2023年も多くの本を読みました。その中でも特に印象深かった一冊をご紹介します。2023年、私はサイクル、パターン、トレンドといったテーマに焦点を当てて研究を進めていました。
相場にもサイクルがあるように、歴史や世代など様々なものにもサイクルが存在します。下半期にサイクルについてまとめた記事を書こうと思っていたところ、11月に出版されたモーガン・ハウセルの新著『Same As Ever』に出会い、その鋭い視点に深い感銘を受けました。この本は、変化し続ける世界の中で、ずっと変わらないもの、ゆっくりと進む良い変化に目を向けることの重要性を説いています。
このように優れた本は、私たちに新しい視点、思考を与えてくれます。それでは、2023年に読んで特に個人投資家の目線から非常に面白かった本をご紹介します。
サイクル、大局観を学ぶ
以下で紹介する本は、優れた大局観、サイクルを学ぶことができます。複雑な世界において、大局観、サイクル、パターン、トレンドを学びこと程大切なことはありません。
『Same As Ever: A Guide To What Never Changes』モーガン・ハウセル著
【選書】モーガン・ハウセルの新書『Same As Ever: A Guide To What Never Changes』
前書『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』でお馴染みのモーガン・ハウセルの新書『Same As Ever: A Guide To What Never Changes』が説く、”変わらないものに目を向けよ” という視点は一生モノの価値観を与えてくれます。
『The Fourth Turning Is Here』ニール・ハウ著
1997年に出版された、ニール・ハウとウィリアム・ストラウスの著書『フォース・ターニング 第四の節目』の続編となる、『The Fourth Turning Is Here: What the Seasons of History Tell Us about How and When This Crisis Will End』が20年以上の時を経て出版されました。”第4の転機はここにある”、必読です。
投資の糧となる読書
以下で紹介する本は、金利、バイオテクノロジー、宇宙ビジネス、オッズなどについて書かれた優れた本です。
『The Price of Time』エドワード・チャンセラー著
今年最も感銘を受けたのが、エドワード・チャンセラー氏の著書『The Price of Time』です。正に金利が急騰した2023年、本書が示す、金利と負債の寿限無の歴史的意義を探求する旅に出かけましょう。
『ジェネシス・マシン 合成生物学が開く人類第2の創世記』エイミー・ウエブ著
本書『ジェネシス・マシン 合成生物学が開く人類第2の創世記』は、2022年11月に日本版が出版されたものですが、2023年の生成AIの大ブームを受けて、次の技術革新が起こるとされる合成生物学の分野を手始めに学ぶにはもってこいの本です。
『確率思考』アニー・デューク著
投資におけるオッズを学びたいと思い購入し、積んでいたのですが、12月にハワード・マークス率いるオークツリーの Year-End Book 2023 で、ハワード・マークス氏本人がおすすめの本として選んでいたのを知り、思い出すかのように読み出しました。
『When The Heavens Went On Sale』アシュリー・バンス著
宇宙SPACブームで宇宙セクターへの投資に興味を持った投資家なら読んでおきたいのが、『イーロン・マスク 未来を創る男』の著者、アシュリー・バンス氏の新書『When the Heavens Went on Sale: The Misfits and Geniuses Racing to Put Space Within Reach』です。
本書には、SPACブームで市場にSPAC上場した、Astra (アストラ)、Planet Lab (プラネット・ラボ)、Rocket Lab (ロケット・ラボ) などの新興宇宙企業に、著者自身が密着した宇宙ビジネスのノンフィクションです。
『For Blood and Money』ネイサン・ヴァルディ著
【選書】『For Blood and Money』血と金のために億万長者、バイオテクノロジー、そしてブロックバスター薬の探求
今年初めに海外のバイオ投資家の間で話題となっていたのが本書です。私もバイオセクターに目を向けていたタイミングでしたので、早速本書を手に取りました。
