FRB (米連邦準備制度理事会) は今年、インフレを抑えるために4回連続して75ベーシスポイントの利上げを発表しました。インフレが落ち着きを見せれば、FRB はどこかの時点でこれ以上金利を引き上げる必要がなくなったことを宣言し、これまでの金融政策を利上げからピボットすることをアナウンスするだろう。
FRBピボットとは?
FRB (中央銀行) は経済の状態を監視しながら、経済が暗転すれば「金融緩和」を行い金利を低下される。そして、今回のように経済が過熱し過ぎると「金融引締め」を行い金利を上昇される金融政策を行います。
経済は膨張と収縮の周期を規則的に繰り返すので、FRB は金融緩和と金融引き締めを繰り返し行ってきました。このように、中央銀行が「緩和」から「引き締め」へ、あるいはその逆「引き締め」から「緩和」に移行するとき、市場の専門家はFRBが「ピボット (方向転換)」していると言います。
今後FRBに予想されることは、インフレ低下による利上げ幅の縮小、利上げの終了のように、FRBのピボットは近いと見ることができる。
FEDピボット後に市場は下落する?
For those hoping for a Fed pivot, this is what happens after the pivot. Be careful for what you wish for… pic.twitter.com/0pKpq1DTJh
— Thomas Thornton (@TommyThornton) November 4, 2022
ヘッジファンド・テレメトリーの Thomas Thornton 氏がツイートしているように、FEDピボット後に何が起きるかは歴史が教えてくれるとを示している。
FEDのピボットに期待する人は、ピボットの後にこうなる。 何を望むかには注意が必要だ…。
これが何を意味するか?というと、金融引き締めが和らげば、株価にとってはプラスになる。しかし、歴史的に FED がピボットしたタイミングで株価は下落していることに刮目したい。
FRBの利上げにより実態経済に不況が訪れると企業業績 (EPS) は減少し、株価はそれを織り込んで行かないといけない。まだ市場はこの織り込みをしていないということが指摘できる。
これは2022年第三四半期の決算を思い出して欲しい。歴史的なドル高で大手のハイテク企業の決算はボロボロで、昨今のピークデジタルの影響もあり、ベア相場の下落から更に業績悪化による更なる下落を経験している。この下落が、不景気入りし決算に反映し株価が下落する織り込みが再び必要となるのだ。
歴史的にピボット前に株価は上がり (ブルトラップ)、ピボット後に市場は下落するというような一連の流れがある。かつての名声、
Cathie Wood 氏も一連のツイートで FRB のピボットについて言及している。
If the Fed does not pivot, the set-up will be more like 1929. The Fed raised rates in 1929 to squelch financial speculation and then, in 1930, Congress passed Smoot-Hawley, putting 50%+ tariffs on more than 20,000 goods and pushing the global economy into the Great Depression.
— Cathie Wood (@CathieDWood) November 12, 2022
もしFRBがピボットしないのであれば、1929年のような展開になるでしょう。FRB は 1929 年に金利を引き上げて金融投機を抑制し、1930 年には議会がスムート・ホーリーを可決して 2 万点以上の商品に 50%以上の関税をかけ、世界経済を大恐慌に追い込みました。
さすがにパウエル議長もバカではないので、そんなことは百も承知だと思うが、FEDのピボットに注目すのではなく、FEDのピボット後に株価はどうなっているのか?に注目したい。
景気後退前に終わったベア相場はない
No bear market in 100-years ended before the recession
Not a single one! pic.twitter.com/uSzy58BClj
— Puru Saxena (@saxena_puru) November 11, 2022
過去100年間、景気後退前に終わった弱気相場は一度もない。
グロース投資家として個人投資家の間で有名な Puru Saxena 氏が指摘するように、過去100年間において、景気後退前に終わったベア相場は1度もないのです。
また歴史を振り返れば、2001年後半、米国はリセッションに陥り、この間業績悪化に伴い、シクリカル、エネルギー、オールドエコノミー銘柄が暴落した。2023年、米国は景気後退は避けられないようで、オールドエコノミー、シクリカル、エネルギー株がベアパレードに参加するのは時間の問題だろう …
歴史上、ベア相場はリセッションを迎えてから底打ちする
Bear-markets have NEVER ended before the onset of #recession
Recession seems inevitable in '23, history suggests the ongoing bear-market will only end during the recession. Decades of history shows the bear-market low lies ahead. $SPX pic.twitter.com/FiOdwIe6PU
— Puru Saxena (@saxena_puru) November 19, 2022
歴史上、過去のベア相場がどこで終わったか?のデータを見てみると、ベア相場はリセッションを迎えてから底を打つことを示している。
イールドカーブの反転、LEI、一致指標、CEO調査、エンパイア製造業未来新規受注…信頼できる多くの指標がリセッションは避けられないと示唆している。
Leading-Lagging Indicators ですら、リセッションレベルまで低下している。今回は違うのか?エンパイア・ステート製造業の将来の新規受注額は、世界金融危機 (2007-2009年の不況) よりも低い!今回は違うのか?
