Arcellx, Inc. (アーセルクス / ACLX) は、がんやその他の難病の患者さんのために革新的な免疫療法を開発し、細胞療法を再創造する臨床段階のバイオテクノロジー企業です。
2024年11月9日現在、Arcellx は100ドルを突破し、株価は11月8日のアフターに「108ドル」を付け最高値を記録しています。今回は Arcellx が2022年の IPO から、現在の100ドルを超えるまでにどのようなターニングポイントがあり株価を駆動してきたのか?を振り返りたいと思います。
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主力製品「CART-ddBCMA」
Arcellx の主力製品である「CART-ddBCMA」は、再発・難治性多発性骨髄腫(r/r MM)の治療薬として開発されており、現在、第1相試験が進行中です。CART-ddBCMA は、米国食品医薬品局(FDA)よりファスト・トラック、希少疾病用医薬品、再生医療先進治療薬の指定を受けています。
・ファストトラック指定
この指定は、未充足の医療ニーズに応えることを目的とする治療薬が、開発および審査プロセスを迅速に進められるようにするものです。CART-ddBCMAが患者にとって新しい治療オプションとなり得るとFDAが判断していることを示しています。
・希少疾病用医薬品指定
オーファンドラッグの指定は、希少疾病に対する治療法開発を奨励するもので、税制優遇措置や独占販売権の付与などが得られます。市場性は小さいかもしれませんが、重要なニーズがあると認識されています。
・再生医療先端治療薬(RMAT)指定
この指定は、再生医療分野で画期的な治療法を迅速に患者に提供することを目的としています。特に細胞療法や遺伝子治療など、従来の治療では対応が難しい病気に対する革新的なアプローチに適用されます。
これらの指定は、開発プロセスの迅速化と規制支援を示すものであり、FDAが「CART-ddBCMA」を積極的に支援している証拠ですが、最終的な信頼性や有効性は今後の臨床試験データによって判断されるため、引き続き臨床試験およびその後の試験結果に注目する必要があります。
2022年2月4日に15ドルで IPO
Arcellx は、2022年2月4日にナスダックにIPOされました。普通株式825万株のIPOを15ドルで価格設定し、予想総収入は〜1億2380万ドルとなりました。Arcellx は、当初は830万株を1株当たり15ドル〜17ドルのレンジで売り出すことを申請していました。
IPO 後早い段階で、由緒あるファンド NEA が19.2%を取得
Arcellx は IPO 後、早い段階で米国の著名なベンチャーキャピタルである NEA (New Enterprise Associates) が投資しています。NEA は、バイオテクノロジーや医療分野での豊富な投資実績を持ち、Arcellx の成長に対しても積極的に関与している可能性があります。
さらに、元FDA長官の Scott Gottlieb(スコット・ゴットリーブ)氏も、NEAのアドバイザリーボードメンバーであり、同社の医療分野の戦略に関与している可能性が高いです。
スコット・ゴットリーブ氏はFDAの経験を通じて規制や承認プロセスに精通しており、その知識が Arcellx にとっても有益であると考えられます。
ギリアド傘下の Kite と戦略的提携を発表
2022年12月9日、Arcellx と Gilead Sciences (ギリアド・サイエンシズ / GILD) 傘下の Kite は、再発または難治性の多発性骨髄腫患者の治療薬として、Arcellx の主要な後期製品候補である「CART-ddBCMA」を共同開発し、共同商業化するための世界的な戦略的提携を発表しました。
Arcellx の会長兼最高経営責任者ラミ・エルグアンドゥール氏は次のように述べています。
今回の提携は、骨髄腫領域と Arcellx にとって大きな成果です。私たちの多発性骨髄腫に対するクラス最高の可能性を秘めた「CART-ddBCMA」療法と Kite の細胞療法における世界的なリーダーシップを組み合わせることで、私たちの療法を大規模に商業化するための基盤が整います。
両社のシナジーは自然にフィットします。 両社は補完的な専門知識を持ち寄り、長期的な価値を構築するために重要な、重複や競合する利害関係なしにパートナーシップに貢献することができます。
現在第2相臨床開発段階にあるCART-ddBCMAは、多発性骨髄腫を標的とするように遺伝子改変された自己T細胞からなる治験用細胞療法製品である。CART-ddBCMA は、Arcellx の新規D-Domainバインダーを利用している。Kite と Arcellx は共同でCART-ddBMCAを開発します。
iMMagine-1フェーズ2臨床プログラムの臨床保留
2023年6月20日、再発または難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした「CART-ddBCMA」iMMagine-1 フェーズ2臨床プログラムの臨床保留を発表しました。これは最近の患者の死亡を受け、FDAからクリニカル・ホールドを受領しました。
Arcellx はブリッジング療法の制限が一因と考え、プロトコールを修正するためにFDAと協働しました。このニュースを受けて株価はプレマーケットで-12.8%下落しました。
第66回ASH年次総会で、iMMagine-1試験の臨床データを発表
2024年11月5日、第66回ASH年次総会・展示会において再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象とした第1相およびiMMagine-1試験の臨床データを発表、iMMagine-3試験の進捗を発表しました。
anito-cel のフェーズ1試験で追跡期間中央値38.1ヵ月、無増悪生存期間中央値30.2ヵ月、全生存期間中央値は未到達。極めて重要な第2相iMMagine-1試験に登録された58人の患者から得られた予備的な結果は、追跡期間中央値10.3カ月でORR95%、CR/sCR62%を示した。
140人以上の患者に投与されたフェーズ1およびiMMagine-1試験において、パーキンソニズム、脳神経麻痺、ギラン・バレー症候群を含め、アニトセルによる遅発性神経毒性は観察されていない。Kite 製造のiMMagine-3試験で最初の患者を投与、Kite の商業製品と同等の納期
2024年Q3決算
最近発表された ASH 抄録のデータは、anito-cel の臨床プロファイルを多発性骨髄腫患者に対するクラス最高の治療選択肢となりうるものとして差別化し続けていると考えています。
Arcellx の株価を駆動させた要因を振り返る
以上のように、Arcellx の株価を駆動させたイベント、臨床データ、カタリストなどをざっくりと紹介しました。今振り返ると、やはり元FDA長官のスコット・ゴットリーブ氏が少なからず関与していたこと。
そして、IPO 後に比較的に早い段階でギリアドとの戦略的提携を発表したことではないか?と思います。小さな臨床バイオ企業が確かな技術を持っている場合、大手製薬会社をパートナーに迎えることで開発中のパイプラインの上市までを早めることができずはずです。