バイオテクノロジー企業が新しい薬を作り出す背景には、最先端のイノベーション、献身的な科学者、医師、研究者、臨床試験に参加する勇気ある患者さん、管理者、経営者、投資家の産物であることを見事に描き出したノンフィクションです。
特に私のように、バイオセクターへの投資をしている人には必読の本です。
アメリカのサイクルを探る
以下で紹介する本は、アメリカ社会を見つめた本になります。アメリカで燻っているように見える内戦の危機、アメリカ社会のサイクル、エリートの過剰生産、富のポンプなど、変化の兆しを抑えておきましょう。
『上昇(アップスウィング): アメリカは再び〈団結〉できるのか』ロバート・D・パットナム著
ロバート・D・パットナム博士が、アメリカが過去100年前にどのように団結し、同じことをもう一度行う方法についてを解説する。パットナム博士は、アメリカの変化についてのデータとその歴史的な背後にある物語を提供し、アメリカの極端な政治的極端さ、経済的不平等、社会的孤立、文化的自己中心性に焦点を当てます。
『アメリカは内戦に向かうのか』バーバラ・F・ウォルター著
2022年のロシアによるウクライナ侵攻、2023年に起こったパレスチナによるイスラエル奇襲による紛争、ニール・ハウ氏が著書『The Fourth Turning』で述べる第四の転機は危機と戦争の時代です。本書はアメリカの分断、内戦という視点から、世界中の紛争やその前兆や仕組みについて詳しく触れています。
『End Times: Elites, Counter-Elites, and the Path of Political Disintegration』ピーター・ターチン著
画期的な新しい学際的歴史科学である “クリオダイナミクス” の先駆的共同創設者、コネチカット大学の社会科学者ピーター・ターチンが、アメリカの内紛とその終局の可能性を大局的に説明する。
気候危機を見つめる
2023年の夏を体験した人なら誰しもが、気候危機についての危機感を肌感覚で感じたのではないでしょうか。私もその一人で、この異常な暑さはこの先どうなるのか?という危機感から、何冊か気候変動、気候危機を警告する本を手に取りました。
『2084年報告書: 地球温暖化の口述記録』ジェームズ・ローレンス・パウエル著
この本は、アメリカの地質学者によって描かれた2084年の悪夢のような世界を舞台にしています。非常に独創的な手法を用いており、気候危機が地球にもたらす破壊的な影響を、SF小説の形式を借りながらも、現実味あふれる筆致で描いています。
この作品は、もし気候危機が止められなかったら、私たちの世界がこのようになってしまうのではないかという、強いノンフィクション的なメッセージを持っています。
『昆虫絶滅 : 地球を支える生物システムの消失』オリヴァー・ミルマン著
気候危機は生態系を破滅に追い込んでいます。本書『昆虫絶滅』では、世界中で昆虫の個体数が激減していることを警告しています。昆虫が生態系と食物連鎖をどのように支えているのか?昆虫がいなくなってしまうと、地球はどうなってしまうのか?虫が嫌いという人は結構いると思いますが、本書を読むと少し考え方が変わるかもしれません。
人間の変わらない「欲望、習慣」に目を向ける
『欲望の見つけ方: お金・恋愛・キャリア』ルーク・バージス著
あのピーター・ティールも絶賛ということで手に取ったのが本書『欲望の見つけ方』です。X (旧 Twitter) でもかなり話題になっており、初版のカバーがちょっとインパクトに欠けたのか、何度目かに話題になった時に本のカバーも一新されたという話題作です。
『習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか』ラッセル・A・ポルドラック著
本書『習慣と脳の科学』は、繰り返される日常、ある種の習慣から抜け出すために、”習慣” というものが作られるメカニズムについて学ぶことができます。日常からエスケープするためには、まずは客観的に習慣を理解する必要があります。
『なぜ日本は没落するか』森嶋通夫著
このままだと日本は必ず没落する……。1999年に刊行された本書は、2050年を見据えて書かれているが、驚くほど現在の日本の現実を予見している。なぜそうなるのか、日本人の精神性と日本の金融、産業、教育の荒廃状況を舌鋒鋭く指摘し、その救済案「東北アジア共同体構想」を示し、救済案への障害となるものをも示す。