Tempus AI (テンパスAI / TEM) と Personalis (パーソナリス / PSNL) がもたらす、がん治療の未来について考えてみたいと思います。現在 BtoC 向けのゲノム診断は急速な進化と成長を迎えており、先行する Natera(NTRA)を始めとする、GeneDx(WGS)、GRAIL(GRAL)と素晴らしい業績と市場の拡大を続けています。
そして次に期待されるのが BtoB の領域であり、この領域に位置するのが Tempus AI と Personalise というバイオ企業です。両者は既に戦略的提携を進めており、Tempus AI x Personalise による人工知能とゲノムデータを組み合わせは、個別化がん治療に革命をもたらすかもしれません。
Tempus AI と言えば、直近ではペロシ・プレイとして有名であり、IPO後のロックアップを経て再び株価はフィーバーしています。今回は、この Tempus AI と Personalis の戦略的な提携がもたらす「がん治療の未来」、「がん治療革命」についての考察になります。
がん治療の未来
まずは、Tempus AI と Personalis のビジョンについて理解するために、海外の投資家による次のポストをご紹介します。
$PSNL $TEM – The Future of Cancer Treatment is coming!
Big Pharma is harnessing Tempus AI ($TEM) data and Personalis ($PSNL) diagnostics to develop personalized cancer vaccines. This isn't science fiction—it’s happening NOW. The potential? Infinite dollars.
As Larry Ellison… pic.twitter.com/YiID7NxuSE
— J Keynes (@JKeynesIonQ) February 21, 2025
大手製薬会社は Tempus AI のデータと Personalis の診断を活用して、個別化がんワクチンを開発しています。これはSFの世界の話ではなく、今まさに起こっていることです。その潜在的可能性は?無限のドルです。
オラクルのラリー・エリソンが語ったこと
$ORCL Ellison sees AI transforming healthcare — here’s how 👇
• $TEM — Platform Powering Precision Medicine
• $PSNL – Decoding Genomes
• $RXRX — AI-Driven Drug Discovery
• $SDGR — AI-Driven Drug Design
• $ABCL — The AI Hunter for Antibodiespic.twitter.com/SiiT3esdVm— Shay Boloor (@StockSavvyShay) January 23, 2025
ホワイトハウスの記者会見で、オラクル会長のラリー・エリソン氏は、癌の検出と治療における人工知能(AI)の変革の可能性について語りました。
同氏は、腫瘍の微小な断片が血流に循環しているため、簡単な血液検査で癌の早期発見が可能であると説明しました。AIはこれらの検査を分析し、生命を脅かす癌を特定することができます。
腫瘍の遺伝子配列が決定されれば、その個人特有のがんを標的とした、個別化されたmRNAワクチンを設計し、ロボットによって約48時間以内に製造することが可能になります。
このアプローチは、AIを活用してカスタマイズされたがんワクチンの迅速な開発を可能にし、個別化医療の大きな進歩となります。
未来の医療を提供する企業はどこ?
考えてみてください。AIと遺伝子データにより、2日で個別化されたmRNAがんワクチンの開発が可能になる可能性があるのです。これが未来の医療です。この技術を提供する企業はどこでしょうか?
Moderna (モデルナ / MRNA) と Pfizer (ファイザー / PFE) だけではありません。Tempus AI & Personalis です!
Personalis と Moderna の提携
Personalis と Moderna は、mRNAベースの個別化がんワクチンの開発を促進するための提携関係を構築しました。この提携は、Merck (メルク) と共同開発中の Moderna の個別化ネオ抗原療法候補薬V940/mRNA-4157の開発における Personalis の「ImmunoID NeXT Platform®」の利用に重点を置いています。
2023年2月、Personalis と Moderna は、V940/mRNA-4157の今後の臨床試験で「ImmunoID NeXT Platform®」を使用する契約を締結しました。
このプラットフォームは、患者の腫瘍サンプルからゲノム情報を配列決定し、個別化された抗腫瘍反応を引き起こす可能性が高いユニークな遺伝子変異を特定します。
2024年12月、複数年契約により提携が延長され、V940/mRNA-4157の継続的な開発に Personalise の技術を活用するという取り組みが再確認されました。
この提携は、高度なゲノムシーケンスとmRNAワクチン技術を活用し、個別化されたがん治療を開発することを目的としている。これにより、各患者の腫瘍プロファイルに合わせた治療が可能となり、がん治療が大きく変わる可能性がある。
Personalis の超深度ゲノムシーケンス
Personalis は、腫瘍のDNAとRNAをこれまでにないレベルで分析するための超深度ゲノムシーケンスを提供することで、この革命において重要な役割を果たしています。
同社の技術は、まれな変異を検出し、ネオ抗原(独特な腫瘍マーカー)を特定し、腫瘍の進化をリアルタイムで監視することを可能にします。
このデータは、個別化された癌ワクチン開発の青写真となり、バイオテクノロジー企業が各患者の独特な癌プロファイルを正確に標的とする治療法を開発することを可能にします。
個別化がんワクチンの設計図
Personalis のシーケンスプラットフォームで生成された包括的なデータは、個別化がんワクチンの開発における設計図となります。
