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2024年下半期の臨床バイオ企業の買収が帰ってきた

2024年下半期、臨床バイオ企業の買収は散見されたものの、その多くが非上場企業に集中しており、市場に注目するバイオ投資家たちをやきもきさせていた。

ロシュがポセイダを買収

そんな中、師走を迎える2024年11月26日、血液がん、自己免疫疾患、固形がんに対する治験中の同種CAR-T細胞療法や、アンメット・メディカル・ニーズの高い患者集団に対応する治験中のin vivo遺伝子医薬品を開発する臨床バイオ企業 Poseida Therapeutics (ポセイダ・セラピューティクス / PSTX) が、スイスを拠点を置く大手バイオ企業 Roche (ロシュ / RHHBY) が買収することを発表した。

– ポセイダ・セラピューティクス社 ロシュ・ホールディングス社による買収合意を発表

Poseida Therapeutics とは?

Poseida は、差別化された同種細胞療法と治癒能力を有する遺伝子医薬品を推進する臨床段階のバイオ医薬品企業です。

同社のパイプラインには、血液がん、自己免疫疾患、固形がんに対する治験中の同種CAR-T細胞療法や、アンメット・メディカル・ニーズの高い患者集団に対応する治験中のin vivo遺伝子医薬品が含まれる。

Poseida のアプローチは、非ウイルス性トランスポゾンベースのDNA送達システム、Cas-CLOVER™部位特異的遺伝子編集システム、ブースター分子およびナノ粒子遺伝子送達技術を含む当社独自の遺伝子編集プラットフォーム、ならびにGMP細胞治療薬の自社製造に基づいている。

買収ディール

買収のディールによると、Poseida の株主は1株当たり最大13.00ドルの現金を受け取る。この現金は、クロージング時に1株当たり9.00ドルの現金と、1株当たり最大4.00ドルの現金を受け取る取引不可の権利(CVR)で構成される。

Poseida はロシュ・グループに加わり、ロシュの医薬品部門の一員として、非ウイルス性でTSCMを豊富に含むCAR-T療法および遺伝子医薬品の革新的なパイプラインを推進する。

この買収によりロシュは、同種細胞治療における新たな中核能力を確立することになり、Poseida とロシュの血液悪性腫瘍に関する既存の戦略的提携の対象となるCAR-Tプログラムに焦点を当てたリード機会を獲得することになる。

また、Poseida の遺伝子工学プラットフォームと関連する前臨床医薬品とともに、固形がんや自己免疫疾患のCAR-Tプログラムも含まれる予定である。

Poseida の特徴

Poseida は、同種T幹細胞メモリー細胞(TSCM)を豊富に含むCAR-T療法をデザイン、開発、製造するための非ウィルス性機能をフルセット含む独自の技術プラットフォームを開拓してきた。

TSCM細胞は、長寿命、多能性、自己複製性であり、安全性と有効性のプロファイルが改善される可能性があるため、CAR-T療法に理想的であると考えられている。

このことは、CAR-T細胞を製造するプロセスの一部として、異なるタイプの細胞を使用したり、T細胞の分化(したがって、幹細胞性が低下する)を促進したりする他のアプローチと比較して、利点をもたらす可能性がある。

Poseida のCEO、クリスティン・ヤレマ博士のコメント

Poseida の社長兼最高経営責任者であるクリスティン・ヤレマ博士は次のように述べている。

Poseida は、臨床転帰を改善し、この重要なクラスの医薬品へのアクセスを拡大する可能性のある同種TSCMリッチCAR-T療法を作り出す独自の非ウイルス技術プラットフォームのユニークな能力を実証しました。

直近では、多発性骨髄腫患者を対象としたP-BCMA-ALLO1の魅力的な中間臨床データによって、このことが強調されました。我々は、血液悪性腫瘍に焦点を当てた共同研究を通じてロシュと緊密に協力してきました。

ロシュの後期開発および商業化におけるグローバルな能力は、世界中の患者さんがアロCAR-Tの変革の可能性から恩恵を受けることを可能にするでしょう。

買収のポイント

Zoomy では、2023年末に引き続き、上場している臨床バイオ企業の買収ディールを追ってきました。その視点も加味し、今回の買収のポイントを解説します。

2023年バイオテクノロジー企業のM&A (買収) 一覧

2024年に買収された臨床段階のバイオ企業の特徴・一覧

まずは最も注目されているがん領域の買収だった点であり、同種T幹細胞メモリー細胞(TSCM)を豊富に含むCAR-T療法をデザイン、開発、製造するための非ウィルス性機能をフルセット含む独自の技術プラットフォームを有している点が考慮される。

バイオファンドのポジションとしては、主要なバイオファンドは所有していないようで、2024年Q3最後に購入したファンドは BlackRock のようです。

BlackRock はQ3の下落したタイミングで多数の割安な臨床バイオ銘柄を数%のポジションで拾っていました。主要なバイオファンドが Poseida を保有していなかった要因には、同社の主要なパイプライン「P-BCMA-ALLO1」、「P-CD19CD20-ALLO1」がどれもフェーズ1の初期臨床であったため、見逃されていた?のではないかと思います。

一方で、Poseida の主要なパイプラインにはロシュが提携しており、Poseida のパイプラインのうちロシュが4つのパイプラインで提携した点も今回の買収の背景にはあったと思います。

また、以前バイオファンドの RTW の創業者兼CIOであるロッド・ウォン氏が語っていたことですが、医薬品開発の成功(臨床試験の成功や承認)は、ほとんどが上場後に起こるこということです。

医薬品のライフサイクルには3つのフェーズがある

2024年の年初に AstraZeneca (アストラゼネカ) に買収された Fusion Pharmaceuticals (フュージョン・ファーマシューティカルズ / FUSN) も、早い段階で AstraZeneca と提携しており、2020年に IPO されたバイオ企業です。

AstraZeneca が Fusion Pharmaceuticals を買収

Poseida も2020年に IPO したバイオ企業であり、RTW のロッド氏が話すように、「90%は公開企業 (IPOした後) になった後に起こります」というのは、一つ覚えておきたいことです。