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フェーズ3の臨床試験を一時中止して、その後に成功させたバイオ企業

フェーズ3の臨床試験を一時中止して、その後に成功させたバイオ企業

Fulcrum Therapeutics (フルクラム・セラピューティクス / FULC) は、10月に肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)を対象とした losmapimod (ロスマピモド) の第3相REACH臨床試験のトップラインデータを発表する予定でした。

しかし9月中旬にいきなり、losmapimod の今後の開発を一時中断を発表。株価は70%の暴落に見舞われました。この少し前には、RA Capital が持ち株半分を減らすなど不審な動きもありましたが、RA Capital は Ph3 の一時中止後に売却した株式を再び買い戻しました。

Fulcrum の losmapimod Ph3 について現在分かっていることは、開発中止ではなく、”開発一時中止” ということです。このような事例を踏まえて、過去に Ph3 の臨床試験を一時中止して、その後に成功させたようなバイオ企業はあるのでしょうか?調べてみました。

すると、過去に Ph3 の臨床試験を一時中止した後、成功を収めたバイオテクノロジー企業はいくつか存在することが分かりましたので、ご紹介します。

Biogen とエーザイの「Aducanumab」

Biogen (バイオジェン / BIIB) とエーザイは、アルツハイマー病治療薬「Aducanumab (アデュカヌマブ)」のフェーズ3試験を2019年に中止しました。中間解析で効果がないと判断されたためです。

しかしその後、データの再解析を行い、一部の患者群で有効性が示されたことが判明しました。その結果、米国食品医薬品局(FDA)に申請を行い、2021年6月に条件付きで承認されました。

これは試験中止後もデータを再評価し、承認に至った稀なケースです。

Sarepta Therapeutics の「Eteplirsen」

Sarepta Therapeutics (サレプタ・セラピューティクス / SRPT) のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬「Eteplirsen (エテプラーセン)」の開発で、臨床試験の進行が遅れたり、一時的に中断されたりしました。

その後、追加データを収集し、最終的に2016年にFDAから承認を受けました。これは規制当局との協議や追加試験を経て承認に至った例です。

Ionis Pharmaceuticals の「Spinraza」

Ionis Pharmaceuticals (アイオニス・ファーマシューティカルズ / IONS) と Biogen (バイオジェン / BIIB) の脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬「Spinraza (スピンラザ)」の開発中、一部の試験で安全性の懸念から進行が遅れました。

その後、安全性プロファイルの改善やデータの追加により、2016年にFDAから承認を受けました。これは安全性の課題を克服し、成功したケースです。

Gilead Sciences

Gilead Sciences (ギリアド・サイエンシズ / GILD) は、HIV治療薬の一部で臨床試験のデザイン変更や一時的な中止がありました。
その後、試験デザインの最適化や追加試験を経て、複数の薬剤が承認されました。

これは試験戦略を柔軟に変更し、成功を収めた例です。

Eli Lilly の「Baricitinib」

Eli Lilly (イーライリリー / LLY) の関節リウマチ治療薬「Baricitinib (バロシチニブ)」は、一部のフェーズ3試験で安全性の懸念から申請が遅れました。

その後、追加の安全性データを提供し、2018年にFDAから承認を受けました。これは安全性データの強化により承認に至ったケースです。

まとめ

以上のように、試験中止後でも、既存のデータを再評価したり、追加の試験を行うことで成功に繋がる場合があります。また、FDAなどの規制当局との密なコミュニケーションにより、懸念事項を解決し承認に至るケースもあります。

更に柔軟に試験のデザインや戦略を見直すことで、問題点を克服し成功するケースもあります。フェーズ3試験の中止は大きなリスク要因ですが、それを乗り越えて成功した企業も存在します。

しかし、すべてのケースで成功が保証されるわけではなく、企業ごとの状況や対応策によります。過去の事例から学び、適切な戦略と対応を取ることで、試験中止の困難を乗り越えることが可能であると言えます。