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「新NISA」の投資戦略を考える

「新NISA」の投資戦略を考える

2024年からいよいよ開始される「新しいNISA」の投資戦略を今から考えてみたいと思います。新NISAが開始されるのは、2024年からですので、後1年間の期間がございます。今のうちに自分に合った「新NISA」の投資戦略を練っておきましょう。

今回は既に「つみたてNISA」、「iDeCo」で積立投資を何年もしています個人投資家の視点で「新NISA」の投資戦略を考えてみたいと思います。

新NISA拡充の背景

画像出展 : 金融庁

今回の「新しいNISA」は、岸田政権による資産所得倍増プランの一つとのことです。この「資産所得倍増プラン (案)」のPDFによると、以下のように記載されています。

従来は、株式や投資信託への投資は、一部の富裕層が行うものというイメージがあった。しかし、NISA やつみたてNISAの導入後、1,700万口座が開設され、28兆円の新規投資が行われ、かつ、20歳代から30歳代の若年層の利用が急拡大している。

また、デジタル化により、アプリ上での簡単な資産の管理や、低廉な手数料での豊富な金融商品へのアクセスも可能になっており、投資経験の浅い方も含めて、幅広く資産形成に参加できる仕組みを整備し、中間層の資産所得を大きく拡大することが可能である。

富裕層云々というより、”庶民” こそ積立投資、長期投資をする必要性が益々高まっているように思います。アプリやAIによる資産運用サービス (自分は特に何もしないでいい) なども出ていますが、これらにも惑わされず、ご自身でしっかりと「投資」について学び資産運用を始めましょう。

今後益々日本社会では、知らないフリをしていること、学ぶ精神がない者はどんどん隅に追いやられてしまいそうです。先進国では「投資 (資産運用)」は嗜みとして当たり前のように行われていますが、日本ではまだ古い価値観として清貧の思想や投資=危険というような古いイメージが残っているようです。この前もどこかの老いた政治家の爺さんが街頭演説で、「投資は危ない。投資は誰かが損をしないと成り立たない。非常に危険です」というようなトンデモな演説をしていました。

年金逃切り世代の老人が今から投資するはずもなく、投資について学ぶこともしないと思いますので、「投資 = 詐欺」みたいな情弱な回路になるのは納得できます。しかしこの爺さんが貰ってるであろう年金は、年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が投資をして運用しています。GPIF の2023年1月現在のポートフォリオの配分は以下のように、国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%で運用されています。

GPIF 2023年のポートフォリオ

画像出展 : GPIF

爺さんの街頭演説は悲しいかな誰も聞いていないようでしたが、「投資は危ない!」と言う爺さんが貰っている年金は GPIF が投資をして年金資金を運用することで賄われているのです。多分この爺さんはその事を知らないのでしょう … 投資について学ばなければならないのは若い世代や、まだこの先何十年もある世代の人たちです。

今回のNISA拡充が何を意味しているのか?我々日本人はしっかりと考えなければいけません。それは日本政府からの最後通告であり、年金もあてにならないし、今後税金も上げるし、物価も電気代も高止まりそうだし、日本は賃金も上がりそうにないので、日本国民は投資で資産形成をしといて下さいね … というメッセージだと受け取りましょう。

2022年の円安が物語るように、日本は世界に何周も遅れており、日本銀行が金利を引き上げたのは世界最も遅いとされています。日本は世界に先駆けて超高齢社会に突き進んでおり、その後を追いかけているのは中国です。日本と中国の人口ピラミッドを比べてみると、その歪な (70代、50代の人口が最も多く、若い世代程少ない) 人口動態が似ています。

日本の人工ピラミッド

画像出展 : 総務省統計局

資源もないこのような国が成長できるでしょうか?残念ながら日本の現在は出涸らしです。話が脱線しましたが、つまり庶民や凡人は「新NISA」でインフレに負けずに堅実に増やしていく資産運用をしていく他ないのです。

新NISAの登場による変化

今回の「新NISA」の登場により、これまで既に「つみたてNISA」や「一般NISA」、「iDeCo (イデコ)」を運用しているという人の資産運用も大きく変わってくるのではないかと思います。

というのも私もそのなかの一人で、今回「新NISA」の内容を見て、これは iDeCo (イデコ) の存在意義が薄れるな … 中途半端差が際立つ形になったな … としんみりしました。

今後は iDeCo を大幅に減額してかなり少額で継続するなど、人によっては掛金の停止を行う人も出てくるのではないでしょうか?私はと言うと、これまで iDeCo で運用してきた毎月の掛金 (積立分) を新NISAの「つみたて投資枠」または「成長投資枠」に振り分けようと思いました。

めちゃめちゃ稼いでいる!という人以外は、今後私のように、iDeCo を減額 or 停止する人は結構増えるのではないかと思います。

もう「新NISA」だけで十分では?

