元FDA長官のスコット・ゴットリーブ博士が CNBC に出演し、米国で発生している鳥インフルエンザの事例に関する懸念、ウイルス感染症例の急増がどれほど深刻であるか、また、米国の営利目的の医療制度の問題について語りました。
新たなウイルス「鳥インフルエンザ (H5N1) 」
新たなウイルス「鳥インフルエンザ (H5N1) 」が人間同士で簡単に広がる可能性があるかどうかに注目が集まっています。パンデミックの可能性は非常に低いとされていますが、リスクの重大性を考慮すると、アメリカの対応には大きな課題があります。
スコット・ゴットリーブ博士は、「アメリカはこの問題に関して全てを間違えてきた」と指摘しています。
まず、乳製品農場でのウイルス検査に着手するのが遅れました。例えば、バルクミルク(大量出荷される牛乳)を検査するプログラムが最近になってようやく実施され、酪農作業員の検査体制も未整備です。
小規模な調査では、酪農作業員の約7%がすでに鳥インフルエンザに感染している可能性が示されています。この問題は、24年の9月頃よりアメリカの牛に鳥インフルエンザ (H5N1) の兆候が確認されており、その牛乳から H5N1 が検出されていたにも関わらず、今になって問題視されるなど、対応の遅れが指摘されています。
鳥インフルエンザは、1878年にイタリアで初めて確認され、それ以来定期的に世界中で発生しています。現在米国の乳牛を苦しめている株は、その表面に特徴的なタンパク質がちりばめられていることから H5N1 に分類され、哺乳類に広がる傾向が強いとされています。
酪農業界への支援の必要性
The Cows in the Coal Mine https://t.co/YKHWCC82A3 pic.twitter.com/g8Qh02TpQh
— Alex Tabarrok (@ATabarrok) December 31, 2024
酪農家への補償も不十分で、多くの農家は感染リスクの負担を自身で抱え込まざるを得ない状況です。感染拡大を抑えるためには、政府が損失補填や適切な支援を行う必要があります。
アレックス・タバロック教授は、24年に9月に酪農家の声を紹介しています。
牛は無気力で動かない。 水の消費量は1日40ガロンから5ガロンに減少した。 彼は牛にアスピリンを1日2回飲ませ、水の量を増やし、ビタミンを3日間注射した。牛群の5%は淘汰された。
彼らは起き上がろうとせず、飲み物を欲しがらず、脱水症状がひどかった。発症したら、検査について考えている暇はありません。治療しなければならない。病気の牛がいるのだから、その世話をするのが私たちの仕事です。
備蓄薬とワクチン更新の遅れ
現在備蓄されている抗ウイルス薬(タミフルなど)は古く、特定のウイルス株に効果がない可能性があります。また、備蓄されている1,000万回分のワクチンは現在の株には効果がない可能性があり、これらを迅速に更新する必要があります。
経済的リスクと農業への影響
例えば、カリフォルニアでは71%の酪農牛がウイルスにさらされているとされています。カリフォルニアは全米最大の乳製品生産州であり、この問題が全国的なミルク供給に影響を及ぼす可能性があります。感染した牛は屠殺されることが多く、感染が広がれば、ミルクや肉の供給が減少し、経済的損失が拡大します。
16州にまたがる875の農場が影響を受けており、感染した牛の2%から5%が死亡、生乳の生産量も約20%減少することが報告されています。ロイターもカリフォルニアの状況を次のように報道しています。
カリフォルニアの牛は、鳥インフルエンザに感染した他の州よりもはるかに高い割合で死亡しており、レンダリング工場がすべての死骸を処理するのに苦労しているため、いくつかの死骸は太陽の下で腐敗したまま放置されていると、産業界と獣医学の専門家は述べた。
…カリフォルニアで感染した牛群の死亡率は、他の州では2%であるのに対し、15%あるいは20%にも上ると、鳥インフルエンザを研究している獣医師でウィスコンシン獣医診断研究所所長のキース・ポールセンは言う。
カリフォルニア州食品農業局は、鳥インフルエンザによる死亡率についての質問には回答しなかった。
インフルエンザ、COVID、RSV の流行状況
インフルエンザ、COVID、RSV(呼吸器合胞体ウイルス)のシーズンの真っただ中にあります。特に子どもの間で感染が広がっており、緊急治療室への訪問の約5%がインフルエンザ様疾患によるものですが、0~4歳の子どもではその割合が13%に達しています。
この傾向は今後1~2週間続き、ピークを迎えた後に下降する見込みです。今年のRSVシーズンは遅めに始まり、これらのウイルスが同時期に流行していることが多くの咳や鼻水の原因となっています。
COVID: Highest level in more than two years, climbing
RSV: Highest level in more than two years, climbing
Influenza A: Highest level in more than two years, climbing
Norovirus: Highest level in more than two years, climbingImmune systems: Clearly functioning very poorly pic.twitter.com/5bEpTPr7Xk
— Ruth Langmores Salty Attitude (@AnnieTehworst) January 3, 2025
上記ポストのグラフが示す通り、COVID、RSV、インフルエンザA、ノロウイルスの感性が急速に増加しています。
COVID は、2年以上で最高レベルで上昇中。RSVは、2年以上で最高レベルで上昇中。インフルエンザAは、2年以上で最高レベルで上昇中。ノロウイルスは2年以上で最高レベルで上昇中です。人の免疫システムが明らかに機能が著しく低下していることが分かります。
ノロウイルス
また、ノロウイルスも問題となっています。今年は特に感染が広がり、家族内でも注意が必要です。ノロウイルスはフェカルオーラル(糞口感染)経路で広がり、24~48時間の間に激しい嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。
特に高齢者や子どもでは、脱水症状が進行すると迅速な治療が必要です。このウイルスは手指消毒剤では死滅せず、20秒以上のしっかりとした手洗いが必要です。さらに、表面上でも長時間生存するため、清潔を保つことが重要です。
医療における営利モデルの課題
司会者は、医療制度における営利モデルが適切かどうかを問いました。ゴットリーブ博士は、営利型保険会社が政府や雇用主との契約に基づいてプランを実行している点を指摘しました。
例えば、メディケア・アドバンテージプランでは、保険会社は契約条件に従い、コストを抑えるための制約を導入しています。ただし、一部の保険会社が患者の診断や治療のプロセスに影響を与えているとの調査報告もあり、制度改善の必要性が議論されています。
まとめ
このウイルスの拡散リスクは、単なるカリフォルニアの問題ではなく、全国的な問題として認識する必要があります。経済的リスクを軽減し、公衆衛生を守るため、より迅速で包括的な対応が求められています。