Jeremy J. Siegel (ジェレミー・J・シーゲル教授) 教授は、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのファイナンス教授、コメンテータで、投資に関する著名な著者『Stocks for the Long Run』で知られ、株式への長期投資を提唱している。こちらの記事では、ジェレミー・J・シーゲル教授の投資ストラテジー、投資哲学についてご紹介します。
ジェレミー・J・シーゲル教授が株式投資において、最も大切に考えていること
・長期的な視点
ジェレミー・J・シーゲル教授は、株式投資において最も重要なことは、長期的な視点を持つことだと考えています。著書『Stocks for the Long Run』では、株式市場が他の資産クラスと比較して、投資家に最も高い長期リターンをもたらしてきたと論じています。
債券、現金、不動産などの他の資産クラスと比較して、株式が最も優れた長期投資先であると述べています。投資家は長期的な視野を持つべきであり、短期的な市場の変動に振り回されるべきではないと提言しています。
しかし、株式投資は一攫千金を狙うものではなく、忍耐と規律が必要であることも強調しています。投資家は、質の高い大型株で構成される分散型ポートフォリオを構築し、それらの銘柄を長期的に保有することに集中することを推奨しています。
また、市場の低迷期には投資を継続し、市場のタイミングを計ったり、頻繁に売買したりする誘惑を避けることの重要性を説いています。シーゲルの株式投資に対する考え方は、長期的に複利で利益を得るという信念と、忍耐強い長期投資戦略のメリットに根ざしています。
・配当の再投資
ジェレミー・J・シーゲル教授は、長期的なリターンを最大化するために、配当金を再投資することの重要性を強調しています。彼は、過去の株式リターンの大部分は、再投資された配当金の複利効果によるものであると指摘します。
著書『Stocks for the Long Run』の中で、”配当金、特に再投資された配当金は、株式のトータルリターンの大部分を占める” と述べています。
また、彼は、配当金を支払う株式は、歴史的に無配当の株式を上回っていることを指摘しています。従って、投資家は配当金を現金で受け取るのではなく、再投資することを推奨している。
・バリュエーションは重要である
ジェレミー・J・シーゲル教授は、投資家が株式を選択する際にはバリュエーションに注目すべきであると指摘します。彼は、投資家がリターンを最大化するためには、株価収益率(PER)が低く、配当利回りが高い企業を探すべきだと提案しています。
長期的には株式バリュエーションは過去の平均値に回帰する傾向があると主張している。つまり、現在バリュエーションが高ければ将来的に下がる可能性が高く、現在バリュエーションが低ければ上がる可能性が高いということである。
しかし、この平均値への回帰が起こるには長い時間がかかり、予測可能な方法で起こるとは限らないため、バリュエーション指標に基づく短期のマーケットタイミングは有効でない可能性があることも強調しています。
その代わりに、短期的な市場の変動にかかわらず長期的に良好なパフォーマンスを発揮する可能性の高い、高品質な配当を支払う企業に焦点を当てた、長期的なバイ・アンド・ホールド・アプローチを提唱しています。
・分散投資
ジェレミー・J・シーゲル教授は、リスクを軽減するために、異なるセクターや産業に分散投資することを推奨しています。また、ポートフォリオをさらに多様化するために、国際的な株式への投資も勧めています。
彼は、投資家は株式と債券の分散ポートフォリオを保有すべきであり、その構成は個人のリスク許容度と投資目標に基づいて変化させるべきであると言います。分散投資が投資家のリスクを減らし、長期的なリターンを増やすのに役立つと主張しています。
・パッシブ投資
ジェレミー・J・シーゲル教授は、手数料や経費を最小限に抑えるため、S&P500などの幅広い市場インデックスに連動する低コストのインデックスファンドや上場投資信託(ETF)を利用することであると主張しています。
彼は、ほとんどの投資家は個別銘柄を選ぶよりも、幅広い市場のインデックスに投資する方が良いと考えています。また、アクティブ運用は長期間にわたってパッシブ運用を下回ることが示されており、個人投資家が一貫して市場に勝つための知識、専門知識、時間を持つことはまずないと指摘しています。
その代わりに、インデックスファンドの分散ポートフォリオに投資し、長期的に保有する「バイ・アンド・ホールド」戦略を提唱しています。
バリュー投資
バリュー投資の重要性を説き、本源的価値や簿価よりも低い価格で取引されている銘柄を購入する。
収益の成長
シーゲル教授は、投資の長期的な成功のためには、収益の成長が重要であることを強調しています。常に収益を伸ばしている企業は、しばしば株主に強力なリターンを提供することができる。
金利とインフレの重要性
シーゲル教授の分析は、マクロ経済要因、特に金利とインフレを考慮する必要性を説いています。それは、これらの要因が株価を決定する上で重要な役割を果たすと考えているからです。
マーケット・タイミングを計らない
シーゲル教授は、市場のタイミングを計ろうとすることにを指摘しています。短期的な市場の動きを一貫して予測することは非常に困難であり、それを試みる投資家は、市場の最良の日のいくつかを逃し、リターンに大きな影響を与えることが多いと言います。
・感情をコントロールする
シーゲル教授は、恐怖や欲に基づく感情的な判断を避け、合理的で規律ある投資アプローチを維持することの重要性を説いています。投資家はしばしば強気相場の幸福感にとらわれ、弱気相場の時にはパニックに陥ることを指摘します。
その結果、高値で買って安値で売るという、成功した投資家の行動とは正反対の行動をとることになる。ジェレミー・J・シーゲル教授は、投資家に長期的な視点を持ち、短期的な市場の変動に惑わされないようアドバイスしています。感情をコントロールし、衝動的な判断を避けることで、投資家は合理的な投資判断を下し、長期的に利益を得ることができるのです。
まとめ
シーゲルの投資哲学は、市場の効率性と長期的な予測可能性を信じること、そして、株式分散ポートフォリオに辛抱強く規律正しく投資することが、長期的に富を築く最良の方法であるという考えに根本的に根ざしています。
『Stocks for the Long Run』第6版
ジェレミー・J・シーゲル教授は著書『Stocks for the Long Run』の第6版を2022年10月に上梓しました。本書でジェレミー・J・シーゲル教授は、以下のような結論を示しています。
1. 株式市場の実質的なリターンは、今後数年間で7%から5%に減少すると予想される。
2. 株式は今後も最も収益性の高い資産クラスであり、債券、金、米ドルを凌駕する。
3. 投資期間が長いほど、投資家のポートフォリオに占める株式の比率は高くなる。
4. 投資家は主に低コストの広範な分散投資型ETFに投資すべきである。
5. 長期的には大型株とバリュー株に注目し、エビデンスに乏しいスモールキャップファクターを避け、均等配分のETFに投資する。
6. 米国株を60%から70%の配分でオーバーウェイトし、欧州株への配分を30%維持し、新興国への投資を避ける。