新NISAの登場で iDeCo の存在価値が無くなる

私は個人事業主として、「つみたてNISA」、「iDeCo (イデコ)」、「小規模企業共済」を利用していますが、個人事業主のため、その時々の世相によって収入にかなりばらつきがあります。収入が良い時は、上記3つとも掛金を満額で入れていましたが、収入が普通くらいだったり、低くなると、小規模企業共済の毎月の掛け金を5,000円に引き下げたりするなど調節してきました。

それでも節税のメリットがある「iDeCo」は、個人事業主が掛けることのでできる掛金満額68,000円を毎月拠出してきました。しかし新NISAでは「つみたて投資枠 (120万)」と「成長投資枠 (240万)」を併用することができ、合わせると毎年360万まで節税のメリットを受けることができます。

そうすると、かなり収入がある or バリバリ稼いでいて、節税の恩恵を得ながら資産を築きたい、という人以外は「新NISA」と「iDeCo」を両方やるという人はかなり少なくなるのではないでしょうか?「新NISA」の方が自由度が高く、いつでも引き出せ、枠によって投資信託もETFも個別株も買えるとなれば、「新NISA」だけで十分という人が増えるのではないかと思います。

つまり、2024年以降は iDeCo をやる意味、メリットがかなり薄れてしまうと思います。iDeCo のデメリットは、原則として60歳まで掛金を引き出すことができません、そのためライフイベントなどで、まとまったお金がどうしても必要なタイミングに取り崩して現金化することができません。

それに人生何があるか分かりませんので、60歳まいで生きている確証はありません。私の場合は、SBI証券の古い iDeCo プランを使っているため、クソみたいな古いラインナップの商品 (投資信託) しかなく、手数料が安く長期投資家から愛されている eMAXIS Slim (イーマクシススリム) すら買うことができません。ということで、2024年以降は、古いNISAと併用して、新NISA枠をメインに積立投資、長期投資を開始していきたいと思います。

iDeCo をどうするか問題

RIP iDeCo

iDeCo の最低限の掛け金は月5,000円からの積立が可能になっています。「新NISA」の登場によって、iDeCo のメリットが見つからなくなってしまった個人事業主の私は、当初は大幅に減額して月5,000円の掛金で継続しようと考えていました。

しかし調べてみると iDeCo の掛金拠出を停止することができるとのことです。掛金の拠出を停止するには、「加入者資格喪失届」の書類を拠出先の金融機関から取り寄せて、手続きすることで、掛金の拠出を停止することができます。

掛金の停止を行うと、加入者ではなく「運用指図者」という立場になり、今まで積み立てた額の運用を続けることができます。つまり今後は、投資タイミングを見てスイッチングのみでの運用になるのではないかと思います。

iDeCo は掛金を拠出を一時停止した場合、「加入者資格喪失届」によりご自身で掛金を止めた後に、再び掛金の拠出を再開する場合は「個人型年金加入申出書」等の書類を提出することで拠出を再開することが可能です。

このように、新NISAの登場により、今後少なからず多くの人が iDeCo を減額するか、一時停止するか?の2択を迫られる可能性があると思います。

新NISAの投資戦略

新NISA「つみたて投資枠」の使い方

「つみたて投資枠」の投資戦略

年120万円投資可能な「つみたて投資枠」は、これまでの NISA や iDeCo と同じく、その人の投資ストラテジーに合わせ「全米株式」、「全世界株式」のような投資信託を買うのが最適解になると思います。

2023年以降の相場を考慮すれば、全米株式よりも全世界株式に妙味があると感じられるため、以下の

・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

投資信託を選び積立投資を行いたいと思います。ETFで言うと、VTI よりも VT の方がアウトパフォームすると思います。例えば「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」は、バンガード社とタイアップして作られた商品ですので、VT と全く同じ商品になります。何が違うか?というと、円で買うドル資産となります。

「つみたて投資枠」120万については、できるだけ全力で枠を使い切り、毎年愚直に積み立てていくイメージが望ましいと思います。

新NISA「成長投資枠」の使い方

「成長投資枠」の投資戦略

「成長投資枠」は、その名称からも個別の成長株 (グロース株) を買うものだ?と認識してしまう人もいるかもしれませんが、「つみたて投資枠」では購入できない「ETF」をトレードしていくのに向いているのではないか?と考えています。ETFは個別株よりもリスクは低く、値動きもマイルドなため、中長期のトレードにも向いています。

更にETFは、セクターETF、カントリーETFと種類が豊富にありますので、相場のサイクルや景気循環に合わせて妙味のあるETFをその時々でトレードすることができます。そのため「成長投資枠」では、短・中・長期でETFをトレードしていき、種銭を作りながら資産も増やしていく、というような使い方もできるかもしれません。