個人の腫瘍に特有のネオ抗原を正確に特定することで、がん細胞を標的とした強力な免疫反応を引き起こすよう、これらのワクチンを設計することができます。
このようにワクチンを精密に設計することで、各患者のがんに合わせた効果的な免疫療法の可能性が高まります。
Tempus AI とのコラボ、同社が Personalis の株式20%を保有する理由
Tempus AI は、同社のAIおよびデータ製品の一部として、この能力に深い関心を寄せています。同社は、Personalise のシーケンスに関する知見を、より広範な診断および予測データセットに統合しています。
Tempus AI は、この情報をAI駆動型のプラットフォームを通じて利用可能かつアクセス可能にすることで、これらの画期的な技術が他の最先端の腫瘍学ツールとシームレスに連携し、かつてないほど精密医療を加速することを保証します。
これが、Tempus AI が Personalise の20%の株式を所有する理由です。他にも Merck が Personalise の支援しており、同社の株式の16.5%を所有しています。
Tempus AI と Personalis 提携の拡大
Tempus AI と Personalis は、超高感度微小残存病変(MRD)検査を通じて個別化がん医療を推進するための戦略的提携関係を構築しました。
2024年8月、この提携関係は拡大し、Tempus AI は既存のワラントを行使し、追加株式を購入することで Personalis に約3600万ドルを投資しました。この投資により、Tempus AI は Personalis の発行済普通株式の約19.3%を所有することになりました。
この提携により、Personalis の高度なゲノム配列決定技術と Tempus AI のAI駆動型データ分析を活用し、腫瘍由来の微小残存病変(MRD)検査である「NeXT Personal® Dx」の開発と商業化が進められます。
この検査は、乳がんや肺がんに重点を置き、固形がん全般にわたる免疫療法のモニタリングとともに、がん患者における分子レベルの微小残存病変の検出と再発のモニタリングを目的としています。
Tempus AI による多額の投資は、個別化されたがん診断と治療オプションの向上に対する同社の取り組みを裏付けるものです。同社は、Personalise に相当な株式を保有することで、この提携の成功に財務的な利害を一致させ、「NeXT Personal® Dx」の成長と商業化から潜在的利益を得る可能性があります。
この戦略的動きはまた、Tempus AI が提携の方向性に影響を与える立場に立つことを意味し、MRD検査の開発と展開が同社の事業目標と、より広範な目標である精密腫瘍学の進歩に一致することを保証します。
Merck の支援
2024年12月、Merck は私募で Personalise の普通株式5000万ドルを購入することで合意し、約16.5%の株式を取得しました。この投資は、Personalise の技術とがん治療を変革する可能性に対する Merck の自信を裏付けるものです。
ヘルスケア革命の入り口
私たちは今、ヘルスケア革命の入り口に立っています。この2社は、大手製薬会社ががん治療に必要とするイノベーションをリードしています。ラリー・エリソンは、まさに今起こっていることを率直に語ってくれました。Tempus AI と Personalise に強気!
余談・雑感
ここまで海外の投資家のポストを紹介しつつ、ポイントとなる箇所を付け足しました。直近の BtoC 向けのゲノム検査を提供するバイオ企業から出てくる数字はかなり良いものが多いです。
レジェンド、スタンレー・ドラッケンミラーが大分前からトップポジションとして保有している Natera も株価に目を見張るものがありますし、SPAC 上場 1/33 の株式併合を経て復活を果たした GeneDx の現在の株価を見ると、この分野がトレンドであることが分かります。
私はコロナ禍に ARK 経由などで話題になったゲノム検査に興味を持ち、当時話題になった Invitae、そして Personalise に投資していました。一時期相場となったこともありましたが、その後の値動きはみなさんが知る通りであり、Invitae の方は破産しました。
そして、今再び Tempus AI と提携している Personalise に興味を持った次第です。同社が2024年12月16日に発表したニュース「Personalis と Tempus AI、バイオファーマへの提携を拡大」に気になる記述があります。
診断薬市場からの好意的な反応を受け、両社はバイオ医薬品業界への関係拡大に合意しました。
この関係拡大により、Tempus AI は、MRD検査と Tempus が提供する他の検査をバンドルすることを希望する製薬企業やバイオテクノロジー企業に対し、Personalis のNeXT Personal MRD製品を提供することが可能になります。
また Personalis のクリス・ホール最高経営責任者(CEO)は、次のように述べています。
当社はすでにバイオファーマ・チャネルを通じて「NeXT Personal」を提供していますが、「NeXT Personal」と他の Tempus AI 製品との組み合わせを希望するバイオファーマのお客様のために、Tempus AI の統合プラットフォームを活用できることを嬉しく思います。
当社は、Tempus AI との関係拡大により、当社の最先端の超高感度MRDプラットフォームの市場浸透が加速し、この機会をより有効に活用できるようになると確信しています。
もしかすると、Q4でこの Personalis と Tempus AI の提携によるシナジー効果が確認できるのかもしれません。丁度、Tempus AI は 2/24 に決算を発表しますので注目です (Personalise は 2/26 決算のようです)。
引き続き Personalise と Tempus AI による戦略的提携の動向、サービス拡張の動向など、Personalise の技術的ブレイクの兆しを観察したいと思っています。
似てるシリーズで少し気になるのが、改名前の GeneDx (Sema4) が OPKO Health からゲノム検査/分析のリーダー企業である GeneDx を買収したことで、変革を遂げ今の復活劇があるように、Personalise と Tempus AI が組むことによって変革が起きているのか!?注目したいと思います。