悲観おじさんと化している Pure 氏だが、我々個人投資家が気をつけなければいけないのは、景気後退 (リセッション) 入りしたか?の判定を下すのは、全米経済研究所 (NBER) が行うことで、それはリアルタイムに行われるのではなく、いつも後出しジャンケンとなる。つまり、アメリカ経済は既にリセッション入りしている可能性もあるが、NBER がリセッション入りの判定を下すには様々なデータを鑑みた後に判定される。
NBER のサイトには、Q&A で以下のような質問と回答がされている。
Q. 一般的に、委員会は景気後退が始まってからどれくらいの期間で景気後退が始まったと宣言するのですか?景気後退の終了後ですか?
A. 2020年4月の谷の日付の決定は、その日から15ヶ月後の2021年7月に行われました。それ以前の判断は4カ月から21カ月かかっている。決まったタイミングがあるわけではありません。ピークや谷の存在が疑われない程度に、そして正確なピークや谷の日付が割り出せるまで、十分な期間待つ。
つまり、正式にリセッション判定が下るにはタイムラグがあるということです。それは、NBER のリセッション判定を待ってから買うのでは遅く、相場は既に底入れしている可能性があるのです。
我らがシーゲル教授も、2022年11月のCPI発表後に以下のように述べている。
FED が重視するデータは遅行指標。現在のデータを見ると既にインフレ率はマイナス。インフレは終わった。12月50bps 上げて利上げ停止をアナウンスすべき。やり過ぎると経済が死ぬ。FED はいつピボットすべきか?答えは “昨日” だ。年末に向けて株はラリーするだろう。 – markets insider
2022年11月13日現在、短期的にはCPIでのインフレ緩和期待から株は買われ、次のイベントも期待でき、年末ラリーまで繋がれば更にここから株価の上昇は期待できる。しかし、これが強気相場の入口か?と聞かれれば、レジェンド、マーク・ミネルヴィニ氏も指摘するように弱気相場のラリーに過ぎず、彼は2021年11月からの売りシグナルを継続している。
いよいよ相場のサイクルも「逆業績相場」へ
相場のサイクル的には、現在「逆業績相場」にあたると思われ、これからリセッションを織り込んだ決算が第四四半期か、第一四半期の決算で株価に反映されてくるのではないかと思う。このあたりが相場の底と考え、買いに入るイメージを予想している。
リセッション後の決算を織り込んで底となるか?
The next leg down in stocks in Q1'23 likely to be led by the indices, especially the cyclicals/old economy companies…
Those growth stocks which have already declined 80-90% and have become "cheap" should also face selling pressure but likely to hold up better than the indices.
— Puru Saxena (@saxena_puru) December 9, 2022
再び、Puru 氏のツイートを掲載させて頂くが、大方の個人投資家はリセッション後の決算を株価が織り込んで底になると想定している。しかし注意したいのは、景気後退は全米経済研究所 (NBER) が後になって判定を下すため、景気は既に後退しており、知らぬ間にじわじわと2023年第一四半期よりも前に決算に反映されている可能性もあるということです。
2023年第一四半期の次の株価下落は、株価指数、特に景気循環型企業やオールドエコノミー企業が牽引することになりそうです。すでに80-90%下落し、「割安」となった成長株にも売り圧力がかかるだろうが、株価指数よりは持ちこたえることができるだろう。
次の株価下落は業績悪化が原因であり、景気後退の影響を最も受けやすいのは景気循環型企業/オールドエコノミー企業である。成長株は成長が鈍化するが、ほとんどの銘柄は前年同期比で成長を続けるので、不況下でも投資を呼び込むことができるだろう。
この弱気相場の第一段階は金利の急上昇で、その結果、高く評価されていた成長株は潰された。最後の下げは、収益の弱さに起因するもので、この分野では、(これまで持ちこたえてきた)景気循環型企業やオールドエコノミー企業がアンダーパフォームする可能性が高いだろう。
Puru 氏が指定するように、2022年12月5日の週に原油価格は下値を切り下げ一時71ドルに、これまで好調だったエネルギー株の上値が重くなり売られ始めました。モルガンスタンレーのウィルソン氏も指摘するように、
今年グロース株を襲った弱気相場は、2022年に投資家が避難した産業、金融、エネルギーセクターのバリュー株を脅かしている。今のバリュー株の問題は、6ヶ月前や12ヶ月前の稼ぎ過ぎのグロース株と同じように、景気後退に弱いということだ。
景気サイクルの現段階では、バリューとグロースにそれほどの区別はないと思う。…工業株、金融株、エネルギー株には投資しない方がよい。2023年に予想される景気後退が収益とバリュエーションに重くのしかかるからだ。
と、インタビューで語っている。
ボルカーが「ピボットするかも?」と言った1982年株価はどうなったか?
出典 : Paul Volker And 1982. Why Now Isn’t Then.
ここで一例として、1970年後半〜1980年代のインフレを沈めたインフレ・ファイター、当時のFRB議長ポール・ボルカーが「ピボットするかも?」と言った1982年10月株価はどうなったか?を見てみよう。
いつも強気な Fundstrat のトム・リー氏は、現在の株式市場と80年との比較をしている。彼は、今回の市場環境は、投資家が1982年8月に経験したものと似ていると主張する。その後、FRBがインフレ対策から軸足を移し始めたことで、株式市場の力強いラリーが起こった。
82年の夏、米国経済は後退し、当時のポール・ボルカーFRB議長は、FRBがインフレ抑制策を緩和するかどうか、まだ示唆していなかった。その年の10月、ボルカーはFRBがインフレ抑制の努力を弱める可能性があることを示唆した。
経済を回復に向かわせる力がある。政策目標はその回復を維持することであるべきだと思う。
政策転換の2ヶ月前、市場はFRBの計画を嗅ぎ取った。その後4ヶ月の間に、S&P500が27%下落した22ヶ月の弱気相場からの損失は逆転した。