上記は、複雑な希少疾患の治療薬開発に特化した臨床段階のバイオテクノロジー企業 Larimar Therapeutics (ラリマー・セラピューティクス / LRMR) の直近のチャートです。
臨床段階のバイオ企業は、多くのケースでトップラインデータ (カタリスト) を発表した後に公募を発表します。しかし、その後に空白の時間ができて株価が下落しやすいのです。
そのため、臨床段階のバイオ銘柄を買いに入る場合は、ある種のタイミングを伺う必要があると思います。今回は、ラリマー・セラピューティクスの株価を参考に、臨床段階のバイオ株を買うタイミングについて解説します。
バイオ市場の近況
バイオセクターは2024年2月に怒涛の公募 (Public Offering) と第三者割当増資 (Private Placement) を行いました。株式市場にもアニマルスピリットが戻ってきており、投資家も喜んで公募に対して買い向買っていました。
しかし、3月に入り半導体が軽く下落し調整局面を迎えたことで、トップラインデータ (カタリスト) → 公募 (PIPE) のコンボで発表した臨床バイオ企業の株価は軒並み下落しています。
このように市場のセンチメントによって、2月は流行りの「データ + 公募」のコンボでも買われましたが、3月になって投資家のセンチメントが低下すると、公募になりと利確されるなど対照的な現象が起こりました。
臨床バイオ企業の株価の推移
他のバイオ株同様に、2023年10月以降に「2.18ドル」で底入れ、その後年末から翌年1月上旬に向けて「5.20ドル」に上昇、一旦利食いされて「4.09ドル」に。
2/8 頃よりカタリスト (データの発表) を嗅ぎつけた投資家によって買われました。
↓
2/12 にフリードライヒ失調症患者を対象としたNomlabofusp 25mgおよび50mgコホートの第2相用量探索試験で良好なトップラインデータを発表。このニュースにより株価は「11ドル」まで急騰。
↓
2/13 に公募増資を発表して一旦「8.63ドル」まで利食いされます。これは、公募増資を発表してもこの段階ではまだ価格が発表されていないためです。
↓
2/14 に公募増資の価格決定 (8.74ドル) を発表。この当時市場は臨床段階のバイオ企業が PIPE (公募 = Public Offering、第三者割当増資 = Private Placement) を発表しても歓迎して買い向かうアニマルスピリットが機能しており株価は上昇していました。
そのため翌日の 2/15 には「13.68ドル」まで上昇しました。しかし問題はその後、出来高が薄いまま、じわじわと株価は下落します。ある段階でバイオ専門のファンドが5%以上買いに入ったので、私もそれに追随しましたが、その後も株価は出来高が薄いまま下落し、市場のモメンタムも低下してきた、3/11 には公募価格の「8.74ドル」を下回る「8.63ドル」まで戻ってきました。
つまり、臨床段階のバイオ株は臨床データ (カタリスト) に駆動され、その勢いで公募を発表し、研究資金を補充 (延命) して臨床を継続するという流れになりますので、カタリスト+公募を発表した後に空白の時間ができ、この間に株価が弱いのです。
以下、Larimar Therapeutics と同じようなタイミングでトップラインデータを発表し、翌日に公募を発表した臨床バイオ企業のチャートです。
Janux Therapeutics (ジャナックス・セラピューティックス / JANX)
2/26 に「mCRPCにおけるPSMAxCD3-TRACTr JANX007および固形がんにおけるEGFRxCD3-TRACTr JANX008の用量漸増試験における有望な安全性および有効性データを発表」し、株価は前日の14ドル後半から51ドルまで急騰!
↓
2/27 に「普通株式の公募増資を発表」し寄り付きで「58.39ドル」まで急騰しました。
↓
その後は段々と株価は垂れていき、加熱していた相場が一旦軽い調整を迎えると 3/12 には「36.23ドル」まで下落し、そこで一旦反発したかたちになっています。
この株価が垂れてきた40ドルぐらいの位置で、ヘルスケア専門のファンドも買い増ししています。
幸福感の最中で買いに入るとお手つきに
これは正に「バイオテクノロジー株のライフサイクル投資」を説明した、バイオテクノロジー株のライフサイクルをチャートで示した “ユーフォリア (幸福感/陶酔)” のタイミング後の早い段階で買いに入ってしまったことによるお手付きのようなものかもしれません。
バイオ株の性質上、”ユーフォリア (幸福感/陶酔)” で買いに入るのは常に下落に晒される可能性があることを実感しました。このことを知っていれば、約1ヶ月前に発表した公募価格よりも下で購入することができるため、まずはここから買いに入ることができます。
ほぼ全てのバイオ株がこのように、市場のモメンタムによって公募価格を下回り、その後再び上昇するというようなチャートとなっています。