卵巣がん患者に向けた抗がん剤「Elahere」を手掛ける米のバイオ企業 ImmunoGen (イミュノジェン / IMGN) が2023年11月30日にグローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業 AbbVie (アヴィ / ABBV) に買収されるまでの流れをご紹介します。
$ABBV $IMGN Transaction valued at $31.26/share in cash, for a total equity value of approximately $10.1 billion https://t.co/8m4Aec3tmO
— Bio Stocks™ (@BioStocks) November 30, 2023
ABBV は IMGN の全発行済み株式を1株当たり現金31.26ドルで取得する。この額は、イミュノジェン株の29日終値(16.06ドル)のほぼ2倍。
IMGN は2023年夏以降より、バイオ投資に詳しい投資家の間で、この優れたバイオ企業はどこかで必ず大手に買収されるだろう、というような憶測が広がっていました。
ImmunoGen が買収された兆候が幾つもあった
・素晴らしい臨床データ
・オンコロジー (ADC) というホットな分野でのパイプライン
・買収されるという根強い噂
・十分なキャッシュ
・バイオテクノロジーに精通したファンドによるインサイダー買い
・会社役員の退職
ImmunoGen の買収劇を振り返ると、買収される時に起こるとされる幾つもの兆候が観測されており、バイオテクノロジーに精通したファンドや投資家は、この株を dip し続けていました。
バイオ企業でホットな ADC 分野
バイオ関連に詳しい投資家の間では、ADC (抗体薬物複合体) という分野の臨床を行なっているバイオ企業への分野がホットです。
ADC (抗体薬物複合体) とは、現代医療において非常に注目されている新しいタイプの治療法です。これは、特定の病気、特にがん治療において革新的なアプローチを提供することが期待されています。
ADCは、特定の抗体と強力な抗がん剤(薬物)を結合させたものです。抗体はがん細胞に特有のターゲット(通常は細胞表面の特定のタンパク質)を認識し、この複合体を直接がん細胞に届ける役割を果たします。抗体が目標とするがん細胞に結合した後、薬物が放出され、がん細胞を効果的に殺すことができます。
このアプローチの利点は、健康な細胞には最小限の影響を与えながら、がん細胞を非常に特異的に標的とできることです。これにより、従来の化学療法によく見られる副作用を軽減し、患者の治療体験を改善することが期待されます。
バイオテクノロジーの投資家たちは、ADCが特に困難ながんの種類に対して新たな治療選択肢を提供する可能性があることから、この分野のバイオ企業に注目しています。多くのバイオ企業がADCの開発に力を入れており、いくつかのADCは既に臨床試験を進行中または完了しています。
投資家は、これらの企業が開発しているADCの潜在的な効果、治療のターゲットとなるがんの種類、臨床試験の結果、および規制当局からの承認の可能性などに注目しています。ADCはバイオテクノロジー業界において、今後数年間で重要な進歩と成長を遂げる分野と見られています。
ADC医薬品を持つ企業の最近の大型買収
最近のADC医薬品を持つ企業の大型買収の例では、2023年3月に Pfizer (ファイザー PFE) が、がん治療薬開発の Seagen (シーゲン / SGEN) を買収しています。
他にも現在 PDS Biotechnology (PDSB) など ADC の分野で素晴らしいデータを出しているバイオ企業が宝石銘柄としてバイオ投資家の間では一目置かれています。
Nice post:
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— BioPharm_the_Magnificent (@crypto_biotech) November 30, 2023
PDSB は非常に興味深い IMGN はおよそ18ヶ月前に1株3.10ドルだったが、現在はおよそ29ドルで買われており、18ヶ月の投資としては悪くない。彼らはまた、浮動株で2億6600万株を持っている 我々は3000万株以上を持っている。ローマは一夜にして築かれたわけではないし、待つ価値のあるバイオテクノロジーもそうではない。PDSBは宝石だ💎
バイオ企業に詳しいファンドの動き
ヘルスケアと生命科学の分野に特化した投資会社 (ファンド) RA Capital は、第三四半期に IMGN のポジションを471% (1,100万株) 増やし、同銘柄をポートフォリオの4位にまで増加させていました。
RA capital は、非常に保守的なファンドとして知られているようで、そのファンドが IMGN の買収数ヶ月前にポジションを大幅に増加させていた、というのは非常に示唆に富むものです。
RA Capital とは?
