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Rocket Lab、レーザー通信のリーディングカンパニー Mynaric の買収を発表

Rocket Lab、レーザー通信のリーディングカンパニー Mynaric の買収を発表

Rocket Lab、レーザー通信のリーディングカンパニー Mynaric の買収を発表 – エンド・ツー・エンドの宇宙企業への戦略的ステップ。2025年3月11日、Rocket Lab は、Mynaric の過半数の所有権を取得するための非拘束的な基本合意書を締結。

この買収は、Mynaric が進める再編計画および規制当局の審査が完了した後に実施される予定。

【MYNA】ドイツの宇宙レーザー通信製造会社 Mynaric (マイナリック) とは?

Rocket Lab の買収計画の概要

Rocket Lab USA, Inc.(Nasdaq: RKLB)は、本日、Mynaric AG(以下「Mynaric」)の過半数の株式取得に向けた非拘束的な基本合意書を特定の貸し手(以下「貸し手」)と締結 したことを発表した。

Mynaric は、航空、宇宙、モバイルアプリケーション向けのレーザー光通信端末のリーディングプロバイダー であり、この取引は Mynaric の StaRUG 再編手続き(ドイツ法に基づく企業再生計画)の完了後、および規制当局の承認を経て正式に実施される予定。

この買収が完了すれば、Rocket Lab は 打ち上げ事業、宇宙機製造、衛星コンポーネントの大規模供給に加えて、レーザー通信の分野でもリーダーシップを強化 することになる。Rocket Lab はこの買収資金を株式発行による調達資金で賄う可能性 も示唆している。

この買収の戦略的意義

① 衛星コンステレーション向けレーザー通信市場の課題を解決

現在、レーザー通信端末は、大量生産が困難で高価格 という課題を抱えている。Rocket Lab は過去の買収を通じて、従来は限られた供給量しかなかった衛星サブシステムやコンポーネントを大規模に生産し、コストを削減する手法を確立しており、Mynaric のレーザー通信技術も同様にスケールアップさせる計画。

② ヨーロッパ市場への進出

買収の初期購入額は約7500万ドル(Mynaric にこれまで投資された3億ドル超の一部に相当)と見込まれており、Rocket Lab はこれを通じてミュンヘン(ドイツ)に拠点を確立し、300人以上の技術者やスタッフを迎え入れる。

これにより、欧州市場へのさらなる事業拡大の機会 が生まれる。

③ Rocket Lab の宇宙システム事業の強化

この買収により、Rocket Lab は Mynaric の衛星間光通信技術に関する生産資産、知的財産、製品在庫、受注残を取得 し、既存の衛星コンポーネント、サブシステム、ソフトウェアのポートフォリオをさらに強化できる。

これにより、Rocket Lab は自社の高付加価値衛星アプリケーション事業の統合を加速 することが可能となる。

④ Mynaric は Rocket Lab の主要契約先

Mynaric はすでに Rocket Lab の下請け企業として、米宇宙開発庁(SDA)との5億1500万ドル規模の契約 に基づき、18機の衛星に搭載される CONDOR Mk3 光通信端末 を提供している。

Mynaric はその他の SDA 契約にも関与しており、両社は共通の顧客基盤(商業コンステレーション運用会社、防衛・民間政府機関、大手宇宙産業企業)を持つ。

Rocket Lab は Mynaric の生産能力を拡大し、製造効率を向上させることで、SDA 向けの納品スケジュールと予算遵守を強化する計画。

Rocket Lab CEO ピーター・ベックのコメント

私たちは数年前からこの戦略的方向性を明確にしてきました。Rocket Lab は宇宙バリューチェーンのあらゆる部分を手掛けることを目指しています。自社のロケットを打ち上げ、大規模な衛星を製造し、そして今、最も価値のある宇宙経済の領域—自社コンステレーションを運用し、データとサービスを提供する段階に進もうとしています。

Mynaric はレーザー技術の分野で道を切り開いてきました。彼らのチームと技術は、私たちの衛星コンポーネントポートフォリオにとって魅力的な追加要素となるでしょう。今後、この技術をスケールアップし、自社のコンステレーションや顧客向けに提供していくのが楽しみです。

買収プロセスと今後の展開

Rocket Lab は、貸し手との非拘束的な基本合意書を締結しており、この合意に基づき Mynaric の StaRUG 再編完了後に正式な買収契約を締結する予定。

– Rocket Lab は Mynaric の全株式(100%)を取得予定
– 初期購入額は7500万ドル(現金または Rocket Lab 株式)
– 追加の業績ベース報酬(最大7500万ドル)を Rocket Lab 株式または現金で支払う可能性
– StaRUG 再編後の追加資金調達に応じて、初期購入額の調整が行われる

この合意には独占交渉期間が含まれ、Rocket Lab のデューデリジェンス完了後に正式な買収契約が締結される予定。また、買収には規制当局の承認および通常の契約条件が適用され、最終的な買収の保証はない。

なお、Mynaric は現時点ではこの非拘束的な合意書には署名しておらず、Rocket Lab は Mynaric の既存株主から直接株式を取得する予定はない。

本買収は StaRUG 再編計画が完了し、Mynaric の既存の株式がすべて消滅した後 に正式に実行される予定。

Mynaric 買収の背景

Mynaric は、ドイツの企業安定化・再編法(StaRUG)に基づく財務再編手続きの開始により、2025年2月10日にナスダックから上場廃止通知を受け取りました。

同社は、この決定に対して不服申し立てを行わないことを決定し、2025年2月18日をもってナスダックにおける米国預託株式(ADS)の取引が停止されました。

Mynaric の業績悪化には、次のような問題が応じていました。

・生産上の課題
主に予想を下回る生産歩留まりとサプライヤーからの主要部品の供給不足により、同社は光通信端末「コンドルMk3」の生産遅延に直面しました。これらの問題により、2024年の収益予測は大幅に減少しました。

・財務不安
2024年8月16日時点で、Mynaric は現金準備高をわずか630万ユーロと報告しており、深刻な流動性制約を示している。同社は、事業継続と生産規模拡大のために追加資本を確保する必要性を認めている。

・経営陣の交代
2024年8月に最高財務責任者(CFO)のシュテファン・ベルント・フォン・ビューロー氏が突然退社したことで、同社の不安定さが増し、重要な時期における財務管理への懸念が高まった。

・市場競争
競合他社である Tesat(エアバスの子会社)は生産能力を向上させ、市場シェアを獲得し、業界における Mynaric のシェアが縮小した。

破産した宇宙企業を吸収して成長する Rocket Lab

主に生産上の課題の問題が Mynaric を事業を悪化させてしまった。そこに目をつけた Rocket Lab が Mynaric を買収する形となったのだ。Rocket Lab が上場廃止に追い込まれた宇宙企業を買収 (吸収) するのは、2023年に破産した Virgin Orbit に次いで今回が2度目となる。

Rocket Lab、Virgin Orbit の資産を購入し、Neutron Rocket プログラムを強化

Rocket Lab はこのような他の宇宙企業の資産を買収し、自社の成長に繋げてきました。前回の Virgin Orbit の時は、小型ロケットの打ち上げという同業種でしたが、今回の Mynaric の買収はレーザー通信、アンテナという少し特殊な業種となり、この買収が Rocket Lab にどのような化学反動をもたらすか?が非常に楽しみです。