Zoomy

グローバル・オービタル宇宙ロケット打ち上げ2022年Q2データを読み解く

All PDF documents are from BryceTech.

BryceTech が四半期で公開している「Global Orbital Space Launches Q2 2022 (グローバルオービタル宇宙ロケット打ち上げ2022年第四四半期Q2)」のデータが公開されましたので読み解いていきたいと思います。

打上げ事業者別軌道上打上げ数

前四半期は、イーロンマスク率いる SpaceX (スペースX) が最も多く打ち上げられ、次いで中国の CASC こと中国の航空宇宙関連企業 China Aerospace Science and Technology Corporation (中国航天科技集団) が第2位となりました。

以外にも3位がロシアの国営宇宙企業 Roscosmos (ロスコスモス)、4位に健闘しているのが SPAC 上場も果たした SpaceX 唯一のライバル企業と言われる Rocket Lab (ロケットラボ) です。Rocket Lab は地道ですが、打上げを着実に成功させ前に前進しています。

上位以外ですと、せっかく NASA の TROPICS ミッションに選出されたにもかかわらず、キューブサットの打上げを連続して失敗してしまった ASTRA (アストラ) や、日本の航空宇宙企業 ispace、ロッキード・マーティンとボーイングの合弁事業 United Launch Alliance などが1回の打上げに成功しています。

この打上げ数を見てもアメリカと中国の熾烈な競争が今後も続くことが予想されます。特に中国は電気自動車 (EV) の分野でも国を挙げて普及に取り組んでおり、NIO (ニオ)、XPEV (シャオペン) など新興のEV企業はヨーロッパまで販路を拡大しています。

そんななか、アメリカは大きく遅れてをとっている状態で、バイデンが気候パッケージやインフレ抑制法案 (EV購入に税優遇) を推し進める背景には理由があります。同様に中国は宇宙事業にも力を入れています。

打上げ事業者別の宇宙船打ち上げ数

第2四半期に SpaceX が打ち上げた宇宙船は473機で、打上げ事業者の中で最多でした。宇宙船打ち上げ数に関しては、SpaceX がぶっちぎりで後者を引き離しています。2位が CASC と Rocket Lab が対の36機となっています。

Rocket Lab は宇宙船の製造にも力を入れており、2022年2月にはペイロード8トン級再利用型ロケット「Neutron (ニュートロン)」の発射場と大規模な製造・運用施設を立ち上げることをアナウンスしています。

Rocket Lab は、他の小型ロケット打上げ企業とは違い宇宙ソリューションの開発、宇宙船の製造、施設の拡大、打上げスペースの新規開拓など幅広く宇宙関連の事業を行なっています。その成果が出てきているように感じます。

打ち上げ時の宇宙船搭載量

SpaceX は第2四半期に約158,666kgの宇宙船を打ち上げている。次いで中国の CASC の約38,822kg。

Varda Space のファウンダーはこのデータについて、次のように述べています。

SpaceX は2022年もそのペースを維持し、毎週打ち上げています。第2四半期に158,666kgを軌道に乗せたが、これは他の国の合計の2倍にあたる。

SpaceX は、2008年のAWSのように、インフラコストを大幅に削減し、信頼性を向上させています。その結果、次のような次世代企業が誕生しました。

カリフォルニア州トーランスに本社を置く株式非公開のアメリカの宇宙研究会社 Varda Space Industries (バルダスペース) です。

SpaceX のことを、宇宙経済のAWSに例える投資家もいます。90年代のインターネットに光ファイバーが使われたのと同じようなもので、世代を超えた発明+イノベーションへの発射台となるインフラストラクチャだと。

実は今、SpaceX が打上げたとされる「宇宙ゴミ」が問題になっています。その多くがオーストラリアに落ちてきているようで、自分の敷地で宇宙ゴミが落ちてきたという人は、「これは SpaceX、Planet、Rocket Lab のゴミですか?」と、宇宙関連企業のツイッターアカウントに向けて特定を呼びかけています。

この他にも、SpaceX の宇宙ゴミと特定された大きな破片などがロイター通信などで報道されています。SpaceX 含む多くの宇宙企業が宇宙に資材やら衛星をがんがんに打上げている訳で、いつか役目を終えて、また何か不備の事態でこのような宇宙ゴミが落ちてきたら怖いですね …

このような事例からも宇宙ゴミ、宇宙デブリの対策は必須だと思います。

国別オービタル打上げ数

米国が21回、中国が14回の打ち上げを実施。その他の国が14回の打上げを実施している。

サービスタイプ別宇宙船

SpaceX のスターリンクコンステレーションの継続的な展開に牽引され、第2四半期に打ち上げられた衛星の大半の77%は通信衛星であったことが分かります。続いて観測衛星リモートセンシングが14%となっています。

打ち上げられた宇宙船と全質量

第2四半期に打ち上げられた宇宙船のうち、小型衛星は96%、全質量は51%であった。

運営会社別の宇宙船

第2四半期に打ち上げられた宇宙船のほとんどは、民間企業によって運営されています。NewSpace の時代ということですね。

健闘を魅せる Rocket Lab (ロケットラボ) は、2022年8月10日の THE WALL STREET JOURNAL で以下のように取り上げられている。

ロケットラボは既に「科学」 SPAC銘柄とは一線画す。地政学的な緊張により、この市場は、広範囲な防衛力強化の一環として、驚異的なスピードで拡大する可能性 – THE WALL STREET JOURNAL