RA Capital Management は、ヘルスケアと生命科学の分野に特化した投資会社です。この会社は、主にバイオテクノロジー、製薬、医療機器、診断ツールなどの分野に投資を行っています。RA Capitalは、公開市場だけでなく、プライベート市場にも投資を行っており、特に革新的な治療法や技術に焦点を当てています。
RA Capital の特徴は、深い科学的および医療的専門知識に基づいた投資アプローチです。彼らは、投資する企業の科学的な基盤や技術の潜在能力を徹底的に分析し、長期的な価値創造に寄与する可能性が高いと判断される企業に投資を行います。
また、RA Capitalは、投資先企業の成長を支援するために、戦略的アドバイスや業界のネットワークを提供することもあります。彼らの投資ポートフォリオは、初期段階のスタートアップから、すでに確立された大手企業まで幅広く、ヘルスケア分野におけるイノベーションを推進する重要な役割を果たしています。
IMGN 買収までの流れ
IMGN は、2023年5月3日に取組んでいた「フェーズ3」の卵巣癌の治療薬 ELAHERE (ミルベツキシマブ・ソラヴタンシン) の素晴らしいデータ (FRα陽性のプラチナ製剤抵抗性卵巣がん患者を対象とした第3相MIRASOL試験において、エラヘア®が全生存期間延長効果を示す) を発表し、株価は2倍以上に急騰しました。
その後、今年夏の楽観相場への流れを受けて株価は短期間で4倍の20ドルとなり、7月の最終日に「アナ・バーケンブリット最高医学責任者の退任を発表」という CMO の退任というニュースを受けて、株価は一転し下落に転じ一時13ドル台まで下落します。
以降9月〜10月の相場の調整機に12ドル台ぐらいまで下落し、レンジ相場となっていました。今回の件で注目したいのは、企業における CMO や CFO 退任ニュースは、決して100%ネガティブなニュースではなく、何かの前売れだったり、それに伴う下落は時としてチャンスとなることを物語ものでした。
会社が買収される兆候とは?
投資の素人は、CMO の退任というニュースをネガティブな情報として受け止め、その企業をロングしていれば売りで反応してしまうかもしれない。しかし、会社が買収される兆候についてのノウハウを知っている人は、これはある種のサインだと受け止めるのです。
買収の噂や、そのポテンシャルのある企業の兆候として、突然「高級管理職または取締役による辞任」がアナウンスされることがあります。会社の主要メンバーが辞任するというニュースは、表面的には会社にとってマイナスの影響を与えるように見えることがあります。
これは、会社の現状や将来に対する疑問を投げかけるからです。なぜ成功している会社を離れるのか、彼らはどこへ行くのか、そして会社に何か問題があるのではないかという疑問です。しかし、会社が合併 (又は買収される) を計画している、あるいはすでに合併に向けて密かに合意している場合、状況は異なります。
この場合、主要な従業員の退職は、合併後の組織での彼らの役割が不確実であることを示唆している可能性があります。合併はしばしばコスト削減の機会をもたらし、これには従業員の削減も含まれることがあります。
たとえば、2つの会社が合併すると、同じ役割の従業員が重複することがあり、すべてのポジションが新しい組織構造で必要とされるわけではありません。退職する従業員は、自分のポジションが合併後に不要になる可能性があることを知っていたか、あるいはそれを自ら予測したかもしれません。
失業するリスクを避け、新しい機会を早期に探求するために、彼らは自発的に退職を選択することがあります。このような状況では、主要メンバーの退職は、必ずしも会社に対する不信のサインとは限らないのです。
IMGN 株価の推移
$IMGN (L)
Final chart & trade summary pic.twitter.com/5ZlqthdaG0
— Jonathan Faison (@jfais20) November 30, 2023
上記の図では、あるトレーダーの IMGN への投資戦略と株価の推移が報告されています。これは投資家がある程度戦略を持って、ポートフォリオを追加したり、一部利確したり、再び下げのチャンスで dip するなど、一度にポジションを利確してしまうのではなく、状況に合わせて売買する学びを得ることができます。
2023年1月以降
JPモルガンのアップデートに耳を傾け、1月に4.50ドルで優先的に5%のポートフォリオを購入した
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2023年5月上旬「卵巣癌の治療薬 ELAHERE フェーズ3のデータ公表」
NASDAQの確証的調査でホームランを打った後、わずかな部分利益を得た
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2023年7月中旬以降
バリュエーションが先走ったため、部分的に利益を得た
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2023年8月上旬「この前にCMOの退任がアナウンスされた」
第2四半期の決算発表後にポジションを追加し、確信を深めた(商業面および臨床面での堅実な実行)
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2023年11月30日
ABVVバイアウト発表、321%ゲイン
IMGN バイアウトの背景
IMGN がバイアウトされた背景をまとめると、
・先進的なパイプライン
・未満足のニーズ (卵巣がん)
・市場ポテンシャルを持つ
・臨床フェーズの素晴らしいデータ
・著名な投資家からの高い評価 (買収されるという憶測が早くからあった)
・キャッシュフロー
・役員の退職
などが思いあたる点でしょうか。IMGN のケースは、素晴らしいデータと先進的なパイプラインがとにかく魅了的だったことあ買収に繋がったものだと思います。