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Natera が切り拓く臨床遺伝子検査の最前線

Natera が切り拓く臨床遺伝子検査の最前線

先日 Personalis (PSNL) について調べている際に、臨床遺伝子検査の分野で先行する Natera, Inc.(ナテラ / NTRA)についても調べたところ、その圧倒的なリードに驚きました。とにかく驚いたのが圧倒的なサービス数、成長のスピード、技術力です。

本記事では、その内容を共有します。

Personalis「NeXT Personal®」全ゲノムベースの腫瘍情報プラットフォーム

Natera, Inc. (ナテラ / NTR) は、テキサス州オースティンに本社を構える臨床遺伝子検査会社で、無細胞DNA(cfDNA)技術を活用した非侵襲的検査を専門としています。

Natera は、女性の健康、腫瘍学、臓器の健康の分野に焦点を当て、個別化された遺伝子検査と診断を標準的な医療ケアの一部とすることを目指しています。

主な製品とサービス

女性の健康

・Panorama™ 非侵襲的出生前検査(NIPT)
母体の血液中に存在する胎児のDNAを分析し、ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)などの遺伝的障害のリスクを妊娠9週目から評価します。また、微小欠失症候群や双子の接合性の検出も可能です。

・Horizon キャリアスクリーニング
次世代シーケンシング技術を使用し、274の遺伝的状態に対する保因者状態を評価します。

・Anora 流産検査
流産後の組織を分析し、原因となる染色体異常を特定します。

・Spectrum 着床前遺伝子検査
体外受精(IVF)サイクル中の胚の遺伝的健康を評価します。

・Vistara 単一遺伝子NIPT
特定の単一遺伝子疾患のリスクを評価します。

・Empower 遺伝性がん検査
一般的な遺伝性がんのリスクに関連する最大53の遺伝子をスクリーニングします。

腫瘍学(がん)

・Signatera™ 分子残存疾患(MRD)検査
個別化された循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイで、がんの再発リスクをモニタリングします。この検査は、特定のがん種において再発を従来の画像診断よりも早期に検出することが臨床的に検証されています。

臓器の健康

・Prospera™ 移植評価検査
ドナー由来のcfDNAを分析し、腎臓移植後の拒絶反応のリスクを評価します。この検査は、T細胞媒介性および抗体媒介性の両方の拒絶反応に高い感度を持つ最初のアッセイです。

・Renasight™ 腎臓遺伝子パネル
個人の腎臓病の遺伝的原因を特定し、家族内の他のリスクを評価します。

さらに、Natera は Constellation というクラウドベースのバイオインフォマティクスプラットフォームを提供しており、臨床検査機関が自社の技術にアクセスし、独自の施設で使用できるようにしています。

Natera の技術とプラットフォーム

Natera の技術は、革新的な分子生物学技術とバイオインフォマティクスソフトウェアを組み合わせ、血液中の単一分子レベルまで検出することを可能にしています。

このプラットフォームは、非侵襲的出生前検査、がんのモニタリング、移植後の拒絶反応評価など、さまざまなcfDNA検査の開発に活用されています。

同社は、カリフォルニア州サンカルロスとテキサス州オースティンにCLIA認定の研究所を運営しており、臨床検査の品質と精度を確保しています。

Natera は、これらの技術とサービスを通じて、個別化医療の推進と患者ケアの向上に貢献しています。

Natera のサービスの拡充と成長

高度な技術の活用とデータ解析の強化

Natera は、cfDNA(無細胞DNA)検査技術を駆使し、がん診断や女性の健康、臓器移植後のモニタリングなど、多岐にわたるサービスを提供しています。特に、がん診断においては、Signatera™ のような検査を開発し、従来のCTスキャンよりも最大9ヶ月早くがんの再発を検出することが可能となりました。

同社は、200万件以上のcfDNA検査データを人工知能(AI)で解析することで、検査の的中率を24%から53%へと向上させ、遺伝子変異の見逃しも50%減少させることに成功しています。

スケーラブルなインフラの構築

Natera は、週に54,000件以上の検査を22のラボで処理し、1週間で約1.6ペタバイトのデータを生成する大規模な運用体制を確立しています。このようなスケーラブルなインフラにより、サービスの迅速な提供と品質の維持を両立させています。

市場の多様化と新規分野への進出

当初は出生前診断が主力製品でしたが、現在ではがんの再発チェックや移植後の臓器モニタリングなど、サービス領域を拡大しています。特に、がんの早期検出(ECD)分野への進出は、市場規模の拡大と売上の大幅な増加のチャンスとなっています。

これらの戦略的取り組みにより、Natera はサービスの多様化と品質向上を実現し、医療分野での地位を確立しています。

IPO 後の買収とFDA承認

Natera は、2015年のIPO(新規株式公開)以降、事業拡大のためにいくつかの戦略的取り組みを行っています。

・買収活動

2023年1月、Natera は 破産申請した Invitae (NVTA) の生殖医療関連資産、具体的にはキャリアスクリーニングおよび非侵襲的出生前検査(NIPT)部門を1,000万ドルで買収しました。この買収により、Natera は生殖医療分野でのサービスを強化しました。

FDA承認状況

Natera の Signatera™検査は、がん患者の術後の微小残存病変(MRD)の検出とモニタリングを目的とした個別化された循環腫瘍DNA(ctDNA)検査です。この検査は、2019年5月に米国食品医薬品局(FDA)から「ブレークスルーデバイス」の指定を受けました。

さらに、2021年3月には、新たな適応症に対して2つの追加のブレークスルーデバイス指定を取得しています。これらの指定は、Signatera™検査のFDA承認プロセスを加速することを目的としています。

また、Natera は Panorama®非侵襲的出生前検査(NIPT)についても、FDAとの事前提出(Q-Sub)を行い、承認取得に向けたプロセスを進めています。

ただし、現時点(2025年2月)では、これらの検査はFDAの正式な承認を受けておらず、CLIA認定の研究所で開発・実施されています。

24Q3決算

2024年第3四半期の決算報告によれば、Natera の総収益は前年同期比で約64%増加し、4億3,980万ドルに達しました。この成長の一因として、Signatera™ を含む腫瘍学的検査の需要増加が挙げられます。

同四半期において、約137,100件の腫瘍学的検査が実施され、前年同期比で約54%の増加となりました。さらに、Natera は2024年通年の収益予想を引き上げ、総収益を16億1,000万ドルから16億4,000万ドルと見込んでいます。

この見通しの背景には、リキッドバイオプシー技術の普及と同社製品の市場浸透があると考えられます。