Zoomy

FDAによる医薬品承認後、好材料にもかかわらず株価はなぜ下落するのか?

バイオテクノロジーや製薬業界では珍しくない現象で、FDAによる医薬品承認後、好材料にもかかわらず株価が下落することがある。これは、がん治療 (オンコロジー) のようなニーズと市場の大きな領域でも起こり得ることで、直感に反するように思えるかもしれない。

今回は、カタリストとなる PDUFA (Prescription Drugs User Fee Act) イベントで、FDAによる医薬品承認されたにも関わらず株価がなぜ下落するのか?について考察します。

市場の地合い (センチメント)

まず大きな要因となるのが、市場の地合いです。例えば、市場が好況でみんなが買い上がってるような環境であれば、FDAによる医薬品承認というニュースは、大きな買い材料となり買われ、株価は上昇する傾向にあります。

一方で、市場が調整している時や、市場環境が悪いと材料出尽くしとなり、利確売りや、短期勢の売りになり、株価が下落することがあります。市場の地合いはコントロールすることができないため、都度地合いに合わせてプレイするしかありません。

基本的に、市場全体のセンチメントやセクター固有の問題が、個別銘柄の業績に影を落とすことは良くありますので、そのことを理解した上でトレードするスキルは必須です。

理想買い、現実売り

次にあげられるのが相場の格言にある、「理想買い、現実売り」です。これは市場において何でも言えることだと思いますが、「噂を買って、ニュースを売る」というのは、投資家の基本動作です。

FDAによる医薬品承認されたにも関わらず株価下落する件に当てはめると、投資家はすでに承認を予期し、実際に承認される前に株価の上昇につながる株を買っていたかもしれない。承認が発表されると、これらの投資家は利益を実現するために株式を売却し、株価の下落につながる可能性がある。

市場の期待

時には、承認自体が高い期待から株価に織り込まれていることもあり、実際のニュースは、使用制限やさらなる研究の必要性など、FDAからの追加コメントかもしれない。

資本ニーズ

FDAによる承認後、企業が医薬品を上市するには多額の資金が必要となることが多いです。そのため、企業がさらに資金を調達する必要がある場合、希薄化に対する懸念が生じる可能性があります。

収益性への懸念

FDAの承認が下りても、市場での成功、償還水準、実際の販売実績が不透明な場合があり、これらはすべて企業の評価に影響を与える可能性があります。つまり、FDA承認の後の流れも重要であるということです。

FDA承認後の株価の推移についての実例

上記のチャートは、2024年2月16日にFDA承認された Iovance Biotherapeutics (IOVA) の承認後の株価のチャートです。年内3回の利下げを期待していた2月の相場は、投資家のアニマルスピリットが市場に戻ってきており、相場は絶好調でした。

IOVA がFDA承認された後、株価は9ドルから13ドル後半ぐらいまで急騰、その後好調な相場環境に押されて18ドルを超えました (①の部分)。しかし年初から上げ過ぎた市場はイスラエルによるイラク攻撃、原油高、インフレ懸念などの材料から相場の雲行きは怪しくなり、3月から4月にかけて調整します。

IOVA も②のように、3月中旬に一度バウンスするものの、市場環境は悪化し、4月下旬の③のように11ドル台まで売られました。ある程度市場が調整した4月下旬より買いが入り、5月の雇用統計悪化の Bad News is Good News で④のように株価は持ち直しています。

銘柄によってポテンシャルが異なるため、全てが一緒とは言えませんが、IOVA の例だと2月の市場が好調の時にFDA承認された (IOVA という銘柄のポテンシャルも高い) ことから株価はブーストしましたが、市場が悪化して調整を迎えると18ドルから11ドルまで売られたことになります。