私は直近のコロナで始まった2020年の金融相場を身を持って体験していますので、この間所謂グロース株はアウトパフォームし、銘柄によっては短期間で10倍以上の株価になるなど阿波踊り状態でしたが、振り返ってみればバブルのような有様でした。

しかし経済が過熱しインフレになると、FRBにより金利が引き上げられ相場のサイクルが大きく変わりました。するとこれらのグロース銘柄は軒並み叩き売られ、金融相場の天井から 10/1 になる銘柄や、SPAC銘柄に至っては1ドルを切るなど悲惨な結末を迎えました。

これではグロース株を長期投資したとしても、相場の良い時期に利確できれば良いのですが、そうでない場合は長期投資する意味がなくなってしまいます。だったら相場のサイクルに合わせ、チャンスのあるセクター、国 (カントリー) にその時々の相場やトレンドに合わせてETFをトレードしていく、転がしていき、中長期で利確し、資産を増やしていくというのも有りなような気がします。

この場合、前提として個別株の経験があり、相場のサイクルをある程度熟知している必要があります。新NISAでは、投資した株を売却すると、年間上限360万は復活しないものの、生涯枠上限1,800万は復活するとのことですので、「成長投資枠」を上手く利用して、ETFを転がしていくのも投資戦略として使えるのではないでしょうか。

「ETF」と「投資信託」どちらを買えば良い?問題

最後に投資初心者の方によくある質問として、「ETF」と「投資信託」どちらを買った方が良いの?という問いがあります。まず投資初心者の場合は、「投資信託」から始めた方が無難だと思います。

「投資信託」と「ETF」の違い

「投資信託」と「ETF」の大きな違いには、瞬時に売買できるか?できないか?になります。

・投資信託は瞬時に売買ができず、買値と売値がその日の終値となります。

「投資信託」は指値で購入することができません。「投資信託」は指数に連動した複数の株が寄せ集まった商品ですので、買い注文を出して、どれくらいの口数が買えたのかは、その日の場が終わってからじゃないと分かりません。同様に「投資信託」を売る時も、売り注文を出してその日の場の終値で計算されます。

・「ETF」はいつでも売買できる

一方でETFは場が空いている時や、プレマーケットの時間帯であれば、いつでも売買が可能です。ETFには様々な種類やカテゴリーがあり、レバレッジ商品などもあります。トレードし易さでは、ETFの方が圧倒的に勝ると思います。

また「ETF」を買う場合はドル資産が必要になります。楽天、SBI証券であれば、円でそのままETFを購入できますが、購入時にドル転分が加算されています。

「投資信託」は長期投資に向いている

上記のようなことから、「投資信託」を積み立てる場合は長期投資が基本となります。トレーダーによっては短期で投資信託のレバレッジ商品を買って上がったら直ぐに売るというような人もいますが、基本的に投資信託は長期投資向きだと覚えておきましょう。

「ETF」は短・中・長期でのトレードが可能

その点「ETF」は自分のタイミングで売買が可能ですので、投資経験がある人は、例えば2023年1月現在であれば「VT (全世界株式)」と「FM (フロンティア・マーケット)」のETFをポートフォリオのコアとし、相場のタイミングを見て、原油ベアETFを短期でトレードしてみたり、その他のカントリーETF、例えば VNM (ベトナム)、EPOL (ポーランド) のETFを中期でトレードするのも有りだと思います。

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このように「ETF」は自由度が高く、値動きも個別株に比べるとマイルドですので、トレードし易いという点が挙げれます。以上のことから、「投資信託」か「ETF」を選ぶ場合は、その人の投資経験値によって判断しましょう。

指数に連動した商品を買う場合、「投資信託」と「ETF」どちらが良いの?

この章の本題です、積立投資を開始したばかりの長期投資家の間で良くある質問が以下です。

全世界株式 (又は全米株式) を購入する場合、「投資信託」の全世界株式インデックス・ファンドを買った方が良いのか?それとも「ETF」のVT (Vanguard Total World Stock ETF) を買った方が良いのか?どっちなの??

という質問がありますが、例えば、楽天証券やSBI証券が出している、「全世界株式インデックス・ファンド」、「全米株式インデックスファンド」などは、ローコスト投資信託/ETFの王様本家 Vanguard (バンガード) とタイアップして作られた商品ですので「投資信託」も「ETF」も中身は全く同じ商品となります。

ではその違いは?というと「投資信託」は円建てで買うドル資産です。逆に「ETF」はドルじゃないと買えませんので、ドル転する必要があります。再び例え話ですが、例えば2022年の1ドル「150円」の激しい円安の時にドル資産を円で買うと、今度円高に為替が動いた場合に相当に為替差損で負けてしまいます。

「投資信託」も「ETF」も、成果としては同じパフォーマンスが出るのであれば、2022年の円安はかなり極端な例ですが、為替と手間を考えると円建てで「投資信託」を積み立てれば十分だと思います。

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