチェーン全体を詳細に概観し、石油の形成、探査、生産、精製、輸送、石油の地政学などの話題を取り上げています。ダウニーの文体は明快でわかりやすく、石油産業に関する予備知識がほとんどない読者にも複雑な概念を容易に理解させる。また、本書はよく整理されており、トピックを各セクションに分け、互いに関連付けながら、読者が主題を全体的に理解できるように構成されています。
また、『Oil 101』では、石油産業の歴史的な発展を取り上げ、長年にわたって石油産業を形成してきた要因について、貴重な背景と視点を提供しています。本書は、上流の探査・生産から下流の精製・販売に至るまで、石油業界のさまざまな分野が直面する課題と機会について掘り下げて解説しています。
『Oil 101』の大きな強みは、OPECの役割や、地政学的な出来事が石油の需給や価格に与える影響など、石油市場の地政学的な側面にも言及しており、石油産業が世界の経済や政治の動きとどのように関わっているかを包括的に理解することが可能です。
世界経済における石油の役割に興味がある人など、石油業界について学びたいすべての人に強くお勧めします。本書は、複雑な石油の世界を理解するための確かな基礎を提供し、このテーマをさらに探求するための貴重な資料となることでしょう。
エネルギー400年史: 薪から石炭、石油、原子力、再生可能エネルギーまで / リチャード・ローズ (著)
人間はこの地球からどのようなエネルギー資源を見つけだし、どのように利用してきたのだろうか?発見、発明、発展、そして立ちはだかる難題…。エネルギーの変遷をめぐる「人間」たちの物語。『原子爆弾の誕生』のピュリッツァー賞作家最新作です。
エネルギーの歴史を検証する
本書『エネルギー400年史: 薪から石炭、石油、原子力、再生可能エネルギーまで』は、エネルギーの歴史をわかりやすく紹介しています。エネルギーは人類の歩みの中で特異な役割を果たしてきたが、時代とともにどのように変化してきたのか。その歴史を検証し、現在私たちが置かれているエネルギーの岐路の本質を考察しています。
かつて暖房と調理を支えた薪は石炭にその座を奪われ、石炭は石油に、そしていま、石炭・石油は天然ガス、原子力、再生可能エネルギーに取って代わられつつある。
それらの資源を利用する動力源も次々に発明された。蒸気機関、内燃機関、発電機。そして蒸気車、蒸気機関車、自動車、電車。その裏にはそれぞれを生み出し、試行錯誤し、応用し普及させた有名無名の人物の存在があった。
またエネルギー利用の普及は人びとの生活の質を上げ経済を活性化する一方で、新たな災厄や難題をももたらした。エネルギーによる利便とそれが生み出す害との狭間で、人びとは解答を求めて苦闘しつづけてきた。
そしていま、地球規模の気候変動のもと、増加しつづける巨大な人口を支えるエネルギー需要をどうすべきか。かつてない難題への答えは、過去の軌跡を詳細に検証することで見出せるのではないか――。
本書は、現在までの約400年にわたるエネルギー変遷史を「人間」の物語としてまとめあげた、ピュリッツァー賞作家による労作である。
エネルギーの人類史 (上)、(下) / バーツラフ・シュミル (著)
本書は2018年11月に The MIT Press から出版された、Vaclav Smil (ヴァーツラフ・スミル) 氏の著書『Energy and Civilization A History』です。農耕以前の採集社会から、化石燃料に支配された今日の文明まで、歴史を通じてエネルギーがどのように社会を形成してきたかを包括的に説明しています。
エネルギーは唯一の世界共通通貨
エネルギーは唯一の世界共通通貨であり、何かを成し遂げるために必要である。地球上のエネルギーの変換は、プレートテクトニクスによる地形形成から、雨粒による累積的な侵食作用まで、多岐にわたります。地球上の生命は、太陽エネルギーを光合成で植物バイオマスに変換することで成り立っている。
人類は、化石燃料から太陽光発電に至るまで、さらに多くのエネルギーの流れに依存して文明を営むようになった。ヴァーツラフ・スミルは、農業以前の採集社会から、化石燃料に依存する今日の文明まで、エネルギーがどのように社会を形成してきたかを包括的に説明する歴史的な本書で、人類を取り巻く状況を明らかにしている。
人類は、最も単純な道具から内燃機関や原子炉に至るまで、膨大な種類の人工物と知性を用いて、体外のエネルギーを系統的に利用できる唯一の種である。化石燃料への画期的な移行は、農業、産業、輸送、兵器、通信、経済、都市化、生活の質、政治、環境など、あらゆるものに影響を及ぼした。スミルは、人類のエネルギー時代をパノラマ的かつ学際的に記述し、読者に荘厳な概観を提供する。
本書は、1994年に出版された『世界史の中のエネルギー』を大幅に改訂・増補したものである。過去20年間のエネルギー研究の飛躍的な進展と、その間のスミルの研究を反映し、膨大な量の新資料を盛り込んだ。この1万年のあいだ、エネルギーを熱、光、運動へと交換する方法でのイノベーションが、文化的、経済的進展の原動力になってきた。人類の歴史は、権力闘争以上に、エネルギーのイノベーションの物語なのである。1万年をまたぐビッグ・ヒストリー。
