伝説の投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏の株へのアプローチは、「ファンダメンタルズをすべて見るのではなく、株の値動きと強い相関関係にある要因を特定することに分析の焦点を絞った」というものです。
ドラッケンミラー氏は、「多くのアナリストは、何が株を上下させるのか、いまだにわかっていない。」と言います。当時、ドラッケンミラー氏は、株式評価において、どのような分析手法を使用しましたか?という質問に次のように回答しています。
株式評価において、どのような分析手法を使用しましたか?
私が最初に始めた頃、株式や業界のあらゆる側面を網羅する非常に詳細なレポートを作成していました。株式選定委員会にプレゼンをする前に、まずそのレポートを調査部長に提出しなければなりませんでした。
特に、銀行業界に関するレポートを提出した時のことをよく覚えています。その時、自分の仕事に非常に誇りを感じていました。しかし、彼はそれを読んで「これは役に立たない。株価を上下させる要因は何か?」と言いました。
そのコメントが私にとって刺激となりました。その後、私はすべての基本事項を見直すのではなく、株価の動きと強く相関している要因を特定することに焦点を当てる分析を行うようになりました。
率直に言うと、今日でも多くのアナリストが、自分が担当する銘柄の株価を動かす要因を理解していません。
「株価を動かす要因」にフォーカスする
それ以来、ドラッケンミラー氏は「株価を上下させる要因」に集中するようになりました。これを分かりやすく説明するために、例えば Apple(アップル / AAPL)の株を考えてみましょう。
ダメな分析の例
– Apple の売上高は前年比10%増加。
– サプライチェーンの改善が進んでいる。
– 競合他社のスマートフォン市場シェアが縮小している。
– iPhoneの新モデルが発売される。
これらの情報は重要ですが、「だから株価が上がるのか?」という視点が抜けていました。当時の私は、あらゆるデータを網羅することに集中しすぎていて、株価に直接影響する要因を見逃していたんです。
正しい分析の例
では、Apple の株価を動かす要因に絞るとどうなるか?
– iPhoneの販売台数が予想を上回るかどうか?市場はiPhone が売れるかどうかに非常に敏感です。販売台数の予想を大きく上回れば株価が上がり、下回れば下がる。
– サービス部門(App Store や Apple Music)の成長率。ハードウェアだけでなく、サービス収益の成長が期待されているため、この数値が市場の期待を超えるかどうかが重要。
– ガイダンス(経営陣の次四半期の予測)。Apple が次の四半期に「売上はさらに成長する」と示せば株価が上昇し、「減少する」と予測すれば下落する。
これが「株価を動かす要因」にフォーカスするということです。
なぜこのアプローチが重要なのか?
上司に指摘されたとき、ドラッケンミラー氏は「基本に忠実な分析をした方が良いのではないか」と思いました。でも、それだけでは足りませんでした。投資の世界では、すべてのデータが同じように重要ではありません。
たとえば、どれだけ素晴らしい技術やビジネスモデルがあっても、それが市場の期待を下回れば株価は下がります。逆に、全体的な状況が悪くても、たった一つの要因(例えば予想外の収益増加)がポジティブに働けば、株価は急上昇します。
これを受けて、ドラッケンミラー氏は次のように考えるようになりました。「市場が気にしているのは何か?」 そして、それが株価にどう影響するのかを理解することが、投資で成功する鍵だと気づいたのです。
まとめ
ドラッケンミラー氏が銀行業界のレポートを書いていた頃、上司に言われた「株価が上下する理由を探せ」という言葉は、今でも私の投資哲学の基盤だと言います。
データを網羅するだけでは不十分です。本当に重要なのは、どの要因が市場心理や価格変動に影響を与えるのかを見極めることです。それを実践するためには、「すべてを分析する」のではなく、最も重要な変数に集中する必要があります。
Apple の例のように、「市場がどの数字を気にしているか」を理解することで、より正確な投資判断ができるようになるのです。