マーク・スピッツナーゲルの投資哲学

投稿日 : 2024.09.29 / 更新日 : 2024.09.29 / 記事には広告を含む場合があります

2020年3月のコロナショックで驚異の4000%超のリターンを叩き出した投資ファンド、「ユニバーサ・インベストメンツ」を率いる伝説的な投資家、マーク・スピッツナーゲルの投資哲学に迫ります。

彼の投資スタイルの基礎が築かれたのは、シカゴ商品取引所（CBOT）でピットトレーダーとして修行を積んでいた時代。そこで、ベテランのトウモロコシ・トレーダー、エヴィレット・クリップから学んだ教えが、スピッツナーゲルの生涯を通じた投資アプローチに深く影響を与えました。この経験が、彼の市場に対する洞察力やリスク管理の考え方に大きな役割を果たしているのです。

彼の投資哲学は単なる理論ではなく、実戦の中で培われた貴重な知恵に裏打ちされています。スピッツナーゲルに投資哲学を教えたクリップとのやり取りは、2024年7月に日本語版が出版されたスコット・パタースン氏の著書『カオスの帝王: 惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち』で、その詳細が記載されています。

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クリップの教え : 喜んで損をする

【選書】『カオスの帝王: 惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち』

以下、『カオスの帝王: 惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち』からの抜粋です。

ベテランのトウモロコシ・トレーダーのエヴィレット・クリップのトレーニング哲学は、単純かつ驚くべきものだった。

「成功するトレーダーは、負けを愛し、勝つのを憎む」
「喜んで損をしなければならない」
「そして儲けようと思わないことだ。これは人間の本性に逆らうことだから、克服せねばならない。」

それはつまり、ポジションから損が出始めたらすぐに売れ、と言うことだ。そのうち値を戻すと思うが関係ない。市場の判断が間違っていると思おうが関係ない。

その日の朝のウォール・ストリート・ジャーナルがなんて書いていようが、チャートが何を語っていようが関係ない。損切りせよ。喜んで負けろ。そして次にいけ。「バカと思われる行動をとって、馬鹿を見た気持ちになれ」とクリップはマークに言った。

この戦略の肝は、トレーダーの損失リスクを限定するところにある。多少は損をするかもしれないが、すべてを失う事は絶対にない。よほどの不運に見られない限り、トレーダーの言う「吹き飛ばす」ことには絶対にならない。

クリップが長年、最前線で活躍し続けてこられたのも、「CBOTのベーブ・ルース」の異名を馳せたのも、この戦略のおかげだ。そして、この教えが、スピッツ・ナーゲルの生涯のトレーニングの指標となった。

早い段階でパニックを起こせ

クリップがスピッツナーゲルに実質的に教えていたのは、カオスの帝王の最も重要な特徴である「早い段階でパニックを起こせ」だった。すぐに損切りせよ、なぜなら、もし保有しているポジションが値下がりし続けたら、すべてを失う可能性があるからだ。

これを鉄則にすることによって、クリップは戦略を反射反応で実行できるものにしたーー (この教えを) 受け入れられる者には、だ。

クリップのトレーディング手法は、独創的と言うわけではなかった。新米トレーダーは初日から「損切りしろ、利益が出ていれば売るな」としつこく教えられる。クリップが他のトレーダーと一線を画していたのは、このルールの徹底ぶりと、それ以外はどうでも良いと言う信念だった。

「クリップの姿勢には何か説得力がありました」とスピッツ・ナーゲルは回想する。

心地良く感じることの正反対をしなければならない

彼にとっては、需給の一致点だとか価格発見だとか、くだらない市場の力学はどうでも良かった。彼が重視したのは修練だった。それが私のトレーディング入門でした。修練です。トレーニングとは修練だ。それ以外は粗末なことに過ぎない。心地良く感じることの正反対をしなければならない。不快な状況に身を置かなければならない。これを乗り越えれば成功する。つまり、異次元の儲けを出せる。