『スター・ウォーズ』の次回作を待つように、私はスミルの新刊を待ち望んでいる。最新作の『エネルギーと文明』(原題:Energy and Civilization: 最新作『エネルギーと文明:歴史』では、エネルギーを熱、光、運動に変える人間の能力の革新が、過去1万年にわたる我々の文化と経済の進歩の原動力となったことを、深く、広く、説明している。
– ビル・ゲイツ、ゲイツ・ノート、今年のベストブック
THE WORLD FOR SALE (世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡) / ハビアー・ブラス (著)、ジャック・ファーキー (著)
ウクライナ危機の唯一の勝者ともいわれるエネルギー企業。その最たる存在が世界最大級の資源会社、グレンコアに代表されるコモディティー商社だ。本書では、スイスに本社を置く鉱山開発及び商品取引を行う多国籍企業 Glencore (グレンコア)、こちらもスイスに拠点を置く世界最大の独立系石油商社 Vitol (ビトル)、シンガポールを拠点とするフランスの多国籍商品商社 Trafigura (トラフィギュラ)、アメリカ・ミネトンカに本社を置く穀物メジャーの Cargill (カーギル) などの主要企業を含む100人以上の現役および引退した商品取引員にインタビューを行っている。
世界を裏で?牛耳るコモディティー商社に迫る
彼らコモディティー商社の存在なくしては世界の資源・穀物・金融取引、そして、国家運営さえもが成り立たない。そして彼らは、日本経済の生命線を握る石油、石炭、鉄鋼、銅、アルミ、その他金属、穀物など、天然資源、農産物取引を牛耳るグローバル資本主義の最後の冒険者でもある。
内戦下のリビアから、コンゴ、クルディスタン、イラク、キューバ、カザフスタン、中国、そしてプーチンのロシアまで。コモディティー商社のトレーダーたちは現金の詰まったブリーフケースを手に世界を飛び回り、脱法行為、賄賂も辞さず、新興国・資源国の権力者に食い込む。そしてグローバル化とスーパー・コモディティー・サイクルの波に乗って巨万の富と巨大なビジネス王朝を築き上げてきた。
だが、その歴史と実像はほとんど知られてこなかった。石油ショックから、ソ連崩壊と冷戦の終焉、中国台頭、新興国・資源ブーム、デリバティブ取引の拡大、世界金融危機に至る世界の大きな変化に、コモディティー商社はどう商機を見出してきたのか。コモディティー業界を長年徹底取材してきたジャーナリストが、その成功・失敗、驚くべき興亡の物語を、規制強化、グローバル化の減速という逆風の強まり、新型コロナ・パンデミックでの本領発揮、新世代トレーダーの登場も交え、スリラーさながらに描き出した話題の書。
世界で取引される資源の大部分は、ほんの数社によって扱われ所有されている
世界で取引される資源の大部分は、ほんの数社によって扱われ、その多くがほんの数人の人々によって所有されています。本書の著者は、彼らの影響力は経済だけにとどまらない (商品取引業者が世界の戦略的資源の流れをコントロールすることで)、強力な政治的アクターにもなっていると主張する。
汚職や悪事の話は数多くあり、投資家は知らず知らずのうちに巻き込まれている。果たして事態は変わるのだろうか?過去20年間、天然資源を取材してきたジャーナリストとして、「我々は、ほんの数人の商品取引業者に権力と影響力が集中していることに驚かされ、彼らについてほとんど知られていないことにも同様に驚かされた」と、『The World for Sale』の著者は書いています。
原油暴落の謎を解く / 岩瀬 昇 (著)
本書の見どころは、第三章「原油価格は誰が決めているか」という項目だと思います。答えは簡単で、OPECでもサウジアラビアでもなく “市場” な訳ですが、そこには先物取引が密接に関係しています。
原油価格と先物取引の密接な関係
先物取引とは、将来のある時点で商品 (ここでは原油) をある価格で取引することを約束する契約のことです。この契約は、将来の原油価格の変動に対する保険として使用されます。
原油価格が上昇すれば、原油先物取引の価格も上昇する傾向があります。これは、将来の原油価格が上昇する可能性が高くなるため、先物市場における需要が増加するからです。同様に、原油価格が下がれば、原油先物取引の価格も下がる傾向があります。
原油価格と先物取引の関係は、このように相互に影響しあっています。しかし、原油価格と先物取引の関係は常に一定ではありません。市場環境や需給関係などによって変動することもあるのです。
<内容>
世界を読み解くには原油価格の知識が必要だ!2016年年明け早々から下がり始めた原油価格は、わずか3週間の間に20ドル台まで暴落し、世界の金融市場が連鎖反応を起こして、株価までもが下落するという大パニックを引き起こしました。
世界経済に大きく影響するこの原油価格とは、一体、どのようなメカニズムで動いているのでしょうか。中東の石油王たちが裏で取引をしている?欧米の石油メジャーがそれに横やりを挟んで決定される?それとも投機筋が陰で暗躍しているのでしょうか?
『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』で、エネルギーアナリストとしての信頼を得た著者が、元商社マンの経験と最新データを駆使して、そのからくりと今後の予想に挑みます。