肥満症治療薬の開発が急速に拡大したことで、がん領域を彷彿とさせるほど混戦状態となっています。僅か2年足らずで肥満症治療薬の分野は、少数の標的をめぐる混雑状況から、新たな腫瘍学となっています。
2025年の現時点で、肥満症を対象とする臨床プログラムは107件あり、そのうち前臨床段階にあるものが46件、第I相が40件、第II相が49件、第III相が7件となっています。
肥満治療薬の現状(2025年)
・開発パイプラインの概要
種類 | 開発中の薬剤数 |
---|---|
経口薬 | 25+ |
アミリン関連 | 20+ |
注射薬(皮下/静脈内) | 50+ |
・臨床開発段階別の内訳
開発段階 | プログラム数 |
---|---|
前臨床 | 46 |
第I相 | 40 |
第II相 | 49 |
第III相 | 7 |
合計 | 142 |
・開発状況の特徴
– 2年未満でがん治療薬と同様の市場の混雑度に達した
– 少数のターゲット(作用機序)に多くの治療薬が集中
– 経口薬からアミリン関連、注射薬まで幅広い投与経路の薬剤が開発中
肥満薬業界に君臨する、ノボ ノルディスクとイーライリリー
この急増は、ノボ ノルディスクの「Wegovy (ウェゴビー)」やイーライリリーの「Zepbound (ゼップバウンド)」などのGLP-1受容体作動薬の成功が主な要因であり、これによって同様の薬剤の300以上の開発プログラムが活発化しています。
特に、経口薬、アミリンアナログ (アミリンの作用を模倣した薬)、注射療法の分野では競争が激化しています。
例えば、ロシュが最近ゼネラル・ファーマと締結した53億ドルの提携は、アミリンアナログであるペトレリンチドの開発を目的としており、この分野における高いリスクを浮き彫りにしています。
さらに、セマグルチドの特許が2026年3月に切れることが予想されるため、少なくとも15社の中国製薬メーカーが代替品を開発しており、競争環境はさらに激化しています。
このシナリオは、がん治療薬への世界的な支出が2023年に2230億ドルに達し、2028年には4090億ドルに達するとの予測もある腫瘍学分野を反映しています。
腫瘍学のパイプラインは充実しており、2023年だけでも2000件以上の新たな臨床試験が開始されています。肥満と腫瘍学の医薬品開発の類似性は、これらの重大な健康問題への取り組みへの注目と投資が増加していることを浮き彫りにしています。