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臨床段階のバイオ企業のバイオマーカーの見方について

この画像は、精神疾患向け薬の開発におけるバイオマーカーの利用フレームワークを説明するもので、Alto Neuroscience の各フェーズの解説とバイオマーカーの目的を示したものです。

このフレームワークは、精神科薬の開発において、フェーズ1からフェーズ3、そして臨床ケアまで、異なる目的でバイオマーカーをどのように使用するかを説明しています。

こちらの例を参考に、バイオマーカーを臨床開発のさまざまな段階でどのように活用し、意思決定や測定にどのように役立てるかについてご紹介します。

バイオマーカーとは?

バイオマーカーとは、生体内の変化や状態を客観的に測定・評価するための指標です。血液、尿、組織、脳波、画像診断のデータなど、さまざまな形で得られるもので、病気の診断、治療効果の予測や評価、薬剤の作用メカニズムの確認に使われます。

フェーズ1 : 薬剤の初期評価

目的 : 安全性の確認、初期的な薬物動態の評価(投与量の決定、脳への浸透性確認など)
小規模な被験者(健康なボランティアまたは少数の患者)を対象に、薬の安全性や耐容性を検証するフェーズです。
被験者数 : 20-80人

<バイオマーカーの考慮事項>
脳内への浸透性(Brain penetration): 薬が脳に届くかどうかを確認する。
ターゲットへの結合(Target engagement): 特定の受容体や神経経路に作用するかを評価。
投与量の選択(Dose selection): 効果的な投与量を決定する。
適応症の選定(Indication selection): どの疾患に効果があるかを見極める。

<使用される測定法>
EEG/ERP(脳波および事象関連電位)
fMRI(機能的MRI)
PET(陽電子放射断層撮影)
MEG(脳磁図)

この段階では、薬が脳に作用しているかどうか、またその効果が特定の脳部位にどの程度現れるかが重視されます。

フェーズ2 : 薬の効果や患者層の選定

目的:薬の有効性の初期評価、患者層の選定(どのタイプの患者が効果を得やすいか)
より大規模な患者集団を対象に、薬の効果や投与量をさらに細かく調整し、次のフェーズに進むための指標を得ます。
被験者数 : 50-250人

<バイオマーカーの考慮事項>
薬の効果の追跡(Track drug effects):治療による脳機能の変化を測定。
患者層の分類(Patient stratification):バイオマーカーに基づいて患者を分類。
患者選定(Patient selection):特定のバイオマーカーに反応する患者を選定。

<使用される測定法>
EEG/ERP
sMRI(構造的MRI)
fMRI(特殊なツールとして)

この段階では、薬の治療効果を測定し、最も効果が出やすい患者群を特定することが目的です。患者の層別化によって治療が最適化されます。

フェーズ3 : 患者選定と最終効果検証

目的:最終的な有効性と安全性の確認、規制当局への承認申請用データの収集
大規模な臨床試験を実施し、特定の疾患に対して薬が効果的であることを証明します。
被験者数 : 300-1000人

<バイオマーカーの考慮事項>
患者選定(Patient selection):バイオマーカーが陽性の患者における治療の有効性を評価。

<使用される測定法>
EEG/ERP
sMRI
fMRI(特殊なツールとして)

フェーズ3では、実際にバイオマーカーが有効な患者に対する治療効果を確認します。大規模な試験を通して、薬の安全性と有効性を最終的に確認します。

臨床ケアでの実装と評価

目的:市販後の使用状況の監視(実際の患者への適用、長期的な効果と安全性の評価)
市場に出た後、多数の患者に薬が使われる状況を対象に、追加データを収集し医療現場での使用を最適化します。
被験者数 : 100,000-1M+人

<バイオマーカーの考慮事項>
バイオマーカーへのアクセス(Biomarker access):臨床現場でどの程度簡単に測定できるか。
テストのコスト(Cost of testing):実際の医療での使用コストを考慮。
価値ベースの成果(Value-based outcomes):治療の効果を測定し、コスト効果を評価。

<使用される測定法>
EEG/ERP
sMRI

この段階では、薬が実際の臨床現場でどのように使われ、どれだけのコストで提供できるかが重要です。バイオマーカーが使いやすくなることで、診療における質の向上や効率化が期待されます。

まとめ:投資家にとっての重要なポイント

このフレームワークから、CNS(中枢神経系)企業がバイオマーカーをどのように活用するかがわかります。各フェーズでバイオマーカーは次のような意思決定に役立ちます。

1. 早期開発でのリスク軽減(例:脳への作用の確認)
2. 患者の層別化による効果の最適化
3. 臨床現場での使いやすさとコスト管理

Alto Neuroscience のような企業は、こうしたバイオマーカーを使い、開発の成功確率を高めながらリスクを最小限に抑えようとしています。投資家としては、このフレームワークを理解することで、企業がどの段階で進捗しているのかを評価し、投資判断に役立てることが可能です。