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世界最先端のAIを活用した診断プラットフォーム Tempus AI とは?

世界最先端のAIを活用した診断プラットフォーム Tempus AI とは?

Tempus AI(ティッカー: TEM)は、「世界最先端のAIを活用した診断プラットフォーム」を構築しているバイオテクノロジー企業です。

Tempus AI は、他に類を見ないデータ収集ネットワークを構築していることです。現在、2,500以上の医療機関と提携し、リアルタイムで臨床データ、分子データ、画像データを収集しており、何百万人ものがん患者のデータを蓄積しています。

これは、競争優位性(モート)を形成する可能性がある要素です。ウォーレン・バフェットは「モートを持つ企業は市場で勝ち残る」と語っていますが、Tempus はまさにその条件を満たしているかもしれません。

彼らのデータ収集能力は、単なる企業努力ではなく、ネットワーク効果や無形資産といった形で、競争を回避する強みになり得ます。

実際、Tempus は米国の全学術医療機関の65%以上、また米国の腫瘍専門医の50%以上と連携し、大量のデータを収集しています。その規模は、8.5百万件の臨床記録、1.2百万件の医療画像記録、何十万件ものDNAおよびRNAプロファイルに及びます。

このデータをAIで解析することで、新しい治療法の発見や、より正確な診断が可能になる可能性があります。

Tempus AI のビジネスモデル

Tempus AI の収益源は主に3つのセグメントから成り立っています。

1.診断検査(ゲノミクス)
2.ライセンス提供と分析ツール(データ)
3.アプリケーション開発

現在、主な収益の大部分は「ゲノミクス」と「データ」の2つのセグメントから生まれています。

ゲノミクス(遺伝子解析)の価値

賢明な投資家たちは、医療分野におけるゲノミクスの重要性について長年議論してきました。その核心は「検査」にあります。

具体的には、次のような診断テストを行います。

・患者ががんを発症しているかを特定する
・遺伝的にがんのリスクが高いかどうかを分析する
・治療中のがん患者の進行状況を追跡する
・がんの遺伝的特徴(シグネチャー)を解析する
・治療が成功した後もモニタリングを継続し、再発を防ぐ

がん治療においては、発症後の高度な治療よりも、早期診断と予防がはるかに重要です。著名な投資家アンディ・ケスラーも指摘していますが、医療費の削減には「画期的な治療法の開発」よりも「より良い検査・診断システムの確立」が鍵となります。

早期発見できれば、治療コストは抑えられ、患者の生存率も向上します。例えば、がんを「ステージ4」になってから治療するのではなく、「ステージ1」の段階で発見し、適切な処置を行うことで、よりシンプルかつ効果的な医療が提供できます。

そのため、Tempus AIが構築している診断ネットワークは、単なる「検査会社」以上の価値を持っています。実際、同社の検査件数は急成長しており、2019年の4万件から2023年には20万件以上に増加しています。

Tempus AI の成長とデータ事業の価値

Tempus AI は急成長を遂げています。2024年には成長率が20%程度に落ち着いていますが、それでも高い成長を維持しています。診断テストの件数が大幅に増加しているだけでなく、1件あたりの収益も増加しています。2019年には1件あたり600ドルだった収益が、現在では1,500ドル以上にまで上昇しており、2倍以上の成長を遂げています。

同社のビジネスは大きく「ゲノミクス(遺伝子解析)」と「データ」の2つのセグメントに分かれますが、特にデータ事業には大きな可能性があると考えられます。

画像データをライセンス提供

Tempus は、匿名化した患者の臨床データ、分子データ、画像データをライセンス提供し、製薬会社やバイオテクノロジー企業向けに高度な分析ツールを提供しています。現在、世界の大手製薬企業20社のうち19社が Tempus のデータをライセンス契約しており、これらの契約の価値は今後の四半期で9億ドルを超える見込みです。

このデータの価値を示すサインとして、契約済みの売上がすでに大きく積み上がっている点が挙げられます。これは、同社が構築している競争優位性(モート)の強さを示しており、市場の評価が高まる要因となっています。製薬企業にとって、このデータは新薬の開発や治療の個別最適化に極めて重要です。例えば、特定の遺伝的プロファイルを持つ患者に最適な治療法を特定したり、治療の有効性や副作用の傾向を事前に把握することが可能になります。

