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臨床バイオ企業による第三者割当増資とは?

臨床バイオ企業による第三者割当増資とは?

2023年夏に利上げが終了し、同年12月以降バイオセクターは大きく反発し、2024年1月〜2月下旬にかけてバイオセクターは大きき回復しました。2024年2月に入ると、多くの臨床バイオ企業で公募増資や第三者割当増資が発表され、バイオファンド、ライフサイエンス機関投資家による積極的な参加が続いています。

2月以降は個人投資家も公募・第三者割当増資を発表したバイオ企業の株式を買い向かい株価は上昇を続けましたが、3月を過ぎたあたりから市場環境が悪化すると、公募・第三者割当増資で上昇した分を全部戻すような銘柄も多く出てきており、公募前の価格を下回る銘柄も散見されています。

今回は、このように臨床バイオ企業の第三者割当増資にバイオファンドが参加するメリットについて、また公募と第三者割当増資の違いについて確認していきたいと思います。

バイオ専門ファンドが参加するメリット

バイオ専門のファンドは通常、業界の専門知識を持っています。これにより、投資先の企業に対して、事業戦略の策定や臨床開発のアドバイスを提供することができます。これは、技術的な詳細や規制の複雑さを理解しているため、特に新しい治療法や技術の商業化を目指すバイオテクノロジー企業にとって大きな利点となります。

専門ファンドは業界内外の広範なネットワークを持っていることが多いです。これにより、パートナーシップ、追加資金調達、さらには将来的な買収や事業売却のチャンスを提供することが可能です。

バイオ専門の投資ファンドが支持することで、他の投資家やパートナー企業に対してそのバイオ企業が信頼できるという印象を与えます。これは特に、新興企業やまだ市場で確固たる地位を築いていない企業にとって重要です。

第三者割当増資と市場での公募増資の違い

第三者割当増資は、特定の投資家や投資家グループに向けて新株を発行する方法です。これに対して、市場での公募増資は、一般の投資家に対して株式を公開募集する形式をとります。

ス第三者割当増資は比較的迅速に資金を調達することができ、条件や価格などを交渉によって柔軟に設定することが可能です。一方、公募増資はより多くの手続きや規制が関わるため、時間がかかります。

公募増資は大規模な資金調達に適しており、多数の投資家から広く資金を集めることが可能です。第三者割当増資は比較的小規模ながら、特定の戦略的投資家から資金を得ることができます。

以上のように、第三者割当増資は特定の戦略的パートナーから資金を調達するのに適しており、その過程で専門的なアドバイスや業界内のネットワークを活用することが可能です。

一方で、市場での公募増資は広い範囲の投資家から大量の資金を集めることに焦点を当てています。

第三者割当増資を発表した後、バイオファンドはいつ買っているのか?

実際に、Surrozen (SRZN) というバイオ企業が2024年4月1日にプレスリリースした第三者割当増資のニュース「Surrozen、ナスダックルールに基づく市場価格による最大1億9250万ドルの第三者割当増資を発表」を元にご説明します。

このニュースには、次のように記載されています。

組織の修復と再生のためにWnt経路を選択的に活性化する標的治療薬のパイオニア企業である Surrozen, Inc.普通株式購入ワラントが全額行使された場合、この第三者割当増資は約1億9,250万ドルの総収入となり、約1,220万株の普通株式が発行されることになる。この第三者割当増資は、ナスダック・ストック・マーケットLLCの規則および規制の下、「アット・ザ・マーケット」で価格が決定された。この第三者割当増資は、慣例的な完了条件に従い、2024年4月4日頃に完了する予定です。

この第三者割当増資には、他のライフサイエンス投資家に加え、RA Capital Management、The Column Group、Nantahala Capital、Stonepine Capital Management、StemPoint Capital など、新規および既存の投資家が参加しています。

例えば、Surrozen の第三者割当増資に参加したバイオファンド RA Capital は、2024年4月15日に 13G Filing を提出し、その詳細を調べると同年4月4日に株式を購入したことが記載されています。

このように、臨床バイオ企業の第三者割当増資に参加したバイオファンドは、第三者割当増資の決められた期日に沿って買いを入れているものだと思います。つまり、Surrozen の第三者割当増資のプレスリリースは4月1日に発表されましたが、第三者割当増資に参加したバイオファンドの RA Capital は、発表後に材料が出尽くしとなり下落したタイミングで数日経ってから買いを入れたことになるのではないか?と思います。

第三者割当増資を発表した後の株価

臨床バイオ企業が第三者割当増資を発表した後、市場環境が良い時は株価は上がりやすい傾向にあります。しかし、市場環境が悪化すると、実際に2024年3月以降は、金利の上昇、インフレ再燃、地政学リスク、利下げ期待の低下により、直近発表された公募増資・第三者割当増資で上昇した分を全て戻すような銘柄が結構ありました。

今回は、相場が良い時に第三者割当増資後に、株価が上昇しやすい理由について考えてみたいと思います。

信頼の向上

特定の投資家や機関投資家が第三者割当増資に参加することは、市場にその企業への信頼を示すサインとなります。特に、その投資家が業界での評判が良い場合、他の投資家や市場参加者に対してポジティブな影響を与えることがあります。

資金調達による潜在能力の拡大

増資によって得られる資金は、臨床試験の進行、新薬の開発、製造能力の拡張など、企業の成長戦略を推進するために使用されることが多いです。これにより、企業が将来的に更なる成長を遂げる可能性が高まると市場が判断すれば、株価は上昇します。

財務 (キャッシュ) の安定化

新たに調達した資金が企業の財務状況を改善することで、リスクが減少し、投資の魅力が高まります。特にバイオテクノロジー企業では、資金繰りが厳しいことが多いため、安定した財務基盤は企業価値の向上に直結します。

市場の期待感の増加

第三者割当増資が、特に進行中のプロジェクトや新技術に対する資金提供である場合、市場はそのプロジェクトや技術の成功に対する期待を高めることがあります。投資家がその企業の将来性に期待すると、株価は上昇する傾向があります。

これらの要因が組み合わさることで、臨床バイオ企業が第三者割当増資を発表した際に株価が上昇することがあります。ただし、これは常に当てはまるわけではなく、市場の状況や企業の具体的な状況によって異なる場合があります。