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【NVTA】かつて人気を博したゲノム医療の Invitae はなぜ破産したのか?

【NVTA】かつて人気を博したゲノム医療の Invitae はなぜ破産したのか?

Invitae Corporation (NVTA) は、2010年に設立された医療遺伝子検査会社であり、当時個人投資家や ARK Investment Management などから熱い注目を集めていました。

特に、ARKのキャシー・ウッド氏は、2019年に Invitae を「過小評価されている株式」として言及しており、ARK のポートフォリオに加えていました。他にも、ソフトバンクグループも Invitae に出資していました。

しかし、2024年2月13日、Invitae は米連邦破産法第11章の適用を申請し、事業売却を模索することとなりました。 その後、同年8月に Labcorp への資産売却を完了し、破産手続きを終了しました。

この破産申請の背景には、今振り返れば野心的で無計画な買収、経営の失敗、需要の減少など、これらの要因が重なり、同社は財務的な困難に直面し、最終的には破産申請に至りました。

Invitae の事例は、急速な事業拡大や市場の変化に対する適応の難しさを示しており、投資家や業界関係者にとって重要な教訓となっています。このタイミングで、Invitae が破産した要因を振り返っておきましょう。

買収による積極的な拡大

2019年から2021年にかけて、Invitae は市場での存在感を高め、製品ラインナップを多様化するために13社を買収するという野心的な拡大戦略に乗り出しました。

これらの買収は、Invitae を遺伝子検査のリーダー企業として位置づけることを目的としたものでしたが、同社の負債は15億ドルも増加しました。

この積極的な成長は、新規事業を効果的に統合する同社の能力を上回るものであり、業務効率の低下とコストの増大につながりました。

増大する財務上の損失

拡大努力にもかかわらず、Invitae は利益を上げるのに苦戦しました。同社は2022年に31億ドル以上の純損失を計上し、2021年の3億7900万ドルの損失から大幅に増加しました。

2023年第3四半期までに、損失はすでに年間13億ドルを超えていました。こうした継続的な赤字は投資家の信頼を損ない、財務資源を圧迫しました。

流動性に関する課題と債務義務

Invitae の積極的な買収戦略と継続的な損失により、流動性は不安定な状況となった。2023年9月30日時点で、Invitae が保有する現金および現金同等物は約1億6800万ドルであり、年初の2億6750万ドルから大幅に減少しました。

同時に、総負債は2024年に満期を迎える3億5000万ドルの転換社債を含め、16億ドルを超えた。迫り来る債務義務と不十分な現金準備金により、債務超過のリスクが高まりました。

市場力学と収益の減少

Invitae は、競争の激化と任意の遺伝子検査に対する需要の減少という状況下で、収益の成長を持続させるという課題に直面しました。これに対応して、同社は成長予測を修正し、人員削減や非中核資産の売却を含むコスト削減策を実施しました。

ポイント
AIブームにより、2025年2月現在ゲノム検査の分野はかなり市場が拡大しています。しかし Invitae が話題になりブームになった頃は、2020年のコロナ禍でした。

この時まだAIブームは水面下であり、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、医療機関での非緊急の診療や検査が延期・中止されるケースが増加しました。

これに伴い、遺伝子検査の需要も減少し、売上に影響を及ぼした可能性もあります。更にこの時期は、遺伝子検査市場には多くの企業が参入しており、競争が激化しています。

特に、他社がより低価格で迅速なサービスを提供する中、Invitae は市場シェアの維持・拡大に苦戦しています。そこに財務上の課題がのしかかり経営が空回りした可能性もあるでしょう。

こうした努力にもかかわらず、同社の財務状況は悪化の一途をたどり、株価と時価総額は大幅に下落しました。

ニューヨーク証券取引所からの上場廃止

株価の長期にわたる下落により、Invitae の株式は上場維持に必要な1株あたり1ドルの基準を下回る水準で取引され続けたため、ニューヨーク証券取引所(NYSE)は2023年9月に上場廃止通知を発行しました。

この事態により投資家の信頼はさらに低下し、同社の資本市場へのアクセスは制限されました。

破産申請と資産売却

乗り越えられないほどの財務上の課題に直面した Invitae は、2024年2月に自主的な連邦破産法第11章の適用を申請しました。同社は債務の再編と資産売却を進め、利害関係者の価値最大化を目指しました。

2024年4月には Labcorp が落札者となり、Invitae の資産のほぼすべてを現金2億3900万ドルで取得することで合意しました。この買収により、Invitae の独立した事業は終了し、顧客と患者へのサービス継続性を確保することが目的でした。

まとめ

まとめると、Invitae の破産は、負債による買収による野心的な拡大、継続的な財務損失、流動性危機、変化する市場状況への適応の失敗が重なった結果です。これらの要因が総合的に同社の財務安定性を損ない、最終的に債務超過と売却につながりました。