AI の活用

AI の活用も Tempus の強みのひとつです。従来であれば数カ月かかるような膨大なデータ分析を、AIを活用することで数分で完了できるようになります。特定のキーワードだけでなく、文脈を理解しながらデータを解析することで、より的確な予測や治療方針の提案が可能になります。製薬企業にとって、これは大きなコスト削減と研究開発の効率向上につながるため、Tempus のデータは極めて価値の高い資産と言えるでしょう。

Tempus はすでに9億ドル以上の売上を確保しているだけでなく、顧客のリテンション率(継続率)も非常に高く、125%以上の成長を記録しています。これは、既存顧客が前年よりも25%以上多くの料金を支払っていることを示しており、データ事業の価値が年々高まっている証拠です。

財務状況と収益構造

Tempus AIの事業は急速に成長しており、第3四半期の売上は1億8,000万ドルに達しています。これは、単なるミーム株や過剰評価された企業ではなく、実際の収益を生み出しているビジネスであることを示しています。

売上の大半は「ゲノミクス(遺伝子解析)」と「診断テスト」事業からのもので、1億1,600万ドルを占めています。これは前年比で成長しており、特にデータ事業の成長が著しいです。データとサービス部門の売上は4,000万ドルから6,500万ドルへと急増しました。

収益性の観点でも、ゲノミクス事業の利益率は約50%でやや低下しているものの、データ事業の利益率は約77%と非常に高い水準を維持しています。このデータ事業こそが、今後の成長を牽引する主要な要因となると考えられます。

Tempus の成長戦略として、診断テストの価格を引き下げることで普及を促進し、より多くのデータを蓄積することで、データ事業の価値をさらに高めていく可能性があります。最終的に、診断テストは利益を追求するよりも、データ収集の手段として位置付けられ、長期的にはデータ事業が企業価値の大部分を占めるようになるかもしれません。

現在のところ、Tempus は依然としてキャッシュフローがマイナスの状態であり、利益を上げていないものの、急速な成長を続けていることから、将来的には黒字化の可能性も十分に考えられます。

Ambry Genetics の買収

Tempus AIは、最近「Ambry Genetics」という大手遺伝子検査ラボを買収しました。Ambryは、がん・神経疾患・心疾患向けの診断プラットフォームを持つ企業であり、この買収により Tempus はさらに強力なデータ基盤を確立することができます。

この買収が重要な理由は、Ambry が年間40万人以上の患者データを生成している点にあります。これは Tempus のデータモート(競争優位性の基盤)をさらに強固なものにし、将来的な事業成長の柱となる可能性があります。

さらに、この買収により Tempus は小児医療、希少疾患、心疾患、生殖医療、免疫学といった新たなカテゴリーにも参入できるようになります。これまで主にがん領域に特化していた Tempus のビジネスが、より幅広い医療分野へと拡大することになり、長期的な成長の可能性がさらに高まりました。

Tempus AI と Personalis の提携について

Personalis「NeXT Personal®」全ゲノムベースの腫瘍情報プラットフォーム

Tempus AI と Personalis は、がん患者の治療管理を強化するため、超高感度の微小残存病変(MRD)検査の提供に向けて協力関係を築いています。2023年11月、両社は提携を開始し、Personalis の腫瘍情報に基づく全ゲノム液体生検アッセイ「NeXT Personal Dx」を、Tempus が独占的な商業診断パートナーとして提供することとなりました。

この提携により、Tempus は「NeXT Personal Dx」を自社の検査メニューに組み込み、腫瘍学者に提供しています。さらに、2024年12月には提携を拡大し、製薬およびバイオテクノロジー企業向けにもMRD検査を提供することとなりました。

この協力関係の強化に伴い、Tempus は Personalis に約3,600万ドルの投資を行い、Personalis の発行済み普通株式の約19.3%を保有することとなりました。この提携により、両社はがん患者の治療管理を向上させるための高度なMRD検査の提供を目指しています。