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CAR-T療法、がん治療の枠を超え多領域へ

CAR-T療法、がん治療の枠を超え多領域へ

この図は、CAR-T 療法の標的が複数の治療領域にまたがっていることを示しており、がん以外の疾患への応用の可能性を強調しています。

キメラ抗原受容子を発現する遺伝子改変T細胞を用いた養子免疫療法は、血液悪性腫瘍患者の治療において目覚ましい成果を上げています。

しかし、他の疾患における遺伝子改変T細胞のより広範な治療応用を実現するには、臨床研究におけるさらなる探究が必要です。以下に、主要な治療カテゴリーと代表的な標的をまとめました。

1. 感染症 (Infection)

CAR-T 療法は、病原体関連抗原を標的とすることで感染症の治療に利用できる可能性があります。

・HBsAg(B型肝炎ウイルスの表面抗原)
・gp120(HIVのエンベロープ糖タンパク質)
・PD-1(慢性感染における免疫抑制関連標的)
・E2 protein(C型肝炎ウイルスの標的)
・LMP1, gp350(エプスタイン・バールウイルス関連標的)
・スパイクタンパク質(SARS-CoV-2 / COVID-19)
・β-グルカン, GXM(真菌感染症関連標的)

2. 自己免疫疾患 (Autoimmunity)

CAR-T 細胞療法は、自己反応性B細胞を選択的に除去したり、免疫応答を調整することで、自己免疫疾患の治療に役立つ可能性があります。

・CD19, BCMA(B細胞除去によるループス(SLE)や多発性硬化症の治療)
・Dsg3(尋常性天疱瘡)
・MuSK(重症筋無力症)
・La/SSB(シェーグレン症候群)
・GAD65(1型糖尿病)
・IL-5Rα(喘息、好酸球関連疾患)
・GD3, MOG, MBP(多発性硬化症関連標的)

3. 繊維化疾患 (Fibrosis)

CAR-T 療法は、線維化に関与する細胞を標的とすることで治療に応用できる可能性があります。

・FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)(組織リモデリングや線維化に関連)
・uPAR(細胞外マトリックス(ECM)の分解や線維化調節に関与)

4. 老化関連疾患 (Senescence)

老化に関連するマーカーを標的とすることで、加齢関連疾患の治療に役立つ可能性があります。

・NKG2DL(老化細胞マーカー)
・uPAR(老化と線維化に関連)

5. 臓器移植 (Transplantation)

CAR-T療法は、移植拒絶反応の抑制にも利用される可能性があります。

・OX40(移植片対宿主病(GVHD)における制御性T細胞の調整)
・HLA-A2(同種免疫反応の抑制)

6. 血友病 (Hemophilia)

血液疾患の治療への応用

・FVIII(第VIII因子)(血友病Aの治療にCAR-Tを利用した遺伝子調節の可能性)

主なポイント

CAR-T 療法は従来がん治療が主流でしたが、この図はそれを超えた応用の可能性を示しています。
感染症、自己免疫疾患、線維化、老化、移植、血液疾患など、幅広い分野での研究が進行中。
免疫調整、病原体の除去、再生医療などの分野で、新たな CAR-T アプローチの開発が進められています。

Arcellx の「anito-cel」

【ACLX】癌のバイオテクノロジー企業 Arcellx (アーセルクス) とは?

例えば、Arcellx の「anito-cel(anitchimeric antigen receptor T-cell, formerly known as CART-ddBCMA)」は、CAR-T 療法の中で自己免疫疾患やがん治療に関連するBCMA標的の CAR-T に分類されます。

anito-cel は「自己免疫(autoimmunity)」または「がん(oncology)」のカテゴリーに含まれます。上記の画像ではがんに特化した分類は示されていないため、BCMA標的 CAR-T は「自己免疫」セクションのBCMAの部分に該当すると考えられます。

Arcellx (アーセルクス / ACLX) 100ドルまでの軌道を振り返る

Arcellx の anito-cel は、現時点では主にがん(多発性骨髄腫)治療にフォーカスされていますが、将来的には自己免疫疾患への適応拡大の可能性も考えられるため、CAR-T の「BCMA」に位置すると考えられます。