2024年4月4日、eFFECTOR Therapeutics (エフェクター・セラピューティクス / EFTR) が非小細胞肺がんを対象とした TOMIVOSERTIB と PEMBROLIZUMAB 併用療法の第2相 KICKSTART 試験のトップライン結果を発表しました。
eFFECTOR の社長兼CEOである Steve Worland 博士は次のように述べています。
本試験の実施に貢献したすべての患者、その家族、試験実施施設の専門家に心から感謝します。我々は試験データの分析を継続し、将来の医学学会で研究結果を発表したいと考えています。
tomivosertib がフロントラインNSCLCで前進しないことは残念ですが、当社のパイプラインの全資産の価値を最大化する戦略は変わりません。
と続けました。この臨床段階のバイオ株は、去年から一部の海外バイオ投資家の間で話題となっており期待されていました。私も去年から長らくロングしていたのですが、その間には資金が底をつき、株価は1ドルを割り、最終的に株式併合を行い、今回の併用療法の第2相 で無惨にも散りました …
もう一つ臨床の「ゾタチフィン」第2相のデータが2024年後半に報告される予定です。
EFTR、次のカタリスト
ゾタチフィンは、トミボセルチブとは異なる新規のメカニズムを持つ新薬候補であり、今年後半にはエストロゲン受容体陽性(ER+)乳がんを対象とした無作為化臨床試験に登録される可能性があります。
昨年のサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS®)で、PFS中央値(mPFS)と安全性データが良好な結果を得たことを踏まえ、ゾタチフィンの開発を可能な限り効率的に進めるべく、私たちの焦点はさらに研ぎ澄まされています。
ゾタチフィン・プログラムの次のステップとして、ゾタチフィンとフルベストラントおよびアベマシクリブとの併用療法について、推奨第2相用量(RP2D)を含む追加データを2024年後半に報告する予定です。
今回久しぶりにバイオ株にやられた訳ですが、1つ目から鱗の発見がありました。それが次のポストです。
コンボに賭けているのなら、それは他の薬に賭けている
$eftr はこんなに悪い結果を予想していなかったのですか?みなさん、もしある薬が単剤で効かず、コンボに賭けているのなら、それは他の薬に賭けているのです。そんな無知なことはない。基本的なことを理解していない男がまた失敗した。
この視点は残念ながら持ち合わせておらず、発見でした。あるバイオ投資家がコンボに期待できる、トリプルコンボ (PDSB) に期待できる!と言っていたのですが、この視点からすると、そもそも単剤で効かないからコンボにしてる訳で、それは他の薬に賭けているのでは?という問いかけはごもっともだと思います。
そう考えると、今回 eFFECTOR が臨床していた、TOMIVOSERTIB と PEMBROLIZUMAB 併用療法の第2相 (失敗) も、現在臨床中のゾタチフィンとフルベストラントおよびアベマシクリブとの併用療法の第2相もコンボでの臨床であり、期待値はかなり低いのではないかと思ってしまいます。
ある薬剤が単剤療法で十分な効果が得られない場合、複数の薬剤を組み合わせた併用療法が試される
この件について調べてみると、一般に、ある薬剤が単剤療法で十分な効果が得られない場合、複数の薬剤を組み合わせた併用療法が試されることがあるそうで、その目的は以下のようなことが考えられるそうです。
– 単剤では十分な有効性が得られない場合、作用機序が異なる薬剤を組み合わせることで相乗効果が期待できる。
– がん治療では、耐性化を抑えるために複数の薬剤を併用する戦略が多用される。
– 副作用のプロファイルが異なる薬剤を組み合わせることで、単剤の場合に比べ副作用が軽減される可能性がある。
– 薬剤耐性などの問題を回避するため、異なるターゲットに作用する薬剤を併用する。
つまり、初期の単剤療法の検討で期待通りの効果が得られない場合、より強力な治療効果を狙って併用療法の開発に移行するのが一般的な流れになるそうです。
他の薬剤との組み合わせで相乗効果や副作用プロファイルの改善などのメリットを期待して併用療法が試されます。この戦略が必ずしも成功するとは限らず、失敗例も多数存在します。
薬剤間の相互作用や最適な併用条件の設定など、併用療法開発にはさまざまな難しさが伴うと言います。
そもそも、eFFECTOR を保有しているバイオファンドを私は見たことがなく、その時点でも気づくべきだったのかもしれません。また、臨床段階のバイオ企業はハイリスクであり、データ等に関しては50%の確率的要素もありますので一概には言えませんが、今回の件を受けて、同じくコンボ臨床を続けている PDS Biotechnology や次回の eFFECTOR のデータ等がどうなって来るのか?は注目したいと思います。
PDSB は、3剤併用療法に後期臨床戦略の重点を置く
PDS Biotechnology (PDSバイオテック / PDSB) は、進行頭頸部がんを対象とした「PDS01ADC」、「PDS0101(バーサムネ® HPV)」、KEYTRUDA ®の3剤併用療法に後期臨床戦略の重点を置く。
再発性転移性HPV+頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)におけるアンメット・メディカル・ニーズの急速な高まりに最初に取り組むことで、「PDS01ADC」と「Versamune® HPV」の当社独自の併用療法が、革新的な腫瘍学的治療として急速に確立されると強く確信しています。
データから、この3剤併用療法は、現在有効な治療オプションがない患者の全生存率を大幅に改善する可能性があることが示唆されています。また、持続的な腫瘍縮小や全奏効の割合も大幅に増加する可能性があります。
今回 eFFECTOR の臨床失敗で、ある程度バイアスがかかってしまっている可能性もありますが、今現在言えることとすれば、併用療法とバイオファンドが持っていない臨床バイオ銘柄は、ハイリスクな中でも更にリスクが高いと言えるのかもしれません。もちろんその逆で、だからこそ成功すれな10倍になる可能性も持ち合わせていると思うのですが …
薬のコンボや併用療法臨床の成功事例
では実際に過去に、薬のコンボや併用療法臨床試験での成功事例というのは存在するのでしょうか?調べてみると、次のような成功例があるようです。
・悪性黒色腫治療における免疫checkpoint阻害薬とBRAF阻害薬の併用
悪性黒色腫で単剤では十分な効果が得られないBRAF阻害薬と免疫checkpoint阻害薬の併用が承認されており、大幅な予後改善が認められています。
・肺がん治療における免疫checkpoint阻害薬と化学療法の併用
非小細胞肺がんにおいて、免疫checkpoint阻害薬と化学療法の併用が標準治療として確立されています。相乗効果により、単剤での治療よりも優れた成績が得られています。
・HIV治療における抗HIV薬の多剤併用療法
HIVの多剤併用療法は、1剤ではすぐに耐性が出る問題を克服し、著効が得られています。これにより、かつては致死的だったHIV感染症が慢性疾患として管理できるようになりました。
このように、作用機序の異なる薬剤を組み合わせることで相乗効果が発揮され、がんやウイルス感染症などの難治性疾患の治療法に寄与してきました。ただし、個々の疾患や薬剤特性に応じた最適な併用条件の探索が重要です。
このような成功例から、薬のコンボや併用療法は必ずしもリスクが高い!ということではないようです。治療領域によっては、薬の併用が行われており成功例もあるようです。
この観点からすると、PDSB が取り組もうとしている、3剤併用療法のフェーズ3も可能性がまだあるものだと思います。