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DMDの治療薬で注目を集めるバイオ企業 Sarepta Therapeutics の成長ストーリー

DMDの治療薬で注目を集めるバイオ企業 Sarepta Therapeutics の成長ストーリー

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬開発で注目を集めているバイオ企業 Sarepta Therapeutics (サレプタ・セラピューティクス / SRPT) の成長ストーリーについて重要なターニングポイントを起点にご紹介します。

Sarepta Therapeutics の成長ストーリー

Sarepta Therapeutics は、2024年6月20日に米国FDAによる、DMDの初の遺伝子治療薬「ELEVIDYS (エレビジス)」の4歳以上のデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者への拡大承認を発表し、大きな話題となりました。

エレビディス (delandistrogene moxeparvovec-rokl) は単回投与です、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースの遺伝子導入療法で、骨格筋における ELEVIDYS マイクロジストロフィンの標的産生をコードする導入遺伝子を投与することにより、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの根本的な遺伝的原因であるジストロフィンタンパク質の欠損をもたらすDMD遺伝子の変異や変化に対処することを目的としています。

2000年代初頭: エクソンスキッピング技術の開発

Sarepta は、DMDの原因となる遺伝子変異を「スキップ」させる革新的な技術を開発しました。これが同社の主要な技術基盤となりました。正に Sarepta のこのエクソンスキッピング技術から始め、遺伝子治療へと段階的に技術を発展させた成長軌道の原点と言えます。

エクソンスキッピング療法は、筋肉の中でジストロフィンを作らせる治療法です。 エクソンスキッピング剤を筋細胞の核内で作用させ、ジストロフィンmRNA前駆体の変異が起きている場所に隣接した特定のエクソンを認識させない(スキップさせる)ように促すことで、隣り合ったエクソン同士をつなげ、ジストロフィンを作らせます。

2016年: エテプリルセンの開発と承認

Sarepta の最初のDMD治療薬エテプリルセン(商品名:Exondys 51)が、FDAから迅速承認を受けました。これは画期的な出来事で、DMD患者に新たな治療の希望をもたらしました。

2019年: ゴロディルセンの承認

2番目のDMD治療薬ゴロディルセン (商品名:Vyondys 53) がFDAの承認を受けました。これにより、Sarepta は複数の製品を持つバイオ企業となりました。

2020年: カシメルセンの承認

3番目のDMD治療薬カシメルセン (商品名:Amondys 45) がFDAの承認を受け、Sarepta の製品ポートフォリオがさらに拡大しました。

Amondys 45 は、エクソン45をスキップすることで治療可能なジストロフィン遺伝子の変異が確認されたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者の治療に使用される。

本適応症は、Amondys 45 による治療を受けた患者で観察された骨格筋におけるジストロフィン産生の増加に基づき、早期承認のもとで承認されています。本適応症の承認継続は、確認試験における臨床的有用性の検証を条件とする場合があります。

2017年以降: 遺伝子治療プログラムの進展

Sarepta は、より効果的なDMD治療を目指して遺伝子治療プログラムを開始しました。この新しいアプローチは、投資家から大きな期待を集めました。

2018年以降: 複数のパートナーシップ

2018年10月には、Lysogene との提携。ムコ多糖症IIIA(サンフィリッポ症候群A型)の遺伝子治療プログラムLYS-SAF302について提携しました。

2019年12月には、Roche との提携。Sarepta は、DMD遺伝子治療候補SRP-9001の商業化権をRocheに付与する契約を結びました。この取引には12億ドルの前払い金が含まれていました。

2020年以降: SRP-9001の有望な臨床試験結果

同社の主要な遺伝子治療候補薬「SRP-9001」の臨床試験で、有望な結果が報告されました。これにより、Sarepta の将来性に対する期待が高まりました。「SRP-9001」は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療薬。

2023年: SRP-9001のFDA承認申請

「SRP-9001」の生物学的製剤承認申請(BLA)をFDAに提出しました。これは、同社の遺伝子治療プログラムにおける重要なマイルストーンとなりました。

2024年: FDAによる ELEVIDYS の拡大承認

米国FDAによる ELEVIDYS (エレビジス / 一般名:delandistrogene moxeparvovec-rokl) の適応拡大について、DMD遺伝子の変異が確認された4歳以上のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者を含めることを承認したと発表しました。

Sarepta の成長曲線

これらのターニングポイントを通じて、Sarepta は以下のような成長を遂げました。

– 革新的な技術基盤 (エクソンスキッピング技術) の確立
– 複数の承認済み製品の獲得
– FDAとの緊密な協力により、迅速承認を獲得
– 戦略的パートナーシップ
– 患者コミュニティとの強い関係構築
– 収益の増加と財務状況の改善
– 遺伝子治療分野でのリーダーシップの確立
– 投資家からの信頼獲得と株価の上昇

Sarepta の成功は、継続的なイノベーション、規制当局との効果的な協力、戦略的なパートナーシップ、そして粘り強い臨床開発の結果と言えます。同社の事例は、バイオテク業界において、長期的なビジョンと粘り強い実行が重要であることを示しています。

また、特定の疾患領域に特化することで、深い専門知識と強力な市場ポジションを獲得できることも示唆しています。

財務状況に目を向けると、Sarepta の収益は、最初のDMD治療薬エテプリルセン (Exondys 51) が承認された2016年以降、大幅に増加しました。一方で収益の増加にもかかわらず、研究開発費用の高さなどにより、長期間にわたって純損失を計上し続けていました。

2022年の財務報告によると、同社は依然として純損失を計上していましたが、その額は前年と比較して大幅に減少していました。2023年に入り、Sarepta の財務状況は大きく改善しました。特に注目すべきは以下の点です。

– 2023年第2四半期の報告では、四半期ベースで初めて純利益を計上しました。これは主に、Catalyst との提携による一時金の影響によるものです。
– 2023年第3四半期の報告でも、純利益を計上しています。この時点で、年初からの9ヶ月間で純利益を記録しました。

黒字化の主な要因としては、既存製品(Exondys 51、Vyondys 53、Amondys 45)の売上増加、Catalyst との提携による大規模な一時金収入(約2億ドル)、運営効率の改善、研究開発費用の相対的な安定化にあります。

結論として、Sarepta Therapeutics は2023年に入ってから、四半期ベースおよび年間ベースで黒字化を達成し始めたと言えます。ただし、この黒字化には大規模な一時金収入の影響が含まれているため、今後の持続的な黒字化については、製品の継続的な売上増加と運営効率の維持が鍵となります。