Zoomy

非アルコール性脂肪性肝炎 NASH/MASH 治療薬で初のFDA承認

マドリガル・ファーマシューティカルズ、NASH/MASH 治療薬で初のFDA承認

2024年3月14日、アンメット・メディカル・ニーズの高い肝疾患である非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH/MASH) の新規治療薬を追求するバイオ医薬品企業 Madrigal Pharmaceuticals (マドリガル・ファーマシューティカルズ / MDGL) は、肝疾患 NASH/MASH をターゲットとする薬剤で初の FDA (米食品医薬品局) 承認を取得した。

マドリガルの医薬品である Rezdiffra (レズディフラ / 一般名 : レスメチロム) は、1日1回経口投与の肝臓指向性THR-βアゴニストで、NASH の主要な根本原因をターゲットに設計されている。

Rezdiffra (レズディフラ) とは?

レズディフラは、中等度から高度の肝瘢痕化(線維化)を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の成人患者(肝硬変を除く)の治療に、食事療法や運動療法とともに使用される処方薬です。

小児(18歳未満)に対するレズディフラの安全性と有効性は不明です。

この適応は NASH および肝瘢痕(線維症)の改善に基づいて承認されています。レズディフラの臨床的有用性を確認するための試験が進行中です。

米国成人の推定5%が罹患する、沈黙の病気とも言われる NASH/MASH (非アルコール性脂肪性肝炎) は、肝障害を引き起こす。

慢性肝疾患の健康負担は世界的に増加しており、その主な組織学的結果は肝線維化であり、最終的には肝硬変となる。この過程は無症状のため、肝硬変になる前の段階で診断されることはほとんどないという。

NASH について

非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進行型である。NASHは肝臓関連死亡の主要な原因であり、世界的に医療制度への負担が増大している。さらに、NASH患者、特に代謝性危険因子(高血圧、2型糖尿病の合併)がより進んだ患者は、有害な心血管イベントや罹患率および死亡率の増加のリスクが高い。

患者が中等度から進行した肝線維化(線維化ステージF2からF3に一致)を伴うNASHに進行すると、肝臓の有害な転帰のリスクは劇的に増加する。NASHは急速に米国における肝移植の主要な原因となっている。

マドリガルは、米国で約150万人の患者が NASH と診断され、そのうち約52万5千人が中等度から進行性の肝線維化を伴うNASHであると推定している。マドリガルは、レズディフラの発売期間中、肝臓専門医のもとで中等度から進行性の肝線維化を伴う NASH と診断された約31万5000人の患者に焦点を当てる計画である。

NASH は代謝機能障害関連脂肪肝炎 (MASH) としても知られている。2023年、世界的な肝臓病学会と患者団体は、肯定的でスティグマ化しない病名と診断を確立することを目標に、この病気の名称を変更するために集まった。非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD) は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 (MASLD) と改名され、NASH は MASH と改名され、肝臓に脂肪が蓄積することに関連する複数のタイプの肝疾患を包括的に捉えるために、脂肪性肝疾患 (SLD) という用語が確立された。肝疾患に加えて、MASH 患者は少なくとも1つの関連疾患 (肥満、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病など) を併発している。

一般人口における肝線維症の有病率や関連する危険因子についてはほとんど知られていない。マドリガルの最高経営責任者(CEO)であるビル・シボルドは、次のように述べています。

中等度から進行性の肝線維化を伴う NASH は、重篤で進行性の肝疾患ですが、これまでFDAが承認した治療法はありませんでした。レズディフラの早期承認は、創始者であるベッキー・タウブ博士と、医薬品開発における最大の課題のひとつに挑んだ小さな研究開発チームによる15年以上にわたる研究の集大成です。これは NASH 領域にとって歴史的な瞬間であり、私たちの業界ができることのベストを示すものです。レズディフラを必要としている患者さんにお届けできることを嬉しく思います。

MASH として知られる重篤な肝疾患の治療薬として初めてのFDA承認を受けたマドリガルのイベントは、2024年に最も上市が期待される新薬トップ10のベスト3にランクインされる注目度であり、その動向が期待されていました。

NASH の市場予測は2030年までに1,000億ドルを超える可能性がある

市場調査会社バンテージによると、NASHの市場予測は2030年までに1,000億ドルを超える可能性があると言います。肥満市場は今後10年間で世界15億人の肥満人口を抱えることになる。

このニュースの受けて、同じく MASH 治療薬のパイプラインを持つ、Viking Therapeutics (バイキング・セラピューティクス / VKTX)、Akero Therapeutics (アケロ・セラピューティクス / AKRO)、89bio (89バイオ / ENTB) などの株価も反応しました。

バイオファンドは大きなイベント前に仕込んでいる

マドリガルの今回のイベント前には、THR-β作動薬のパイプラインを持つ Terns Pharmaceuticals (TERN) の株をスティーヴン・コーエン率いる Point72 Asset Management が3,349,961株買い増し、RA Capital も 89bio (89バイオ / ETNB) を2,837,350株増加、OrbiMed Israel BioFund は僅かに 89bio を増加させています。

増加させたタイミングが、Akero Therapeutics が3月4日に「第2b相HARMONY試験において96週目に統計学的に有意な組織学的改善を報告」した後の数日後だったと思います。このあたりは連動しており、類似した領域で割安が買われているのではないかと推測します。

治療法の組み合わせが、時間をかけて NASH を治療していく

バイオ投資に精通した優れた投資家の Pharmdca さんの知見によると、

THR-β + FGF21の受容体作動薬 (メカニズム) という異なるアプローチによる治療法の組み合わせが、時間をかけてNASHを治療していくと考えている。

Madrigal Pharmaceuticals (マドリガル・ファーマシューティカルズ / MDGL) は現在のリーダーであり、NASH 市場で大きなシェアを占めるだろう (THR-βアゴニスト)

Viking Therapeutics (バイキング・セラピューティクス / VKTX)Viking Therapeutics (バイキング・セラピューティクス / VKTX) はマドリガルより選択性が高く、後塵を拝しているが、肥満症は優位点。

89bio (89バイオ / ENTB) よりも開発が進んでいる Akero Therapeutics (アケロ・セラピューティクス / AKRO) (FGF21受容体作動薬)

このあたりのタイムラインも覚えておくと良いと思います。

MASH肝線維症市場が過小評価されている可能性

海外のあるバイオ投資家は次のように示唆する。

肥満治療薬によるMASH肝線維症市場の縮小を懸念する人々は、今後の成長に驚くだろう

– 肝線維症は診断が極めて不十分
– 肥満治療薬も同様に浸透していない
– カウチポテトになることは人類の宿命だ
(ソファーに座り込んだまま動かず、主にテレビを見てだらだらと長時間を過ごす人のこと)

また、韓国のような国でさえ肥満の津波が始まったばかりとの一報があり、一般成人検診で~10%がF2+と特定されている。遺伝学 (PNPLA3、HBVなど) のような個々の危険因子が加わると、医療介入の緊急性は高くなる。

参考リンク : 韓国の一般人口における肝線維症の有病率と関連危険因子:レトロスペクティブ横断研究

【関連記事】肥満治療薬 GLP-1、NASH、INHBE、NLRP3 関連のバイオ企業銘柄について

肥満治療薬 GLP-1、NASH、INHBE、NLRP3 関連のバイオ企業銘柄について