トランプ政権による米国国際開発庁(USAID)の最近の業務停止と解体は、イーロン・マスク氏の強い関与もあり、広範な批判を招き、さまざまなメディアや知識人から、クーデターに似たイデオロギー弾圧、連邦政府の官僚機構に対する大規模な粛清と見なされています。
イーロン・マスクの DOGE による、USAIDの解体
政府効率化部門 DOGE (Department of Government Efficiency) のトップに任命されたイーロン・マスク氏は、USAIDの急速な解体に大きく貢献しました。彼は、この機関を「犯罪組織」と公に非難し、「修復不可能」であると主張しました。
この過激な発言は、USAIDの本部閉鎖、1万人以上の職員と請負業者の一時帰休、数十億ドルに上る未使用の人道支援資金の凍結など、断固とした行動を伴いました。
USAIDの監察官であるポール・マーティン氏が解任されるなど、監視機関のトップも解雇されており、これらの動きは政府内のエリート層に対する粛清と解釈されています。
官僚機構に対する粛清
これらの措置は、世界的な人道支援の取り組みを大きく混乱させ、多額の支援資金の管理に対する懸念を引き起こしました。他にもトランプ政権下で、NIH(国立衛生研究所)、CDC(疾病予防管理センター)、FDA(食品医薬品局)の職員も解雇されています。
FDA cuts hit AI division, medical devices even as Trump invests in the technology https://t.co/3qDijEIf7b via @LizzyLaw_
— Adam Feuerstein ✡️ (@adamfeuerstein) February 17, 2025
解雇は、主に食品安全、医療機器、タバコ製品の安全性を担当する新規採用職員に集中しており、連邦政府の人員削減の一環とされています。具体的には、NIHでは1,165人、CDCでは約1,300人がレイオフされています。
さらに、イーロン・マスク氏が率いる DOGE のチームが、NIHやCDCを訪問し、特定のファイルを調査しているとの報道もあります。これにより、これらの機関の科学者や職員の間で、データの削除や研究の中断に対する懸念が高まっています。
これらの動きは、COVID-19 の起源や研究資金の使用に関する陰謀論に基づくものであり、科学研究や公衆衛生政策に対する影響が懸念されています。専門家は、これらの解雇や調査が、将来的な感染症の発生に対する米国の対応能力を損なう可能性があると警告しています。
IRSの職員約1万5000人もレイオフか?
更に更にトランプ政権は、イーロン・マスク氏の DOGE と協力し、早ければ来週にも、内国歳入庁(IRS)の約15,000人の試用期間中の職員を解雇する準備を進めている。
この動きは、連邦政府の支出を削減するために職員数を減らすという、より広範な取り組みの一環である。影響を受けるのは、公務員としての完全な保護を受けていない新規採用職員である。
今回のレイオフは、IRSが1億4,000万件以上の確定申告書の処理を予定している2025年の確定申告シーズンのピークと重なっています。人員削減により、確定申告書の処理や還付金の支払いに遅延が生じる可能性が懸念されています。
今回の削減により、IRSが法人や高額所得者の効果的な監査を行う能力が妨げられ、税収や執行努力に影響が出る可能性も懸念されています。この決定は、DOGE当局者がIRS本部を訪問し、同局のテクノロジーや監査プロセスに関する問い合わせを行った直後に下された。
政府は以前、人員削減策として連邦職員を対象に早期退職プログラムを提示していましたが、今年の確定申告シーズンに従事するIRS職員には、4月の申告期限後までこのプログラムの対象外となることが通知されていました。
今回の解雇の突然の性質により、14州の司法長官が、連邦職員の削減を監督するイーロン・マスク氏の役割の権限を疑問視する訴訟を起こすなど、法的措置が取られています。
中国の文化大革命に匹敵する?
批評家たちは、この強引な改革は、中国の文化大革命など、歴史的な文脈で観察されるイデオロギー弾圧の戦術を反映していると主張しています。突然の閉鎖、反対意見を持つ役人の排除、および援助配布の管理強化が相まって、「富裕層によるクーデター」という非難につながっていいます。
成田悠輔氏「イーロン・マスク氏によるUSAID停止は中国の文化大革命に近い思想弾圧、クーデターだ。いろんなメディアや知識人がみんなクーデター、国家転覆と言っている。日本も他人事じゃない」https://t.co/dQ0B4zACpK…
— NewsSharing (@newssharing1) February 16, 2025
経済学者/起業家の成田悠輔氏も、
イーロン・マスク氏によるUSAID停止は中国の文化大革命に近い思想弾圧、クーデターだ。いろんなメディアや知識人がみんなクーデター、国家転覆と言っている。日本も他人事じゃない。
と語っています。進歩的な議員や国際的な監視者たちは、これらの行動は、確立された制度やプロセスを損なう非民主的な権力の掌握であると主張しています。
USAID解体による影響は、官僚機構の再編にとどまらず、米国の援助に依存している地域の世界的健康、食糧安全保障、政治的安定に重大な脅威をもたらしかねません。
資金援助の停止は、疾病予防、飢餓緩和、民主的機関の支援を目的とした数多くのプログラムを危機にさらす。 国際社会は、この突然の支援撤回の結果、苦しみと不安定さが増大する可能性について、強い懸念を表明しています。
官僚機構に対する大規模な粛清は何をもたらすのか?
トランプ政権によるUSAID、CDC、NIH、FDAの職員解雇は、アメリカ国内外に多大な影響を及ぼすと専門家は警鐘を鳴らしています。これらの機関は公衆衛生、医療研究、食品安全、国際援助など、国民の健康と安全、そして国際的な人道支援において重要な役割を果たしています。
・公衆衛生と医療研究への影響
CDCとNIHの職員削減は、感染症の監視、予防、研究能力を低下させる可能性があります。特に、CDCでは約1,300人の職員が解雇され、これは全職員の10%に相当します。
このような人員削減は、パンデミックや他の公衆衛生上の脅威に対する迅速かつ効果的な対応能力を損なう恐れがあります。
・食品安全と医療機器の規制への影響
FDAでは、食品成分や医療機器の安全性を審査する新規採用の職員が解雇の対象となっています。これにより、これらの製品の審査や施設の検査が遅延し、消費者の安全が脅かされる可能性があります。
さらに、若手で技術的スキルを持つ職員の解雇は、FDAの人材確保と最新技術の導入能力に悪影響を及ぼすと指摘されています。
・国際援助と外交関係への影響
USAIDの活動停止は、特にアフリカにおける疾病根絶や抑制の取り組みに深刻な影響を与えています。 米国の国際援助削減は、他国との外交関係や国際的なリーダーシップにも悪影響を及ぼし、地政学的な安定性に影響を与える可能性があります。
・科学研究と政策決定への影響
これらの解雇は、科学者や公衆衛生専門家の士気を低下させ、将来的な研究や政策決定における科学的根拠の軽視につながる可能性があります。
特に、COVID-19の起源に関する陰謀論に基づく行動は、科学界と政府間の信頼関係を損ない、今後のパンデミック対応能力を弱体化させる恐れがあります。
このような機関の人員削減や活動停止は、アメリカの公衆衛生、安全保障、国際的な人道支援に深刻な影響を及ぼすと考えられます。専門家は、これらの決定が長期的に国民の健康と安全、そして国際的な地位に悪影響を与える可能性があると懸念しています。